移動編集局・太良編

2025/11/30 14:00

「太良スタイル」内の動画のサムネイル画像。ロゴマークでもラップを強調

「知ってもらう」「来てもらう」「また戻ってきてもらう」のサイクルをつくるのが観光協会の仕事だと話す太良ッパーさん=太良町観光協会

「太良スタイル」内の動画のサムネイル画像。ロゴマークでもラップを強調

「太良スタイル」内の動画のサムネイル画像。ロゴマークでもラップを強調

「太良スタイル」のチャンネルロゴ。太良の風景とラップを融合

 「太良町の魅力をラップで伝える『太良ッパー』です」。太良町観光協会のユーチューブ(YouTube)チャンネル「太良スタイル」の動画で、渋い声と軽やかなリズムで町の食や自然、人々の営みを紹介する。37歳の町観光協会職員の太良ッパー(本名・古賀龍貴(たつき))さんは、町内の催しでは進行のマイクも握る「町の声」だ。破天荒に見えて実は計算や経験に裏打ちされた行動で、町の観光発信に新しい風を吹かせ、観光客を呼び込んでいる。

 出身は佐賀市久保田町。「ラッパー」として太良のPRをしているが、実は音楽経験ゼロ。チャンネルを開設した2024年の4月からラップを始めた。

 思斉中-佐賀北高から日本大芸術学部文芸学科に進学。卒業後、勤めたイベント制作会社では、首都圏の市町村の観光協会と一緒に仕事をする機会が多くあった。イベントの台本を書いたり、進行を担当したりする中で、地域のために働く彼らの姿が輝いて見えた。

 10年ほど前に佐賀にUターンして仕事を探す時、「観光協会」というキーワードが心にあった。求人サイトで検索すると、太良町観光協会の募集が目に留まった。人口規模の割に飲食店や宿泊施設が多く、食の魅力にあふれている。有明海と多良岳という風光明媚(めいび)な自然環境も整い、「観光地としてのポテンシャルが高い」と感じた。自分が学び、培ったスキルや、観光への思いを昇華できるのではないか。即決だった。

 入ってみると、課題は情報発信のあり方と映った。特に、他の自治体との差別化。きれいな景色だけの動画はどこにでもある。埋もれないためには、プラスアルファが必要と感じた。

 答えを探す中で、フリーランスの映像ディレクターとして活躍する大学の先輩と話す機会があった。「観光協会の職員の顔が見えたら面白いよね」「何かキャラ付けをしないと」。やるべき方向性が見えた。その時、思いついたのがラップ。「太良」と「ラップ」を組み合わせた響きがしっくりきた。経験はないが、懸けてみようと決意し、「太良ッパー」になった。

 動画のテーマは「くすっと笑えること」。町を訪れる人にも、町に住む人にも笑顔を届けたい。町の生産者や事業者にも積極的に出演してもらっている。一人ではなく、町全体で作り上げる試みだ。

 動画の最後に披露するラップは、ほとんどが即興。撮影しながらその場で感じたことを詞にしている。撮影終盤になると「この後ラップか…」と重圧でNGを出してしまうこともあるが、「その場のライブ感を大切にしたい」。視聴者からは「韻踏んでねえじゃん」と突っ込まれることもあるがそれも愛嬌(あいきょう)。滑ってもそれが太良スタイル。幸い、出演してくれる町民たちは非常に協力的で、ノリノリで一緒に楽しんでくれる。

 当初は町民の反応も「え?」で、趣旨説明に苦労した。今では「あ、太良ッパーだ」と声をかけてもらえる。旅行者が、協会のオフィスがある町観光案内所(道の駅太良敷地内)で「動画に出てましたね」と言ってくれることも。それが本当にうれしい。

 活動の根底にあるのは、太良町を一人でも多くの人に知ってもらいたい、という思い。まず知ってもらわなければ、観光の入り口にすら立てない。

 町には「多幸感」に満ちた独特の空気がある。それは大きな魅力ながら、人口減少という厳しい現実もある。危機感とのバランスを取りながら、町全体で持続的な未来へ進んでいく。その一助となることが、自分の使命だと信じている。

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