Nick Glass and Fiona Sinclair Scott
(CNN) 20世紀後半に新たな建築言語を創造し、同時代を代表する建築家となったフランク・ゲーリー氏が96歳で死去した。事務所ゲーリー・パートナーズの広報担当が明らかにした。呼吸器疾患を患い、程なくしてカリフォルニア州サンタモニカの自宅で亡くなったという。
ゲーリー氏はカナダ・トロント生まれ。南カリフォルニア大学で建築、ハーバード大学で都市計画を学んだ後、1962年にロサンゼルスで事務所を設立した。
コンクリートブロックや合板、トタン板、金網フェンスといった実用的な素材で自宅を改修したのがきっかけとなり、1978年に州内外で一躍キャリアが開花した。
ゲーリー氏はプレゼンテーションイベント「TED」の創設者リチャード・ソール・ワーマン氏と2008年に対談した際、「サンタモニカに小さなバンガローを買って、その周囲に5万ドルほどで家を建てた」「すると何人かが夢中になってくれた」と振り返った。

ロサンゼルス中心部に新たに建設された「ウォルト・ディズニー・コンサートホール」の前に立つゲーリー氏=2003年/Robert Galbraith/Reuters
1989年にはプリツカー賞を受賞し、ゲーリー氏とその作品は一気に国際的な評価を獲得した。
ただ、スペイン・ビルバオにあるグッゲンハイム美術館の設計依頼を受けた時には60代後半になっていた。ゲーリー氏のキャリアで批評的な評価や知名度が最も高いのは、おそらくこの建物だろう。
98年、米国現代建築の「ゴッドファーザー」と称された故フィリップ・ジョンソン氏はグッゲンハイム美術館のアトリウムに立ち、感動のあまり涙を流した。米誌バニティ・フェアによると、ジョンソン氏はゲーリー氏を「いま我々が持つ最も偉大な建築家」と称賛。批評家や学者、一般の人々が一つの建物に心を奪われるという、建築界でも稀有(けう)な瞬間だった。
ゲーリー氏は、戦闘機の設計に使用されるソフトウェアで建物を造形し、建築の可能性に対する認識を一変させた。チタンで覆われたグッゲンハイム美術館は川辺に舞い降り、曲線を描き、きらきらと光を放つ。バニティ・フェアの特派員は「体をくねらせる銀の魚を包んだ巨大な花束」と表現した。
魚はゲーリー氏の作品に繰り返し登場するテーマだが、他にも日本の仏教寺院の形状、アイスホッケー、ストラトキャスターギターといった多彩な要素から設計の着想を得た。
グッゲンハイム美術館の後は、シアトルのポップカルチャー博物館(2000年)、ロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサートホール(03年)、パリのルイ・ヴィトン財団(14年)といった注目度の高い依頼を相次ぎ手掛けた。16年には当時のオバマ大統領から大統領自由勲章を受章している。
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原文タイトル:Frank Gehry, world renowned architect, dies at 96(抄訳)
