→公式サイトより

『てっぺんの向こうにあなたがいる』

監督 阪本順治
脚本 坂口理子
音楽プロデューサー 津島玄一
撮影 笠松則通
出演 吉永小百合、のん、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずき、和田光沙、円井わん、天海祐希、佐藤浩市

 

年に一本の吉永小百合映画の時間がやってきた。今年の担当はキノシネマということで監督阪本順治で世界初の女性エベレスト登頂者田部井淳子を小百合様が演じる伝記映画が登場。田部井淳子がエベレスト登頂を果たしたのは1975年なので36歳のとき。いかに体力オバケの小百合様と言っても、エベレストに登るわけにはいかないので、若い頃の主人公はのんが演じている。さて、この物語、いくらも語り口はあるように思われる。田部井淳子(映画では多部純子)は女性だけの登山隊でエベレスト登頂を目指し、多くの苦労をする。だからこれは女性のためのフェミニズム映画となっても良かった。だが、田部井の登攀後、映画では、女性登山クラブは内紛で崩壊してしまう。どうやら田部井は山に登ることが第一で、それ以外はすべて蔑ろにできる人だったらしい。女性登山クラブの理想よりも家庭よりも山が大事な一種の狂人。そうした存在として多部(田部井)を描くこともできたろう。のんはそんな一途な狂人を演じるにはぴったりだったかもしれない。あるいは、一見するとそうした彼女に蔑ろにされているように見え、だがなおも彼女を支えようとする夫との夫婦愛についての映画でもよかったかもしれない。だが、実のところ、映画はそのどれでもない、なんとなくぼんやりとしたストーリーになってしまった。つまり、吉永小百合映画だということである。いろんな要素を上っ面だけちょろっとかじって、最後は可愛くぶりっ子で締める。それが小百合映画。

 

 

 

 

さて、物語は多部純子(吉永小百合80歳)が病院で癌告知を受けるところからはじまる。なお、今回のレビュウでは小百合年齢問題の明確化のため、小百合と絡みのある主要役者に年齢を追記します(小百合年齢問題の最高峰は『北の桜守』であるよし)。だが

「わたしが死ぬわけないでしょう?」

 とすっとぼけている純子に困惑しながらもついていく夫の正明(佐藤浩市64歳)。純子は親友北山悦子(天海祐希58歳)に連絡、二人で山に出かける。

「五ツ星のホテルじゃなきゃいやよ」

 とか言っていた悦子だが、テントから満点の星を見せられ「いいね!」と宗旨変え、バーボンを飲み交わし、昔話に興じる。この二人はただの友人同士なのでことさらに年齢を気にすることはないはずなのだが、小百合映画の出演も多くなんとなく慣れている佐藤浩市よりも天海祐希のほうが無理を感じさせた。

 

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tags: のん 佐藤浩市 円井わん 吉永小百合 和田光沙 坂口理子 天海祐希 工藤阿須加 木村文乃 津島玄一 笠松則通 若葉竜也 茅島みずき 阪本順治

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