胸の内を語った篠原涼子(撮影・大城 有生希)
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 【過去と未来の交差点】昨年デビュー35周年を迎えた女優の篠原涼子(52)。スーパー派遣社員になり切った「ハケンの品格」、敏腕刑事を演じた「アンフェア」などの主演作で、“カッコいい女性”を数多く演じてきた。女性の憧れの的であり続ける篠原は、どんな思いで作品に臨んでいるのか。胸の内にはいつも、亡き父からかけられた一言があった。(山内 健司)

 凜(りん)としたたたずまいに、ハキハキとした「よろしくお願いします」の声。カメラマンの前に立つと、軽やかに次々とポーズを決めていく。刑事など正義感の強い役柄を多く演じてきたことで、ついたイメージは「しっかり者」。目の前に姿を見せた篠原自身も、どこかその雰囲気が漂っていた。

 だから当然、私生活でもしっかり者かと思いきや…。「へなちょこでルーズです」。そう言っていたずらっぽく笑う。取材前日にはスマートフォンを紛失。車内や道路も捜した結果、確認したはずのかばんの中にあったというオチつきだ。食事制限中でも楽屋に弁当があると、つい手が伸びてしまうことも。「うっかり八兵衛なんです」と照れながら明かした。

 だが、守り続けていることがある。14歳で芸能界を夢見た時の、男手一つで育ててくれた父・勝雄さん(2010年死去)からの言葉「初心の気持ちを忘れずに」だ。「厳格な父でしたが、グチグチと口数多い人でもなかっただけに、グサッといい気持ちで刺さって今も響いています」

 「年齢や経験での慣れが一番怖い。どんな仕事も新鮮に生き生きと向き合いたい」。取材中もスタッフや過去の作品に触れ「仕事を頂けることに常に感謝」と低姿勢で何度も口にする姿には、どこか初々しさがあった。

 父との忘れられない思い出がある。16歳で上京して間もなく、金銭面で苦労したが「父に頼りたくない。心配させたくない」と平気を装っていた。だが、なけなしの小銭で買ったメロンパンを半分食べて寝落ちして連絡を返せないでいると、父が地元・群馬から駆けつけてきた。食べかけのパンを見られ「金がないなら言え!」とキツく怒られたが、優しさに触れた瞬間だった。

 歌手としてブレークした後、27歳で女優としての転機が訪れた。演出家・蜷川幸雄さんからの舞台「ハムレット」のオファーだった。芝居には苦手意識があり「舞台は絶対無理」とつい拒絶。だが、「その晩、寝る時にいきなり蜷川さんの顔が浮かんで神様のように優しい顔で私を見てるんです。一緒になったら良いことがありそうでした」。一転して「やっぱりやる」と飛び込んだ。

 まさに初心で、さまざまなことを吸収。「お客さんの反応を肌で感じられることが楽しくて。空気が芝居の良しあしを教えてくれるんです」。自らの芝居を客観視できるようになり、演技に自信を見いだせた。「どの撮影現場も大変で忍耐が必要。鍛えられたと今も実感しています」。

 ベテラン、座長となっても現場での意識は「皆で作るという気持ち。あと、楽しくあることもね」。若手の頃に抱いたワクワク感を大切にしている。放送中の日本テレビドラマ「パンチドランク・ウーマン ―脱獄まであと××日―」(日曜後10・30)では刑務官役に初挑戦。「まさに新鮮。この役の食生活はこうかな?とか想像しちゃいます」とはにかんだ。

 今後について、新たな目標を掲げるよりも率先してこう答えた。「作品も生活も、今あるものを初心で丁寧にやっていける人間になりたい」。まさに強烈なパンチをもらったように、父の教えは今も体の奥深くに宿り続けている。

 《初の刑務官役を熱演》刑務官を演じる「パンチドランク…」では、脱獄をもくろむ未決拘禁者の男(ジェシー)と出会い、規律正しく真面目な生き方が崩れていく様子が見どころ。「パッと見は、人に対しての秘めた部分をあまり表現しない」というキャラクターだが、内面をひそかに見せる部分も描かれる。「強さだけでなく弱さを持ってる繊細な人」と形容し、「その弱さに誰もが共感しやすい部分があると思います」と分析した。

 ◇篠原 涼子(しのはら・りょうこ)1973年(昭48)8月13日生まれ、群馬県出身の52歳。90年に「東京パフォーマンスドール」の一員でデビュー。94年に小室哲哉プロデュースのシングル「恋しさと せつなさと 心強さと」が200万枚超の大ヒット。同年のNHK紅白歌合戦に初出場。主な主演ドラマに「anego」「ラスト シンデレラ」など。1メートル62。

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