「ホラーはいま、とてもおもしろい状況にある。少ない予算でも挑戦的で奇妙で、それでいて斬新なものを作ることができる数少ないジャンルだから。そして幸いなことに、私の創造力はホラーにもっとも強く共鳴するのです」。2025年の北米サマーシーズンにサプライズヒットを記録した『WEAPONS/ウェポンズ』(公開中)でメガホンをとったザック・クレッガー監督は、一人のホラーファンとして語りはじめる。
【写真を見る】『バイオハザード』リブート版の撮影も開始!ホラー界の新鋭が仕掛ける新作は“ネタバレ厳禁”[c]Everett Collection/AFLO
「映画館で観ることでしか得られないものがある。観客が集まり、みんなで一斉に映画に注意を向け、同じ波長に乗ると、より楽しく、より深く入り込むことができる。それはまるで教会にいるのと同じです。全員が集中しているからこそ、そこでの体験はより豊かになる。映画館にただようエネルギーから何かを受け取るとき、観客全員は同じジェットコースターに乗っている。スリルもアドレナリンも、笑いのような解放も同時に得られるんだ」。
10代の頃にトレヴァー・ムーアらとコメディ劇団を立ち上げ、以後はコメディアンとして、俳優やプロデューサー、長編映画の監督にも挑むなど幅広く活動してきたクレッガー監督。単独での長編監督デビュー作となった『バーバリアン』(22)でホラージャンルへの転身を図ると、それが見事に大成功。批評家から絶賛を浴び、スマッシュヒットを記録。たちまちホラー映画界の新星として注目を集める存在となった。
批評家から絶賛を浴びた単独監督デビュー作『バーバリアン』[c]Everett Collection/AFLO
「一番大きかったのは、自信を得られたことだと思っています」と、『バーバリアン』での成功を振り返る。「私はちゃんと映画を作り、監督することができるのか?そう自問を続けながらも、自分自身に対して『できるんだ』と証明することができた。そして次の作品は僕をより大きく、より良くしてくれるような挑戦であってほしいと願った。おそらく『バーバリアン』を作っていなければ、『WEAPONS/ウェポンズ』はできなかったとさえ思っています」。
『WEAPONS/ウェポンズ』の舞台は、とある小さな町。ある水曜日の深夜2時17分、17人の子どもたちがベッドから起き、階段を下りて自らドアを開けたあと、暗闇のなかへ走りだし姿を消した。消息を絶ったのは、ある学校の同じ教室の生徒たちだけ。疑いをかけられた担任教師のジャスティン(ジュリア・ガーナー)は、残された手がかりをもとに、集団失踪事件の真相へと迫ろうとするのだが、この日を境に不可解な事件が多発。やがて町全体が狂いだしていく…。
クレッガー監督も先が見えない状態で脚本を書き進めていったという[c] 2025 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved
「親友の一人が突然亡くなった。脚本家は、時に野心的な衝動に駆られて作品を書くことがあるけれど、それは必ずしも健全な創作のあり方ではない。でもその時の私は、とても苦しい状況に陥っていたから、必要に駆られて書くことを選びました」と、本作の成り立ちについて振り返るクレッガー監督。「ただどんな作品になるのか、まったくわかりませんでした。私は脚本を書くときに、先の展開をまったく知らない状態から始める。本作の場合、小さな女の子が物語を語り、子どもたちが家から駆け出していく場面から作りはじめました」。
そして「この映画の中心にある問いは、“なぜ?”というもの。最初から奇妙で、終わりはさらに奇妙な映画だけれど、可能な限り地に足をつけている作品。観客を驚かせ、予告編や冒頭の何分かで展開が読めてしまわない物語を作るのは本当に難しい。でも本作は、どこに向かっているか予想できてしまう映画ではないと自信をもって言えます」と断言し、鑑賞者に“ネタバレ”をしないよう呼びかける。「次に観る人たちが、純粋に初めての体験を味わえるようにしてほしいですね」。
ある水曜日の2時17分に子どもたちが集団失踪…その真相とは?[c] 2025 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved
『WEAPONS/ウェポンズ』に加えてもう一本、『バーバリアン』の成功によってクレッガー監督に白羽の矢が立てられた作品がある。それは日本で生まれた世界的ヒットゲームを原作にした映画シリーズ「バイオハザード」のリブート版『Resident Evil』だ。
ゲーム版の大ファンであり、かつミラ・ジョヴォヴィッチが主演を務めた映画シリーズを一本も観たことがないと公言しているクレッガー監督。ストーリーの詳細については明らかになっていないが、ゲーム版の世界観を踏襲し、既存のキャラクターが登場しないオリジナルストーリーになるとのこと。
FIRST LOOK: Zach Cregger’s RESIDENT EVIL has transformed Prague into a snowy Raccoon City, filming large-scale action sequences with gunfire, explosions, and stunt driving. 🧟♂️🎥
📺 RE Movie Details: https://t.co/RSwZ1e2Pzk
📅 Release Date: Sept 18, 2026
🔍 Source: The Prague… pic.twitter.com/FGBTRPq9hj— RESIDENCE of EVIL (@ROEnetwork) November 4, 2025
10月にチェコのプラハで撮影がスタートしており、先日公開されたセット写真には、雪に覆われたラクーンシティの光景が広がっている。『Resident Evil』の北米公開日は2026年9月18日(金)を予定しており、現時点で日本公開は未定。『バーバリアン』から『WEAPONS/ウェポンズ』、そして『Resident Evil』へと作品を重ねるごとに進化を続けるクレッガー監督の今後の活躍から目が離せない!
構成・文/久保田 和馬
