沸騰!エンタメビジネスPhoto by Yoko Suzuki


いまや日本の主要産業に躍り出たといっても過言ではない、ゲーム・アニメ・映画・漫画などのエンターテインメント産業。その潮流を伝える新連載『沸騰!エンタメビジネス』。第1回はSwitch2の発売効果で業績が大きく伸びた任天堂の2026年3月期上期決算がテーマ。絶好調の決算を分析するとそこにはSwitchアキレス腱も見える。気鋭のアナリストが分析した。(東洋証券アナリスト 安田秀樹)



売上高2倍増なのに営業利益は2割増にとどまる

ハードの低収益性と共に露見したSwitch2事業の弱点とは

 任天堂の2026年3月期上期決算が発表された。売上高1兆996億円で前年同期比2.1倍、営業利益は同19.5%増の1452億円、純利益1989億円で同83.1%増と大きく伸びた。


 まず、当期利益が大きく増えている点について見てみよう。これは営業外の為替差益と持ち分利益が大きく伸びたことが要因である。特に持ち分利益は関連会社のポケモンが成長していることが大きい。さらに、2025年5月に任天堂が出資していたナイアンテックがゲーム事業部門を売却した。この際、過去出資分を任天堂を含む既存株主に還元したが、これが特別利益に計上されていることが業績に寄与している。つまり、過去に行った投資案件が今の最終利益を押し上げているのだ。




 一方で、本業のもうけを示す営業利益の伸びは、売上高が倍増したことを考えると、物足りない。これは、Switch2ハードの利益率が極めて低いためだ。特にSwitch2を発表した1月の段階では、関税の導入は決まっていなかったため、米国市場での採算が想定を下回っていることが大きい。また、日本市場では導入している日本国内専用モデルは、4万9980円とグローバル版よりも、割安な価格設定にしていることも採算が良くない要因である。


 実は今回の決算では、このハードの低収益性という問題以外にも、今後のSwitch2事業にとってアキレス腱となりかねない問題も明確になった。次ページで詳しく解説していこう。


Leave A Reply