仕事の視野を広げるには読書が一番だ。書籍のハイライトを3000字で紹介するサービス「SERENDIP」から、プレジデントオンライン向けの特選記事を紹介しよう。今回取り上げるのは菊地敏之『冒険者たちの心理』(ヤマケイ新書)――。

山を登る人

写真=iStock.com/kieferpix

※写真はイメージです



イントロダクション

「冒険」という言葉には、未知の世界に踏み出すわくわく感、新たな発見や成長につながる機会といったポジティブなイメージがあるだろう。


一方、冒険の本来の意味は「危険を冒すこと」であり、登山家など実際の冒険者たちは大きなリスクを負って命を賭す。彼らは何を考え、何のために冒険をするのだろうか。


本書は、「冒険」とは何で、どんな意味があるのかを掘り下げるとともに、冒険者たちへのインタビューを通してその心理を明らかにしている。


冒険者たちは、命の危険に身をさらす中で葛藤と決断を繰り返し、自分自身と向き合いながら自己実現に向かう。なお、ダイジェストでは、クライマーの山野井泰史氏のコメントを取り上げたが、本書は山岳のほか海洋や極地の冒険についてもとりあげており、クライマー・キャニオニアーの大西良治氏、ヨットマンの片岡佳哉氏らのコメントも紹介している。


著者は一般社団法人アルパインクライミング推進協議会会長。10代よりアルパインクライミング、フリークライミング両面で活躍。谷川岳一ノ倉沢烏帽子奥壁大氷柱初登攀など記録多数。元『クライミングジャーナル』編集長。元オペル冒険大賞事務局長。


1.「冒険」とは何か

2.冒険の現在形

3.冒険者たちの心理


本来の冒険が持つ「リスクテイク」の意味

冒険という言葉は、今、あちこちで、意外とよく使われている。一昔前は「冒険」というと、単なるスリルや無謀な行動を指すことが多く、あまり良い意味で使われてはいなかった。だが今は、むしろ、より良い成果に向けての前向きな行動、あるいは思いもかけぬ新しい発想などといった意味で、好意的かつ気軽に使われることの方が多い気がする。


ここで、そうしたチャレンジ精神を持ち上げる傾向を否定するつもりはない。だがそれでも、本来の「冒険」という行為をその意義含めしっかり理解しようとするなら、今のそうした捉え方では充分とは思えない。というのは、今述べたような「冒険」の中には、本来の冒険が持つ「リスクテイク」ということの本当の意味が、正しく捉えられていないように思えてならないからだ。


Leave A Reply