東洲斎写楽『三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛』(写真:Sepia Times/Universal Images Group/共同通信イメージズ)
NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役を務める、江戸時代中期に吉原で生まれ育った蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。その波瀾万丈な生涯が描かれて話題になっている。第45回「その名は写楽」では、老中を辞した松平定信から協力を頼まれた蔦重が、まるで平賀源内が描いたかのような作品を創り、それを世に広めることになったのだが……。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を解説した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
「平賀源内生存説」をストーリーに入れ込んだ巧みさ
「平賀源内は生き延びて田沼意次の領地だった相良(さがら)に潜んでいるのではないか?」
「いや、かつて秋田ででかい紙風船を飛ばした源内のことだから、紙風船に乗って、以前から関心のあった蝦夷地へとたどり着いたに違いない」
「『西洋婦人図』を描いたことを思えば、人知れずに絵師として暮らしているのかも」
実際にささやかれていた「平賀源内生存説」が大河ドラマで扱われただけでも驚きなのに、多岐にわたる説をストーリーに入れ込むという前回の放送内容には驚かされた。源内について、あれこれと想像しているうちに、蔦重と妻・ていは、わが子を亡くした失意から立ち直ろうとしていた。
(前回記事「大河ドラマ『べらぼう』平賀源内の“生存説”をストーリーの軸にした大胆脚本にSNSも騒然、源内の墓は静岡にも?」参照)
そんなある日、蔦屋の店先に草稿が置かれる。タイトルは『一人遺傀儡石橋(ひとりづかいくぐつのしゃっきょう)』。源内が生前に書いた戯作の続きだと確信した蔦重。原稿に挟まれた書きつけに記された日時に寺を訪れると、そこには源内が……と思いきや、待っていたのは、意外すぎる面々だった。
松平定信、長谷川平蔵、田沼意次の側近だった三浦庄司、儒学者の柴野栗山(しばの りつざん)、大奥で筆頭老女を務めた高岳。
聞けば、10代将軍・徳川家治の長男・徳川家基を毒殺しようと手袋に毒を仕込んだのではないかとドラマの中で疑われている11代将軍・家斉の乳母・大崎の行方を追いながら、さらにその黒幕に迫るべく、皆で手を組んだのだという。定信が蔦重にも仲間に加わるようにと持ちかけて……というのが、前回までの放送である。
