2025年、クリスマスの恒例番組『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』(フジテレビ系)が、放送開始から35年で初めて中止となった。
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今年は『明石家サンタ』が放送見送りに(フジテレビ社屋)
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今年は『明石家サンタ』が放送見送りに
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視聴者の「不幸話」に応じて賞品プレゼント
25年の前半のフジテレビは中居正広さんの女性トラブルをめぐる対応が尾を引き、スポンサーが次々と撤退していた。だが、ここのところCM出稿は徐々に回復し、問題が解消されている印象だった。『明石家サンタ』の放送見送りは、そんなフジテレビの「完全復活」も見えてきた矢先の出来事となる。
なぜ、この番組が中止なのか。答えは「可視性」にありそうだ。『明石家サンタ』は視聴者の「不幸話」に応じて、スポンサーが提供した賞品(車、パソコン、旅行券など)を直接プレゼントする構成だ。社名が前面に出ることになり、企業にとってそれは「踏み絵」に等しい。完全なフジテレビの信頼回復まで、わざわざ自社を目立たせるリスクは避けたい――これがスポンサー企業の本音だろう。
つまり、『明石家サンタ』の中止は、企業がまだフジテレビを完全には信頼していないことを象徴する出来事ではないかと考えられる。CM再開のよろこばしい報道の裏で、実はより慎重で深刻な現実が存在するということだ。
そもそも『明石家サンタ』の根幹は、視聴者からの「不幸話」を、さんまさんが聞き、そのやり取りを楽しむ――それが主眼だ。賞品提供は、本来なくてもいいシステムであり、投稿する者のモチベーション向上につながる副産物に過ぎない。
番組はこれまでその必須ではないシステムを外すことなく続けてきたが、今回この仕組みが皮肉にも「足かせ」になってしまったのかもしれない。本編の魅力だけで自立できるはずが、スポンサーシップの形態に縛られていることで身動きが取れなくなってしまったのだ。
さんまさんは、25年11月29日深夜放送の『ヤングタウン土曜日』(MBSラジオ)で、『明石家サンタ』が放送見送りになった件に触れ、「来年どうなるか?もわからない状態で」と、先行きが不透明と言及していた。
視聴者の「不幸話」に鐘を鳴らす『明石家サンタ』だが、皮肉にも番組自身が今、その鐘を鳴らされる側になってしまった。
(川瀬孝雄)
