入り口正面のメインの平台上段に面陳列で3冊並べて展示する(リブロ汐留シオサイト店)

入り口正面のメインの平台上段に面陳列で3冊並べて展示する(リブロ汐留シオサイト店)

本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。

今回は、定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。年末から年始にかけてもビジネス書の売れ行きは好調だったという。そんな中、書店員が注目するのは、中小企業向けのデジタル支援サービスを手掛ける起業家が、地方のビジネスにテクノロジーがもたらす可能性を論じた一冊だった。

中小企業支援サービスの起業家

その本は近藤繁『稼ぐ地方』(インプレス)。〈日本のさまざまな地域で「新しい価値」を生み出す人たち〉との副題が付く。著者の近藤氏は、中小企業向け経営支援プラットフォームを手掛けるココペリの代表取締役CEO(最高経営責任者)を務める。大手都銀やITベンチャーを経て起業し、約80の地域の金融機関と連携したビジネスマッチングを中核にしたサービスで6万社に及ぶ中小企業の販路拡大や業務提携先開拓などを支援している。

そうした事業を通して見えてきた地方の中小企業の可能性を論じたのが本書だ。とりわけ強調されるのがデジタルテクノロジーのもたらす力だ。「かつては距離や情報網の壁に阻まれていた価値が、デジタルの力で全国、さらには世界へと届けられる時代になった」。これがサービスを通じて地方企業同士のつながりを仕掛けてきた著者の実感だ。この視点から地方の中小企業にとって次の一手となるヒントを考えていく。

半数以上の日本企業はホームページ一つ持っていないと著者は指摘する。それゆえにこそ、デジタルテクノロジーを使った事業の伸びしろは限りなく大きいという。地域ごと、企業ごとに異なる課題をどのように発見し、そこにどうテクノロジーを活用していくか。そのヒントになる事例を数々紹介していく。

温泉コスメやご当地アイドル…肉声も紹介

例えば、第3章「地域の魅力を引き出しながら課題を解決する」では、デジタル地域通貨のプラットフォームの開発・運用・推進を手掛けるフィノバレーという会社の取り組みが紹介されている。同社は約20の自治体に地域通貨を提供しているが、自治体ごとに異なる設計で運用しているという。「地域通貨を活用することが、誰かのためになっているということを、いかに表現するか。それが当社の大きなチャレンジ」と同社社長の川田修平さんは語る。

地方の中小企業そのものの取り組みも当事者のインタビューを5章構成の各章末に挟み込み、肉声とともに紹介している。歴史ある温泉を生かしたコスメで街の再生を目指す「玉造温泉まちデコ」(松江市)の副社長、ご当地アイドル「ほやドル」として活動し、手づくりイベントで1万人を集客、宮城県のホヤを広める「ほやいろ」(宮城県石巻市)の代表取締役……。

インタビューに加えて本文中でも触れている数々の地域活性化の取り組みは、地方ビジネスの可能性を探る大きなヒントになるだろう。「年末もよく売れていたが、年明けになっても勢いが続いている」と、同店店舗リーダーの河又美予さんは話す。

佐藤優氏の「定年後」本が1位

それでは先週のランキングを見ていこう。

(1)定年後の日本人は世界一の楽園を生きる佐藤優著(Hanada新書)(2)稼ぐ地方近藤繁著(インプレス)(3)世界の新富裕層はなぜ「オルカン・S&P500」を買わないのか宮脇さき著(KADOKAWA)(4)科学的に証明された すごい習慣大百科堀田秀吾著(SBクリエイティブ)(4)もっと!! 頭のいい人だけが解ける論理的思考問題野村裕之著(ダイヤモンド社)(4)いちばんわかりやすい確定申告の書き方 令和8年3月16日締切分土屋裕昭・樋川智子監修(ダイヤモンド社)(4)リーダーの仮面安藤広大著(ダイヤモンド社)

(リブロ汐留シオサイト店、2026年1月5~11日)

1位は元外交官で、著述家の佐藤優氏がお金から趣味、仕事、交友関係や家族関係まで「定年後に特化した知の技法」を伝授する本だ。息の長い売れ筋になっている。今回紹介した『稼ぐ地方』が2位だった。元手ゼロから純資産を4億円まで増やした投資術を明かすマネー本が3位に入った。

同数の4位に4冊が並んだ。本欄7月の記事〈「すごい習慣」で仕事や人生を変える 科学的根拠に基づく小さなメソッドの大百科〉で紹介した習慣化スキルの本、同じく12月の記事〈「論理的思考問題」に第2弾 もっと面白い58問で「考え方の型」を身に付ける〉で紹介した思考力を鍛える本に加えて、若手リーダー向けにリーダーシップを説いた2020年刊のロングセラー、確定申告の書き方を解説したムックが入った。

(水柿武志)

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