Bリーグは10シーズン目という大きな節目を迎える。本連載ではその中で2016年の開幕からただ一つのクラブに所属し続ける、数少ない選手たちに話を聞く。第3回はアルバルク東京のザック・バランスキー選手へのインタビューを紹介する。

 

クラッチタイムで放つ勝負強い一撃。体を張って相手を止める渋いディフェンス。

 

在籍12シーズン目を迎え、アルバルク東京のカルチャーを象徴するフランチャイズプレイヤー、ザック・バランスキー。

 

鮮やかなピンクのバッシュでコートに立つ姿もあれば、迷彩柄のセットアップで街を歩く姿もある。小学生の頃、28センチの足に初めてシューズを履いたときの高揚感から始まった“こだわり”は今も続く。

 

シューズへの探究心、進化するウェアへの実感、そしてコートを離れたファッションの楽しみ。そのすべてが、勝利を追い続けるザック選手のエナジーの源となっている。

 

■「“選ぶ時間”こそ最高の思い出―初めてのバッシュ体験」

 

――ザック選手は、日本のスポーツショップでの思い出や、エピソードはありますか?

 

 

小さい頃からバッシュを選ぶのが本当に好きでした。中学生の頃なんて、もう夢中で。そこでしか見られないカラーとか、いろんなブランドが一気に並んでいるのがすごく楽しくて。『あれ欲しい、これ欲しい』と親にお願いするんですけど、結局買ってもらえるのはひとつだけ(笑)。でも、その“選ぶ時間”自体がすごく楽しい思い出ですね。

 

――最初に履いたバッシュについて覚えていることはありますか?

 

ミニバスに入ったときですね。ただ、どのモデルかは忘れてしまっていて……メーカーだけは覚えています。アディダスの緑のラインが入ったものでした。

 

――当時から足が大きかったとか?

 

 

そうなんです。バスケを始めたのが小学校6年生のときだったんですが、その時点で足のサイズがすでに28センチ。最初は体験入部で学校の上履きでプレーしたんですけど、動きづらくて全然ダメで(笑)。そのとき急遽、保護者の方が持っていた緑のバッシュを貸してもらったんです。それが最初の一足の思い出ですね。

 

 

■「ピンクは特別な色―“バッシュ選び”の極意」

 

――今日も鮮やかなピンクのバッシュを履いていらっしゃいますね。当時から派手なカラーリングがお好きだったんですか?

 

 

好きでしたね。本当に。これまでいろんな色を履いてきました。試合によってバッシュを変えるタイプなんです。このピンクは特に、自分にとって特別な色で。毎年10月の“ピンクリボン運動”に合わせて出るカラーで、思い入れがありますね。色を選ぶ楽しみは、今もずっと続いています」

 

――カラー以外で、シューズに求める条件はどんな点でしょう?

 

一番はクッション性。それと軽さ、グリップ力。この3つがすごく大事です。僕の足のサイズは32センチあるので、どうしても靴自体が重くなりがちなんです。その中でもクッションとグリップは欠かせません。

 

――具体的には、プレーのどんな場面で重要になるんでしょう?

 

 

シュートの着地や、踏み込んだ瞬間の衝撃をどれだけ和らげられるかですね。年間60試合のリーグ戦に加えて、チャンピオンシップや天皇杯、EASLなども含めると80試合以上 。いかに足の負担を軽減できるかが本当に大事なんです。毎日履いてもストレスがなく、気持ちよく動けること。その点でクッション性の高いシューズは欠かせません。さらにバスケは攻守の切り替えが多い競技なので、グリップ力があるかどうかでプレーの質も大きく変わります。

 

――そんなザック選手が、今の学生たちにバッシュ選びのアドバイスをするとしたら?

