「言語化」という言葉が流行っている。直木賞作家・小川哲氏の『言語化するための小説思考』(講談社)が5万部を突破、人文学者・阿部幸大氏の『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(光文社)が全国の大学生協で年間1位(’24年)を獲得し、いずれも文章術の本としては異例のベストセラーとなっている。

小説家と研究者、異なる立場から「書くこと」を追究してきた同世代の二人が、その本質、そして著書がヒットした背景にある「言語化ブーム」について語り合った。

【前編記事】『頭のいい人はどうして仕事や勉強で《なぜ書くか》を意識するのか…「東大・京大でいま一番売れている本」著者が明かす』よりつづく。

「言語化ブーム」の原因とは「言語化」と題された本は数多く出版されているイメージギャラリーで見る

阿部 最近は、「言語化したい」という欲望が世間で独り歩きしているように感じます。でも、俺は「そもそも、そんなに言語化したいものがあるの?」と思ってしまう。言語化の技術より、「何か言いたい」というモチベーションを鍛えたほうがいい。そして俺たちの本は、このモチベーションについて考えさせる本であるとも思います。

ちなみに、小川さんは「言語化」ブームについてはどう思われますか?

小川 言語化が流行っているというより、「言語化」と題された本が売れている、というだけではないでしょうか。言語化という営み自体は、古代ギリシャの時代から続いているものですから、古くから行われてきた行為に「言語化」という「言語化」がされただけだと思います。

阿部 どうして皆が言語化したくなったのかがわからないんですよね。言語化してどうするのかなって。もちろん重要なことだし俺も好きなんですけど、そういう風潮が生まれた背景が気になります。

小川 自分の思考をアウトプットするとき、あくまで言語は限られた一つの媒体でしかありません。ダンスだったり音楽だったり絵だったり、本来手段は色々あるはずです。

ところが現代社会だと、良い学校や会社に入るには面接や試験を受けなければいけません。そのとき必要とされる能力は、やはり言語化に依るところが大きい。結局のところ、現代社会がますます言語化を要請し、その能力が高い人ほど得をしているように見えることが「言語化ブーム」の原因ではないでしょうか。

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