公開日時 2025年12月30日 05:00

演劇、思い出すきっかけに 俳優・劇団主宰 津波 信一さん
2025年を振り返る津波信一さん=22日、中城村(大城直也撮影)

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琉球新報朝刊

 これまで戦争体験をしていない自分が代弁者のような立場になることに、少しためらいがあった。戦後80年の節目を迎えた今年は、舞台「星見草」を通して、悲惨な沖縄戦と向き合う一年となった。
 伯母は、沖縄戦の体験を語り継ぎ2023年に亡くなった元白梅学徒の中山きくさん(享年94)。今年6月に上演した舞台「星見草」は、伯母の体験や思いを伝える舞台で、企画に加わり、おい役で出演もした。
 「生き残って申し訳ない」という伯母のような生存者の罪悪感が切ない。残された人、語った人、語れなかった人、それぞれが苦しむ。戦争は誰にも良いことを残さないと改めて実感した。
 「星見草」は伯母を軸とした物語だが、ほかにも無数の悲惨な体験が存在する。物語を作るときは、実在の人物をモデルにして具体的に描くのではなく、架空の人物を設定して余白も残すようにした。見る人それぞれが自分の家族や地域の記憶を重ねられるようにするためだ。
 演劇やアートには、無限大の力がある。数時間、人の時間を預かり、五感に訴えかける。ゆっくりでも、確実に心に残る。人は忘れてしまうからこそ、時々思い出すそのきっかけを与える役割があると感じる。
 今年は演劇の関係のほかにもシンポジウムでの登壇、開催趣旨に共感した地域イベントにも関わった。地元の南城市では、市長選出馬予定者の対談会で司会を務めた。市民として「次の市長はどんな考えを持っているのか」、分かりやすく伝えたいとの思いがあった。
 来年は「星見草」の学校公演、県外での公演などにも取り組みたい。ワークショップなども取り入れてみるのも良い。まずは伯母と私の地元である南城市佐敷から始めたい。
 「戦後80年だから」と一度きりで終わらせるのではなく、継続していくことが大切だ。
(長嶺晃太朗)

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