熊本県出身の行定勲監督がディレクターを務める「くまもと復興映画祭」が11月21、22日に熊本県熊本市の市民会館シアーズホーム夢ホールで開催。オープニング作品は、スピッツの名曲が原案の行定監督最新作『楓』(12月19日公開)で、21日に開催された上映前の舞台挨拶に主演の福士蒼汰、福原遥、行定監督が舞台挨拶に登壇した。

最初に福士蒼汰と福原遥が登場し、温かい拍手に包まれる最初に福士蒼汰と福原遥が登場し、温かい拍手に包まれる

『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)をはじめ、様々な恋愛映画を手掛けてきた行定監督が令和に放つ『楓』は、大切な人を失った男女が真実を言えないまま引かれ合ってしまう切なさと、希望に向かおうとする姿を描いたラブストーリーとなっている。

須永恵、涼の2役を演じた福士蒼汰須永恵、涼の2役を演じた福士蒼汰

最初に、福士と福原の2人が左右の舞台袖からそれぞれ登壇した。会場の温かい拍手に迎えられながらも思いがけず序盤に2人で登場することになった福士は、「なにも決まっていないのに、行定監督から突然『最初に2人で挨拶して』って言われて」と少し緊張した様子を見せる。

ヒロインの木下亜子役を演じた福原遥ヒロインの木下亜子役を演じた福原遥

一方の福原は、「熊本にはお仕事で2回来たことがあって、熊本城に行ったり馬刺しを食べたり、楽しい思い出があります」と笑顔を見せた。その後、舞台に行定監督が姿を見せると、福士と福原は思わず「よかった」とほっとした表情で監督を迎えた。

メガホンをとった行定勲監督メガホンをとった行定勲監督

行定監督は、『楓』について「なんといってもスピッツの楽曲です。そして、いろんな人がカバーした特別な曲。長年愛されている曲なのでどんなアプローチをすればいいのか悩みました。主人公の2人が歩んだ道に新しい思いが宿ればという気持ちで作品を作りました」と思いを明かした。

「楓」の楽曲リリース当時、5歳だったという福士は「高校生のときにカラオケで歌っていた曲が、27年経って映画になり、自分が出演するのが感慨深い。この作品は、人間の奥底を描いていて、『楓』の楽曲がある種の鎮魂歌になっています。今日は復興映画祭ということで皆さんの心を温かくできたら」と述べた。

福原も「スピッツの曲は、物心ついた時から聞いていました。『楓』がリリースされた年に生まれたので運命を感じて、この作品に参加できてうれしかったです。ニュージーランドでも撮影し、壮大な景色も見どころです。観終わった後に背中を押してくれて心が温かくなるような、大切な人をより大切にしたくなる作品になっています」とアピール。

劇中歌で「楓」をカバーした十明がサプライズ登場劇中歌で「楓」をカバーした十明がサプライズ登場

その後、劇中歌で「楓」をカバーした十明がサプライズで登場。福士は「十明さんの声は透き通っているのに温かみを感じるのが不思議。この表現ができるのは十明さんならでは」と、福原は「声の透明感がすばらしく、聞くと胸がキュッとする。劇中でも大事な場面で流れて、すごく感動しました」と絶賛した。

名曲「楓」について語った福士蒼汰名曲「楓」について語った福士蒼汰

スペシャルライブでは、十明が「楓」に加え、オリジナル楽曲2曲も披露し、観客は伸びやかな歌声に酔いしれた。歌唱後、十明は「緊張したけど、心地よく歌えました。この場で歌うことができてよかったです」と笑みを浮かべた。

行定監督は「十明さんの歌声を聞けてすごくうれしい1日になりました。映画『楓』は、十明さんの曲も重要なポイントになっているので注目してください。十明さんはいつか女優もするかもしれないね」と話すと、十明が「使ってください」とアピールし、会場は笑いに包まれた。

十明が行定勲監督に自己アピール!十明が行定勲監督に自己アピール!

機材トラブルにより上映開始が40分ほど遅れたため、上映後に登壇した行定監督は観客に謝罪し、多くの観客が最後まで会場で作品を見届けたことに感謝を述べた。

また、2日目の参加も呼びかけ、楽曲「楓」の歌詞を例えに「『楓』の歌詞でも『どこまで届くだろう』と言っていますよね。皆さんにはこの船に乗っていただき、どこに漂着するのか、どこに流されるのか、映画がどこかに連れていってくれる可能性を感じてもらえたら」と初日を締めくくった。

熊本地震をきっかけに始まった「くまもと復興映画祭」は、今年で9回目となった。今年は行定勲監督作『楓』をはじめ5作品が上映され、窪塚洋介ら豪華キャストも登壇し、大盛況となった。

文/山崎伸子

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