 

僕が高校生の頃は、黒や白などシンプルなバッシュを履くのが主流でした。でも今は派手なカラーも多くて、それはすごくいいことだと思います。

 

ただ、長年バスケをやってきて思うのは、やっぱり一番大事なのは“自分の足に合うかどうか”。高校生の時って『あの選手が履いているから』『みんなが履いているから』と選びがちですけど、結局は自分の足に合わないとケガにもつながります。だからぜひお店でいろいろ試し履きをして、自分にフィットする一足を探してほしいですね。

 

 

■「Tシャツも靴下も進化中―10年で変わった“バスケの快適さ”」

 

――今日着ているウェアなど、年々バスケにおけるウェアの進化をどう感じていますか?

 

 

本当にすごいですよ。たとえばこのTシャツなんて、汗をかいてもベタつかずにすぐ乾くんです。10年前と比べると驚くほど快適になりましたね。

 

僕はけっこう汗をかくタイプで着替えることが多いんですが、選手の中には練習中一度も着替えない人もいるくらい。それでも不快感がないのは素材の進化のおかげだと思います。

 

 

 

あと靴下のクッション性やグリップ感なんかもすごく良くなっていて、ちょっとした部分でも大きな違いを感じますね。

 

 

■「迷彩×キャップ―バランスで遊ぶ“ザック流”オフコートスタイル」

 

――では、コートを離れた普段の私服は?

 

スポーティな服装が多いですね。Tシャツが大好きで、寒くなったらほとんどスウェット。とにかく楽な格好が好きなんです。

 

――どんなカラーリングをよく選びますか?

 

迷彩柄の服が好きでよく着ています。派手な色や柄も好きなんですけど、チームメイトや奥さんから“ちょっと目立ちすぎだよ”って言われることもあります(笑)。

 

――迷彩柄のセットアップを着るとき、シューズはどんな組み合わせに?

 

派手な服のときは、あえて白や黒のシンプルな靴で抑えます。逆にスウェットがグレーや黒のときは、赤色などで少し遊んでみたり。全部が派手だと、さすがに“うるさい”なと思うので(笑)、バランスは意識していますね。

 

――ファッションのアクセントといえば、帽子もかぶられますか?

 

そうですね、キャップはよくかぶります。夏は後ろがメッシュになっていて涼しいタイプを選んだり、最近はスナップバックが気に入っています。TPOに合わせて色々かぶり分けていますね。

 

 

■「残り数秒――東京ダービーで決めた、忘れられない一投」

 

――ザック選手がバスケットボールをしていて一番「最高だ」と感じる瞬間はどんな時ですか?

 

 

もちろん試合に勝つことは毎回最高なんですけど、“一番”を挙げるなら、やっぱり第4クォーターの大事な場面で決める逆転シュートですね。あの瞬間の気持ちよさと、会場全体が盛り上がるあの空気は格別です。長いキャリアの中でも多くはないですが、それぞれ鮮明に覚えています。

 

――特に忘れられないシーンをひとつ挙げると?

 

 

忘れられないのは、2018年B1第5節。東京ダービー、サンロッカーズ渋谷戦です。スコアは58-61。残りわずかの場面で、チームメイトのミルコ・ビエリッツァ選手がファウルを受け、フリースロー3本を獲得しました。2本を沈めて1点差。3本目を決めれば同点という場面でしたが、惜しくも外れてしまって…。

 

そのリバウンドを自分がもぎ取り、左コーナーに開いてから真ん中へ切り込み、フローターを放ちました。相手のビッグマンの上からシュートが決まって、逆転成功。62-61でそのまま逃げ切ったんです。

 

あの一瞬の緊張感と、会場が沸き上がる歓声は今でも鮮明に覚えています。“バスケットボールをやってきて本当によかった”と心から思えた瞬間でした。

 

本編はB.LEAGUE公式Webマガジンにて
ザック・バランスキー フランチャイズプレイヤーが語るB.LEAGUEの10年 vol.3「東京で選ばれる存在に…アルバルカーズとの絆、未来への思い」

https://www.bleague.jp/bmagazine/detail/id=542609
 

 

【写真】軍記ひろし
【文章】池田鉄平

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