天野千尋監督の最新作『佐藤さんと佐藤さん』の公開記念舞台挨拶が11月29日にTOHOシネマズ 新宿で行われ、岸井ゆきの、宮沢氷魚、藤原さくら、三浦獠太、中島歩、天野監督が出席した。

『佐藤さんと佐藤さん』の公開記念舞台挨拶が開催された『佐藤さんと佐藤さん』の公開記念舞台挨拶が開催された

本作は、“夫婦”という誰にとっても人生において一度は考えるテーマを軸に、人と人との関係を丁寧に、そしてヒリヒリするほどリアリティを持って描いたオリジナルストーリー。苗字が“佐藤”同士のサチとタモツが、交際、結婚、出産を経て歩んだ15年間を映し出す。芯が強く明るい佐藤サチ役を、岸井。まじめでインドアな佐藤タモツ役を、宮沢が演じた。上映後の会場から大きな拍手を浴びてステージに上がった登壇者陣。会場を見渡した天野監督は「5年前くらいに、私と脚本の熊谷まどかさんと一緒になにもない状態から考え始めたストーリー。映画となって、こんなバラエティ豊かな皆さんと一緒に舞台挨拶ができて、奇跡的なことだし、ありがたいことだなと思っています」と感無量の面持ちを見せた。

芯が強く明るい佐藤サチ役を演じた、岸井ゆきの芯が強く明るい佐藤サチ役を演じた、岸井ゆきの

映画鑑賞後の反応としても、身に覚えがあるという感想や、共感したというコメントにあふれているという本作。脚本を読んだ当時を振り返った岸井は、「私は夫婦生活を経験したことがなかったので、こんな些細なことで、こんなに噴火的なケンカをしてしまうんだとか、自分にとってはドラマチックだと思った」と吐露。しかし映画を観た人からは、「『こんなもんだよ』という感想を聞いた。『これはうちの家の話だ』と言われることも多い」と明かし、「人と人が一緒に生きるって、どれほど大変なことなのかと思い知らされるような映画になりました」と苦笑い。

まじめでインドアな佐藤タモツ役を演じた、宮沢氷魚まじめでインドアな佐藤タモツ役を演じた、宮沢氷魚

宮沢も、「初めて脚本を読んだ時に、めちゃくちゃわかるというポイントがあった」という。「僕も、タモツのようで。うまく言葉にまとめて伝えることができないし、自分のなかで溜め込んで、気づいたらキャパを超えてしまって爆発してしまった経験もある。タモツに同情もするし、共感もできる」と演じたキャラクターに心を寄せながら、「これを岸井ゆきのさんと演じた時に、どういう化学反応が生まれるのかとても楽しみだった」と笑顔を見せた。夫婦関係が揺らいでいく、ヒリヒリとした様子を体現した2人だが、撮影現場の雰囲気は「とても穏やかだった」と声を揃えた。宮沢は「ケンカのシーンが多いですが、カットがかかった瞬間にお互いに気遣ったり。役で出し切って、終わったら、普段の僕たちに戻って」、岸井も「雑談していました」と目尻を下げていた。

藤原さくら、初めての母親役に充実感藤原さくら、初めての母親役に充実感

サチの後輩である篠田麻役を演じた藤原は、「初めての母親役だった」とのこと。「どう演じようかと考えていた。撮影が始まると赤ちゃんを抱きながらのシーンが多く、とても新鮮でした。赤ちゃんを抱きながらサチのもとに離婚の相談をしにいくシーンでは、自分の気持ちだけではなく、腕のなかに赤ちゃんの体温を感じながら『この子はどうなっていくんだろう』と思ったり、初めて感じるような母性を味わった」と新たな挑戦になったと充実の表情。

タモツの弟、佐藤洋太役の三浦獠太は監督に感謝タモツの弟、佐藤洋太役の三浦獠太は監督に感謝

実家で暮らすタモツの弟、佐藤洋太役の三浦は「そんなに兄弟のシーンが多いわけではないんですが、監督が、兄弟の過去のシーンを台本として書いてくれて。実際に撮るわけではないんですが、何シーンかそういった場面を書いて渡してくれた。そこで兄弟の関係値のバックボーンが見えた」と天野監督に感謝。サチの弁護士事務所に依頼をする東海林明役に扮した中島は、モラハラでクセの強い男を演じて「楽しかった」とニヤリ。「東海林オンステージみたいな。弁護士さんにいかに自分は被害者かとパフォーマンスするシーンは、舞台に立ったつもりで」と楽しそうに語り、会場の笑いを誘っていた。

独特なリズムのトークで会場を終始、笑わせていた中島歩独特なリズムのトークで会場を終始、笑わせていた中島歩

人々の心をつかむ映画をオリジナルとして作り上げた天野監督は、「自分と熊谷さんの感覚から出てきたものが多い」と自らの心に向き合って完成した作品だという。「自分が結婚して、出産して、子育てが始まって。その時に世の中にある夫婦はこうあるべき、母親ならこうしなければという規範に自分ではめ込んで、苦しかった思い出がある。タモツの場合は『男なのに稼ぎがないのはどうなんだ』、サチの場合は『母親なのに子どもを置いて働いているのはどうなのか』とか、なんとなく社会にある価値観みたいなものがまだまだ残っている。それに苦しめられている人ってまだまだ多いんじゃないかと思う。そこをちゃんと描いていきたかった」と胸の内を明かした。

年内にやっておきたいことは?年内にやっておきたいことは?

またこの日は「今年のうちにしておきたいこと」を発表するひと幕もあり、藤原は「映画館のプレミアムシートを今年中に体験してみたい」と希望。三浦が「サウナが好き。年末は、自然にあふれたサウナで雪に囲まれていたりする。今年もそういったサウナに入って締めたい」と願うと、宮沢も「僕は雪が降っているなか、露天風呂に入りたい」と兄弟を演じた2人が意気投合。岸井は「夜の海に行きたい」そうで、これには中島が「危ないよぉ」と注意喚起して、再び会場は大笑い。その中島は「領収書の整理。確定申告が始まるので、今年の領収書は今年のうちに片付けたい」と現実的なタスクを頭に思い浮かべていた。

 天野千尋監督、「奇跡的なこと」と映画の完成に感激しきり 天野千尋監督、「奇跡的なこと」と映画の完成に感激しきり

上映後の熱気に包まれながら、映画の魅力を語り合ったこの日。最後に宮沢は「昨日ネットで調べていたら、いろいろな声が上がっていた。サチに共感できる人、タモツに共感できる人、どちらにも共感できる人。いろいろな意見や体験談があった。皆様に届いている作品になっていると実感しています」、岸井も「いろいろな感想が届いていて、人に話したくなるような映画になったなと思っています。みんなで話をしてもらえたらうれしい」としみじみ。天野監督は「いまはオリジナルの脚本で映画をつくらせてもらえるのは、本当に貴重なことで。やっぱり、有名な原作があったほうが企画が成立しやすい。こうして上映できることが本当にうれしい」と改めて感激しきり。一方で「有名な原作がある作品に比べて、広がる力が弱い面はどうしてもある」と率直に語りながら、観客の“映画を広める力”に期待していた。

取材・文/成田おり枝

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