マイナビニュース・エンタメチャンネルの新たな定番記事を目指すお試し企画「日曜トライアル」。今回は、2025年のテレビ界を振り返る「テレビ界十大ニュース2025」をお送りする。
今年も番組のみならず、様々な話題が渦巻いたテレビ界。かつてのようなエンタメの中での圧倒的な地位から環境は変わったものの、「T&D保険グループ 新語・流行語大賞」でもテレビ発のノミネート語は存在感を示しており、1年を振り返るにあたって相応しい業界と言えるだろう。
そこで、マイナビニュースのテレビ担当編集者が独断と偏見で選ぶ2025年のテレビ界重大ニュース10本を「十大ニュース」として、時系列でピックアップしていく。
(1月~)業界全体を揺るがせた「フジテレビ問題」
昨年12月の週刊誌報道に端を発し、今年1月のフジテレビ社長会見の対応をきっかけに、スポンサーが一斉にCM出稿を取り止めるという民放史上例のない事態に発展。人気タレントの引退と番組の打ち切り、恒例特番の相次ぐ放送見送り、深夜にまで及んだ10時間半記者会見、株主総会のプロキシー・ファイト、経営陣・組織の大幅刷新、元取締役への提訴、そして民放連・総務省が対応する騒動となり、今年のみならず放送100年の歴史に刻まれる出来事となった。
10月単月のCM取引社数は前年比約86%まで回復したものの、清水賢治社長の掲げる「真のコンテンツカンパニー」への改革はまだ始まったばかり。今後の動向に、引き続き注目が集まることになるだろう。
(2月~)アイデアの枯渇か、資産の有効活用か…リバイバル番組続々
平成に放送された人気番組が、令和に続々と復活。2月に『ウンナン極限ネタバトル! ザ・イロモネア 笑わせたら100万円』(TBS)、8月に『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)と特番で放送された。日本テレビでは『マジカル頭脳パワー!!』『THE 夜もヒッパレ』『特上!天声慎吾』『速報!歌の大辞テン』などを5月に集中編成した「大進化!レジェンド番組祭り」を展開し、9月には大型特番『THEグルメDAY』の中で『モグモグGOMBO』も復活した。
「かつての人気番組頼り」という批判もありながら、一世風靡した名企画は懐かしさだけでなく今の視聴者も十分に楽しめる上、貴重な財産の価値を活用できることで、視聴者にとってもテレビ局にとってもウィンウィンの取り組みと言える。26年新春には二宮和也MCの『クイズ$ミリオネア』(フジテレビ)、『ウンナンの気分は上々。』(TBS)も復活するだけに、今後もこうした事例が続いていくものとみられる。
(3月~)MLBドジャース人気とWBC放映権の行方
二刀流復活の大谷翔平や絶対的エースとなった山本由伸に、完全試合男・佐々木朗希の加入により、さらに注目を集めた米MLBのロサンゼルス・ドジャース。日本で開催された3月のプレシーズンゲーム・巨人戦から個人14.6%・世帯22.9%の高視聴率をマークし、開幕戦は個人19.9%・世帯31.2%と大台に。これらはゴールデンタイムの放送だったが、ワールドシリーズ第6戦は土曜午前の中継でも個人11.4%・世帯20.7%を記録した(※いずれもビデオリサーチ調べ・関東地区)。
こうなると来春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にもがぜん期待がかかるところだが、8月、Netflixが日本における独占パートナーシップを発表。地上波テレビの中継が行われない見込みとなり、メディア環境の構造変化の分析や、国民的スポーツコンテンツのユニバーサル・アクセス権をめぐる議論が相次いだ。
(3月~)テレビ史に残る長寿番組が続々終了
日本テレビは春の改編で、23年続いた『行列のできる相談所』、29年続いた『ズームイン!!サタデー』、34年続いた『ウェークアップ』(読売テレビ制作)が終了。さらに、フジテレビのミニ番組『くいしん坊!万才』は11月で50年の歴史に幕を下ろし、10月に40周年を迎えたTBS『アッコにおまかせ!』も、来年3月での終了が発表された。
「マンネリ」と揶揄されることもありながら、長年親しまれた番組の終了は、時代の変化をダイレクトに感じるもので、SNSでは惜しむ声も多く上がっていた。
(4月~)人気番組の予期せぬ打ち切り相次ぐ
4月、読売テレビは32年にわたり放送してきたバラエティ番組『ダウンタウンDX』を、6月で終了すると発表。ダウンタウンが2人とも活動を休止している最中の知らせと、2人の姿が全く映らない最終回が波紋を呼んだ。
10月には、フジテレビがバラエティ番組『酒のツマミになる話』の年内終了を発表。放送直前での差し替え対応において、「社内における連携に不十分な点があった」とし、メイン出演者の千鳥が降板を申し出たために、終了を判断。差し替え理由は、ハロウィンの企画での千鳥・大悟によるダウンタウン・松本人志の扮装が問題視されたとされているが、詳細について公式の発表はなく、こちらも波紋を広げている。
