2025年9月。ポルトガル発のクリエイティブコミュニティTHUのプログラム「THU Storytelling」が、加賀市を舞台に開催された。
参加者たちの感想を検索すると、SNS等で総じてかなり満足度の高い体験として語られている。この極めて稀有なプログラムは、いまのところまだ「知る人ぞ知る」ステータスにとどまっているように思う。というのも独自性が強すぎて、言葉で伝えることが難しいからだ。
しかし「これこそ求めていたもの」と感じるクリエイターも多いのではないだろうか。 現場の雰囲気が伝わるようにレポートしてみよう。まずは、THUとは何か?
THU Storytelling 2025 イベントの模様
独自性のあるロケーションとテーマとの関係性
THUの噂は、度々耳にしていた──THU = Trojan Horse was a Unicorn (トロイの木馬はユニコーンだった)は、ポルトガル発のクリエイティブコミュニティ。ヨーロッパで開催されるメインイベントは、映画・ゲーム・アニメ・VFX・デザインなどのトップクリエイターが集まる国際的サミット兼リトリートとして機能していると。ある意味クリエイティブ業界のグローバルな交差点として、重要な役割を果たしていると。
THUの名のもとに展開されている年間プログラムは非常に幅広い。メインイベントからキャリア支援ブートキャンプ的な「THU Career Camp」や、世界中の若手クリエイターに向けたアクセラレータープログラム 「THU Talent League」などなど、つまりは、世界中にクリエイティブ人材を育てる活動を行なっている。
今回加賀市で行なわれた THU Storytellingも、そんなTHUの広範囲な活動のひとつ。加賀という歴史がある(しかしながら人口減少に悩んでいる)街を舞台に「ストーリーテリング」をテーマに掲げ行なわれた。サブタイトルは、”The Snake Sheds Its Skin(ヘビは脱皮する)”。巳年にちなんで脱皮がテーマとなっている。
加賀温泉駅からクルマに揺られること十数分。「ここに世界のトップクリエイターが集結……ほんとに?」と思いながら、今回の会場である温泉付きのホテルに到着。クルマを降りてあたりを見回すと、ホテルの名前がどこにもなくTHUのサインだけが大きく目立っていることを不思議に思いながら、ホテルの入口に向かい、フロントに向かう。

COURTESY OF THU
なんとここにもホテルのサインはなく、受付スタッフの背面には「Your story starts here.(あなたの物語は ここから始まる)」の文字がドーンと掲げられている。
これを見てようやく鈍感なわたしも、THU Storytellingが提供しようとしてるものが何なのか気付いた。これは単なるクリエイターを集めたカンファレンスの類ではなく、イマーシブな体験を与えようとしているというわけだ。
飾られているポスターや、そこかしこに置かれた「エナジーポッド」と呼ばれるドリンクやフルーツを提供するおやつコーナーなど、ホテル全体にTHUが憑依している。
とはいえ、元々のホテルもよく手入れがされているきれいなところで、何よりロケーションが素晴らしい。芝山潟という美しい海跡湖にほど近く、風が駆け抜ける広々としたガーデンが気持ちいい。
魅力的なSenseiたちとさらに魅力的な参加者たち
ここでTHU Storytellingは、9月17-20日の4日間のプログラムとして実施された。
