
左から『cocoon(コクーン)』今日マチ子/秋田書店、『愛を知ったのは処刑に駆り立てられる日々の後だった』舟越美夏/河出書房新社、『彼女たちの戦争 嵐の中のささやきよ!』小林エリカ/筑摩書房、『膠と油(にかわとあぶら)』ぱらり/小学館、『一九四五年に生まれて 池澤夏樹語る自伝』尾崎真理子/岩波書店
1. 『彼女たちの戦争 嵐の中のささやきよ!』
作家として戦争体験の聞き取りを続ける小林エリカさんによる本書には、戦禍を生きた女性たち28組の個人的な物語が記されている。「彼女たちの戦争は、いったいどんなものだったのか」──、当時の政治や戦争は、男性たちを主体とする“彼らのもの”であったがゆえに、その体験の多くは男性の視点から語られてきた。しかし、それを女性/少女の目から捉え直すことで、多くを傷つけ、今なお影響を残す巨大な“戦争”とは何だったのかを、あらためて確かめたい。
立場は違えどそれぞれのかたちで参加せざるを得なかった戦争は、決して一様ではない。自分が彼女たちの立場に置かれたらどうするだろうか、そう考えずにはいられない。そしてその想像は決して過去の出来事にとどまらず、現在を生きる私たちの選択にも静かに問いを投げかけてくる。
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2. 『愛を知ったのは処刑に駆り立てられる日々の後だった』
ロシア、カンボジア、チベット、アフガニスタンなど、ジャーナリストの舟越美夏さんが訪れた国々での取材記録がまとめられている。そこに描かれるのは、決して戦争の被害者だけではない。軍に従事した、いわゆる“加害者”とされる人々も数多く登場する。舟越さんは、それぞれのストーリーをまっすぐに受け止め、丁寧に耳を傾けていく。
終章には、次の言葉が記されている。「人の深層にひそむ残虐性は、機会を得るといとも簡単に肥大化し、荒れ狂う」。私自身もまた残虐さを内包する存在だ。白か黒かではなく、いつだって被害と加害はグレーになりうる。だからこそ、それを否定するのではなく、自覚したうえでどう行動するのか。本書はその問いを、静かにそして確実に突きつけてくる。
3. 『膠と油(にかわとあぶら)』
戦争は、自由に言葉を発し、モノを作り、絵を描くことさえ困難にする。1944年の京都を舞台にしたこの漫画作品は、その事実を鮮烈に伝えてくれる。本作では、プロパガンダとして戦争画を描いた、あるいは描かざるを得なかった画家たちの存在が描かれる。従軍画家の目的は戦意高揚だった。純粋な気持ちで画家を志したにもかかわらず、戦時下では自由な表現が禁じられ、戦争を肯定する作品のみが許され、発表の場が与えられたという事実がある。そんな渦中に置かれた2人の画家に焦点を当てつつ、これまで多く語られてこなかった1945年の京都空襲と物語は交差していく。
