川は流れる
テキスタイルアーティストのクム・ジョニム(キム・ミニ)は、ソウル郊外の女子大学で講師を務めている。恒例の演劇祭を目前に、彼女の学科の演劇チームは解体の危機に陥っていた。演出を担当していた他大学の男子学生、ジュヌォン(ハ・ソングク)が、キャスト7人のうちの3人と同時に交際していることが発覚したのだ。ジョニムはジュヌォンを追放し、長らく会っていなかった叔父のチュ・シオン(クォン・ヘヒョ)を急遽招聘する。シオンはかなり名の知られた俳優なのだが、ある出来事をきっかけに業界から締め出され、江陵(カンヌン)で書店を営んでいた。彼は以前書いたままになっていた脚本を提供し、残ったキャスト4人とともに大急ぎで芝居を作っていく。
学生たちと彼の相性は悪くなく、稽古は順調に進む。一方、ジョニムが世話になっているチョン・ウンニョル教授(チョ・ユニ)は以前からシオンの大ファンとのことで、このふたりの仲も急速に接近しているようだった。さらに、追放したはずのジュヌォンがキャンパスにひょっこり姿を現わし、演出を続行したいとジョニムに言い張る。トラブルの火種だらけに思えてジョニムは頭が痛い。はたして演劇祭を無事乗り切ることはできるのか、この人間関係はどう決着するのか?
原題を日本語訳すると「水踰川(スユチョン)」。ジョニムの勤める大学(ロケ地は徳成(トクソン)女子大学校)の前を流れる川である(※注)。ジョニムは川の流れをテーマに連作を制作中。川の流れは人の人生や営みを意味しているのだろうか、などと書くといきなり陳腐になってしまうけれど、ともかくこの物語において象徴的意味を持っていることは間違いあるまい。
複数の世代
物語は、ホン・サンス作品をこれまで観たことのある人にはおなじみの、いつものスタイルで語られる。スタッフもキャストもいつもどおりのミニマルな編成で、撮り方も非常にシンプル。各シーンはほぼカットを割ることなくワンショットで撮られ、キャメラの移動もなく、ときおりズームやパンが入るだけ。会話のリズムや間合い、展開が、ホン・サンス映画の大きな楽しみのひとつだが、今回もそれは冴えわたる。コミュニケーションの微妙なずれを絶妙にあぶり出す面白さ、大胆な省略話法も健在だ。
