米経済活動はここ数週間、ほとんど変化が見られなかったと、連邦準備制度理事会(FRB)が26日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で指摘した。一方、全体的な個人消費は高所得層を除いてさらに減少したという。
ベージュブックによると、雇用はわずかに減少し、物価は緩やかに上昇した。
FRBは「全体として先行き見通しに大きな変化はなかった」とした上で、「今後数カ月の活動鈍化リスクが高まっているとの声が一部から上がる一方、製造業者の間では楽観的な見方も聞かれた」と述べた。

今回のベージュブックは、12地区連銀が17日までに収集した情報を基に、ダラス連銀がまとめた。
ニューヨーク、アトランタ、ミネアポリスなど複数の地区は、高所得層の消費が堅調だった一方、低中所得層では弱まったと報告した。
ミネアポリス連銀は「高所得の顧客は特に制約を感じていないが、『中所得から低所得層の顧客は支出を引き締めている』との回答があった」としている。
FRB内では12月会合で金利据え置きか、利下げかで見解が分かれているが、今回のベージュブックは、両陣営にそれぞれ都合の良い材料を提供した。
凍結採用
レイオフの発表は増えているものの、企業は従業員を直接削減するのではなく、採用凍結や自然減などの策を講じているとの報告が増えた。
物価に関しては、関税が依然として企業にとって懸念材料となっており、特に製造業や小売業では広範な原材料コストの上昇が報告された。複数の企業が、関税に関連して利益率の圧迫や財務面での負担を抱えているとした一方、需要の減少や関税率の引き下げ、関税適用の延期により、物価が下がったと指摘する企業もあった。

ブルームバーグ・エコノミクスのスチュアート・ポール氏がベージュブックについてリポート
Source: Bloomberg
FRBは「先行きについては、多くの回答者がコスト上昇圧力の継続を予想しているが、近い将来に価格を引き上げる計画については見方が分かれている」と指摘した。
賃金の上昇率はここ数カ月、FRBのインフレ目標とおおむね一致しているものの、製造業や建設業、医療分野では「緩やかな」の賃金上昇圧力が見られたと報告されている。
フィラデルフィア連銀地区のある人材派遣会社は、移民政策の影響で新たに入国する労働者数が大幅に減少しており、多くの管理職が限られた労働力を確保するために賃金を引き上げていると指摘した。
政府閉鎖の影響
今回のベージュブックは大半が、12日に終了した米政府機関の閉鎖期間中に取りまとめられた。報告によれば、一部の小売業者は政府閉鎖が消費に悪影響を及ぼしたと指摘。政府閉鎖中に補助的栄養支援プログラム(SNAP、旧称フードスタンプ)給付が滞ったこともあり、食料支援への需要が高まったと、地域の支援団体が報告している。
政府閉鎖により主要な経済指標の収集・公表が妨げられたため、企業や消費者の実情を伝えるこうした聞き取り報告は、ここ数カ月で注目度が高まっている。FRB当局者は、10月と11月分の雇用やインフレ関連の主要統計を、12月の政策会合までに得られない見通しだ。
全国レベルの公式統計が不足していることもあり、来月の利下げの是非をめぐって当局者の間では意見が分かれている。
市場では12月会合に向けて、利下げと据え置きのどちらを見込むかで見方が揺れてきたが、パウエルFRB議長の方針に沿うことが多い2人の当局者が利下げ支持を示唆したことを受け、現在は利下げ確率が約80%に達している。
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原題:Fed’s Beige Book Shows K-Shaped Split Deepens Among Consumers(抜粋)
(第3段落以降を追加し、更新します)