同じく10月、BS朝日は『激論!クロスファイア』の番組内で司会の田原総一朗氏が不適切な発言を行ったことを受け、臨時取締役会で打ち切りを決定。地上波・テレビ朝日で放送されていた『サンデープロジェクト』から36年半にわたり続いてきた田原氏司会のウィークリーの討論番組が、突然幕を下ろすことになった。
フジテレビ問題に端を発した中居正広氏や、後述の国分太一氏の出演番組に加え、突然の終了発表が相次いだことで、たびたび衝撃が走る1年となった。
(6月~)国分太一、コンプライアンス違反に伴い全レギュラー番組降板
6月、日本テレビの福田博之社長が報道陣の取材に緊急対応し、同局のバラエティ番組『ザ!鉄腕!DASH!!』に出演するTOKIO・国分太一の降板を発表。過去にコンプライアンス上の問題行為が複数あったことを確認したと説明し、その内容は被害者のプライバシー保護の観点から明かされなかったが、国分は他局のレギュラー番組も次々降板・終了が決まり、TOKIOは解散に至った。
日テレはこの一連の対応について、「日本テレビガバナンス評価委員会」を設置し、同委員会は9月の最終意見書で「適切なものであった」と結論づけたが、10月には国分サイドが日本弁護士連合会の人権擁護委員会に人権救済を申し立て、11月には本人が会見でハラスメント行為の認識の「答え合わせ」を要望するなど、事態の収束には至っていない。
(6月~)「オールドメディア」批判の中…各局で事前選挙報道キャンペーン注力
6月の東京都議会選挙、7月の参議院議員選挙を皮切りに、各局が事前選挙報道キャンペーンを次々に打ち出した。以前は選挙期間に入ると、各党の公平性を担保するために放送時間を平等に配分したり、批判的論調がトーンダウンしたりするなどし、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が2017年に「量的公平」から「質的公平」への転換を求めるなど、従来のテレビにおける選挙報道に批判が高まっていた。
そんな中、SNSが選挙において大きな影響を及ぼし、新聞・テレビは「オールドメディア」と揶揄されることに。一方で、SNSで誤情報が発信・拡散される弊害も数多く見られたため、選挙報道の意識改革が一気に進み、選挙期間中においても積極的な情報発信を行うことに加え、ファクトチェックにも注力する姿勢が見られた。
(9月)34年ぶり東京開催の「世界陸上」フィーバー
9月の「東京2025 世界陸上」は、連日多くの視聴者が熱戦をテレビ観戦し、独占中継したTBSでの累計視聴人数は約7,977万人に(※ビデオリサーチ推計)。この盛り上がりを後押ししたのは、“超人BIG7”と銘打たれたスターをはじめとする選手たちの活躍や地元開催だったことはもちろんだが、2大会ぶりに“大会スペシャルアンバサダー”として復活した織田裕二の存在も大きかった。
織田は今大会限りでの卒業を明かしているが、前述のWBCが象徴するようにスポーツコンテンツと地上波放送の関係が転換点を迎えている中で、アスリートの活躍を彩るキャスターという位置づけが今後どのような意味を持つことになるのか、注目していきたい。
(通年)放送100年、昭和100年、戦後80年のトリプル節目
NHKは、1925年のラジオ放送開始から日本における放送100年を記念した「放送100年プロジェクト」を展開。その歴史を振り返る特番など、様々なコンテンツで放送を見つめ直す企画を展開し、「第41回ATP賞テレビグランプリ」の特別賞を受賞した。大みそかの『NHK紅白歌合戦』でも関連企画が予定されている。
一方の民放では、昭和元年から100年を数える節目と捉え、昭和時代に限定して振り返る番組を数多く放送。さらに、戦後80年という節目で、日本テレビは「いまを、戦前にさせない」プロジェクトを立ち上げ、8月に関連番組をGP帯に3本編成。フジテレビは、8月15日の「全国戦没者追悼式」を開局以来初めて特番編成で中継した。
(通年)制作効率化に番組企画の導入も、各局でAI活用加速化
各局で取り組みが進んできたAI(人工知能)の活用が、今年一気に加速した。日本テレビはAI活用をコンテンツ企画制作の川上から川下までを網羅する計画を発表し、テレビ東京は「“AI活用先端企業”へ脱皮し全社的に活用する」と宣言。フジテレビは「生成AIをはじめとする技術の積極的活用・DX強化により、グループのコンテンツ制作力・開発力・展開力を飛躍的に向上させる」とする方針を打ち出し、所管部署として「デジタル戦略統括室」を新設した。
番組では、日テレは秋元康が自身のAIと楽曲対決を繰り広げる『秋元康×AI秋元康』、BS-TBSは故・橋田壽賀子さんの脚本を学ばせたAIによる『AI橋田壽賀子企画 渡る世間は鬼ばかり 番外編』などが放送。TBSは、26年に放送する『VIVANT』続編で、生成AI映像を使用することを発表し、この動きは今後さらに加速していく様相だ。
