“芸能人のオーラ”というものがある。人前に出て何かをしているような人たちだから、多かれ少なかれ感じるものはあるが、こちらとしても、それにのまれないようにだったり、フラットに伝えたいというのがあるので、敬意は表しつつも、できるだけ普通に接するよう意識して取材している。
先日、SUPER EIGHTの村上信五(43)の大学での講義を取材した。場所は村上の出身地、大阪府にある近畿大学。テーマは「芸能活動を超えて広がる、セルフプロデュースとビジネスデザイン」。ノウタス高槻農園株式会社の取締役や、自身も会社社長を務める村上にとって初の大学での講義で、近大側が村上の幅広い活動に興味を示し、実現した。
紺のジャケット姿で学生460人の前に登場すると、まずは黒板に名前を書き自己紹介。話術に定評のある村上らしく、真剣なまなざしを向ける学生に「マジメに聞くねんな」などとジョークを飛ばして場を和ませた。学生とのQ&Aでは、自身やSUPER EIGHTが歩んできた道を振り返り、「素の自分と素を見せた自分」「伝え方はデザイン」などセルフプロデュースについて経験を元に熱く語った。
中学生の頃から芸能活動をしているため、講演中は「俺は中学しか出てないから、みんなみたいに大学に行ってるのはすごい」と何度か口にした。終了後も、報道陣の取材に「先生って大変やなって思いました。僕は経験則を求めていただいてスポットでぽんと話させていただいただけ。講義として成立していたかも分からない」と謙遜していたが、14~15歳の頃から芸能社会にもまれ、試行錯誤した実体験に基づく話には深みがあった。
「世の中理不尽ですよ。でも、それに対応するようにして、全方位にキャッチできるようにできればストレスでもなくなる」
「自分が思い描いているものを手に入れられる人なんてほとんどいない。恋愛もそう、就職もそう。でも、振り返ってみたら、だいたいのことはたいしたことない。それがセルフプロデュース」
「来年30周年ですけど、アイドルはみんな標準語だった。関西弁のアイドルなんていなかったけど、逆に武器になった」
なかでも、日本テレビ系「月曜から夜ふかし」で共演するマツコデラックスの存在は「でかかった」という。
「知識量なんて僕の比じゃないし、1個の問題でも僕の見るような点ではなく面で見れる。それもあれだけの言葉のボキャブラリーも含めてやから。ずいぶん鍛えられたところはあると思いますよ。マツコさまさまです」
10歳年上のマツコと対等にタメ口トークを繰り広げることで、番組立ち上げ当初は内外で「荒れていた」が、「ちょっとずつ外の情報も遮断して。今はネットニュースやSNSは見ないようにして、セルフコントロールしてきた」と明かした。
1時間半の講義中、ずっと会話に笑いを交え、聞く相手への気遣いが感じられた。それもあってか、時間の長さは感じず、実際にほとんどの学生が熱心に耳を傾けていた。
村上は「思ってたんと違ったら申し訳ない。でも、ノートを取ってくれている学生さんの姿を見たら、自分の生きてきた人生も間違ってなかったんかな」「今日聞いてくれた学生の皆さんが、もしかどこかで社会人になって出会ったときに、言葉を交わせたら正解やったんかなと思う」と笑顔で初の講義を締めくくった。
帰り際、他紙の記者が「何というか、オーラありましたね」とこぼした。同じ思いだった。【阪口孝志】
