
連続テレビ小説「ばけばけ」第22話。江藤安宗(佐野史郎・左)と錦織友一(吉沢亮)はレフカダ・ヘブンを出迎え…(C)NHK
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キャリア50年を誇る俳優の佐野史郎(70)がNHK連続テレビ小説「ばけばけ」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)で朝ドラ初出演を果たした。舞台地の島根県松江市出身で、島根県知事・江藤安宗役。八雲の朗読公演はライフワークとして18年間続く。同局から佐野のコメントが到着し「(八雲通の自身でも)知らないような深いところを掘り下げていて、凄くしっかりして筋が通っている」と今作の出来や共演者を絶賛した。
<※以下、ネタバレ有>
「バイプレイヤーズ」シリーズやNHK「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」など会話劇に定評のある、ふじきみつ彦氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算113作目。松江の没落士族の娘・小泉セツと、その夫で日本の怪談を世界に紹介した明治時代の作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルに、怪談を愛してやまない夫婦の何気ない日常を描く。
佐野演じる江藤知事は島根をこよなく愛し、日本が誇る一流の県へ押し上げようと奮闘。新時代を担う若者たちには英語教育の充実が不可欠と考え、外国人教師としてレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)を松江中学校に招いた。
佐野は1975年、劇団「シェイクスピア・シアター」に創設メンバーとして参加。92年7月期のTBS金曜ドラマ「ずっとあなたが好きだった」でマザコンの桂田冬彦(冬彦さん)役を怪演。テレビドラマ史にその名を刻んだ。数多の作品を彩っているが、朝ドラ出演は意外や今回が初となる。
また、2007年に朗読公演「小泉八雲 朗読のしらべ」をスタート。18年間続くライフワークで、12月10日(午後7時開演)には北とぴあ・つつじホール(東京都北区)で開催される。
――小泉八雲のひ孫・小泉凡(ぼん)さん(民俗学者)監修の下、八雲の朗読を18年。「ばけばけ」という作品の印象?
「僕は研究家ではないけれど、それなりに小泉八雲に関する書籍を読んできているので、大体の流れは把握しているつもりです。それでも、知らないような深いところを掘り下げていて、凄くしっかりして筋が通っている。もちろんフィクションだから事実と違ったり、デフォルメしたりしている部分もありますが、本質から逸脱することは
ありません。ある程度、ヘルンさん(八雲)とセツさんのことを知っている人でも、このドラマを見たら『そこまでやるんだ!』という感じは、お受けになるのではと思います」
「実際のセツさんがどんな方だったのかは、セツさんが記した『思ひ出の記』などから想像するしかないのですが、怪談や本を読むのが好きな、いわゆる“怪談オタク女子”的な感じがしています。もしご存命であったら、きっと仲良くなれるんじゃないかな(笑)。そんなセツさんをモデルにした松野トキに、髙石さんのあの大らかな感じがこのドラマにおいてピッタリだなと感じています」
「ヘブンを演じるトミーさんは、よく研究なさっているなと思います。実際のヘルンさんを見たことがあるわけではありませんが、佇まいはもちろん、その気性といいますか、決して優しいだけの男ではない強面なところも表現されていて、流石にロックバンドを率いているだけのことはあるなあと敬服しています」
「(島根の教育者)西田千太郎がモデルの錦織友一を演じる吉沢亮さんは、芝居を交わすたびに、その正直で真っすぐな姿勢に惹き込まれてしまいます。錦織が抱える後ろめたさや引き裂かれるような思いは、実は影の主役というか、近現代の日本が抱えてきた歴史の闇を代弁しているようにも感じています」
――視聴者へのメッセージ。
「『ばけばけ』の登場人物は、みんなが誰かを思いやっています。今、自分の権利や立場を主張してばかりで、相手を攻撃するようなことが増えているように感じることも少なくありませんが、価値観が変化していく中で、人にとって大切なものとは何かということをあらためて問い掛けている2人の物語であり、2人を取り巻く登場人物たちも葛藤しています。その答えは簡単には出せないものかもしれないけれど、現実を“怪談”というフィクションとして捉えることができれば、救われることもあると思います」
「今回のテーマは、価値観の違う者同士がどうやったら一緒に共存できるのかということをあきらめずに生きていきませんか?という問い掛けだと思います。江藤を演じながら、役柄と自分自身という葛藤とも重ねて、常にそのことを問われ続けているように感じています。そのことを視聴者の方々とも共感できたらと思っています。松江出身の俳優として、また江藤知事としても、視聴者の皆さんに古(いにしえ)よりの歴史の残る松江に興味を持っていただき、松江を訪れていただけるようになったらうれしいですね」
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