(C)AbemaTV,Inc.
のんが主演を務めるドラマ「MISS KING / ミス・キング」(ABEMA)が11月17日に最終回を迎えた。本作は将棋界を舞台に、天才棋士の父に人生を奪われた主人公・国見飛鳥(のん)が、その深い憎しみから開花させた将棋の才能と、まっすぐに突き進む意志の強さで、自らの人生を取り戻していくヒューマンドラマ。プロデューサー・小林宙氏が、最終回後だから言えるタイトルの秘密や印象に残った視聴者からの反響などを語った。
『MISS KING / ミス・キング』タイトルの秘密
最終回まで無事に配信しておりまして安堵しております。
突然ですが、皆さんお気づきになったでしょうか?『MISS KING / ミス・キング』のタイトルが1話ずつ微妙に変化しているのです。左から1話から1文字づつ貫いていき、8話で最後のGを貫いています。ポスターなどに記載しているドラマの正式ロゴは5文字まで貫いています。このロゴデザインをデザイナーが作ってくれた時に、文字を貫いている表現が「王を撃つ」を表していると説明されて、なるほどと思い、ドラマ上はその意図に合わせて変化させました。
のんさん演じる飛鳥と、藤木直人さん演じる藤堂が力を合わせて、将棋界の頂点にいる中村獅童さん演じる彰一を倒す物語が、回を進んで果たされるのを表現できればと思い、ほとんど気が付かれないですが、こっそりやりました。
それでそもそもの『MISS KING / ミス・キング』のタイトルですが、非常にこのタイトルを決めるのはとても難儀しました。実は撮影中は別のドラマタイトルでした。『ルークガール』というタイトルで、ルークが将棋の飛車を表し、タイトルが飛鳥を表現するという意図でした。
ただルークというのがどうしてもチェスのイメージが強くなってしまい、何か別タイトルにしなくてはいけないと色々と考えていたのですが、撮影期間中には間に合わず仮タイトルで台本は印刷しました。なので、撮影中に雑談で色々なキャストやスタッフにタイトル募集をしまして、のんさんにも話しました。
最初にのんさんが言っていたのは『飛べ!飛鳥』でした。さらに飛車が縦横と動くので『十字切り』はどうかとおっしゃっていましたが、恐縮ですが個人的にはちょっと違うなと思いまして、丁重にお断りしました。
ただ私自身全然センスがなく、将棋の駒にかけて『コマったガール』と言っていたのですが、一緒に動いてくれている優秀な女性のAP(アシスタントプロデューサー)にすぐ却下されまして、結局そのAPが『MISS KING』というタイトルを考えてきてくれまして、無事に決まりました。「女性の王」という意味と、王をミスするという「王を追いやる」という感じと、「王がいなくなり恋しい」というニュアンスが含まれ、非常に秀逸なタイトルにしてくれたと思います。のんさんと私の合作の『飛べ!コマったガール!』とかにならなくて本当に良かったです。優秀な部下に感謝です。
(C)AbemaTV,Inc.
視聴者からの感想も刺激に
話は変わりますが…制作者は人によると思うのですが、私はエゴサーチをがっつりします。批判的なご意見、褒めてくださるご意見、割と全部目を通します。今回は Xでまとめアカウントのようなものがありましたが、そこではタイトルのロゴが1話ずつ変化することに気がついてくださっており、大変嬉しかったです。エゴサーチをしていると「そうそう、それは参考にした」というのを言い当てているものもありますし、プロデューサーの自分でも気が付かなかったことが書かれることもあります。
そして今回『クイーンズ・ギャンビット』みたいだというコメントもいくつか拝見いたしました。『クイーンズ・ギャンビット』はチェスドラマであり、チェスのルールが分からなくとも楽しめるドラマになっていると思います。『MISS KING / ミス・キング』も将棋のルールがわからなくても楽しめるドラマにしたいという思いがあり、『クイーンズ・ギャンビット』を参考にさせていただきました。また、ボードゲームの描き方のようなものを勉強させてもらいつつ、あの格式がある映像などは、もちろん作り手としては刺激を受けました。
あと他に言いえて妙なご意見は、『MISS KING / ミス・キング』の設定が浦沢直樹さんの作品である漫画の『YAWARA』の親子関係を思い出すというご意見もあったのですが、それも脚本打ち合わせの時に例として出していました。
『YAWARA』は柔道の天才の娘が、柔道家の父親を幼い時に投げ飛ばしたことで父親が家を出ていってしまい、そのこともあり娘は柔道にトラウマ的な距離があり、父親がなぜ家を出ていってしまったのかという部分が後々に分かるストーリーがあるのですが、『MISS KING / ミス・キング』とどこか設定がかぶっています。
ただストーリーはまったく別ですので、父親の心情を脚本家や監督に分かってもらうための、娘の天才性に恐怖する勝負師の参考に例を出していました。と、ただ最初の設定の時に参考にブレストしただけですっかり忘れていましたが、SNSで『YAWARA』味を感じるというご意見があったのはすごいなと思いました。
今の視聴者の方々は、色々な作品を見たり読んだりされているので、刺激になります。自分がこの業界に入った時、先輩のプロデューサーに「シェイクスピアの時代に物語は全部完成してるんだ」と言われて、確かにそうであるとずっと思ってはいましたが、SNSなどの皆様のご指摘で、先人の方々の素晴らしいストーリーの系譜の上にいつも小さく鎮座する矮小な自分を恥ずかしく改めて感じました。勉強し続けなくてはいけません。ただドラマの『クイーンズ・ギャンビット』も漫画の『YAWARA』も、まごうことなき名作なのは確かなので、皆様も是非ご覧ください。
(C)AbemaTV,Inc.飛鳥の誕生日にも制作陣の面白い仕掛けが
ちなみにエゴサーチで面白かったご指摘は、のんさん演じる主人公の飛鳥の誕生日が、ドラマ上に出てきた書類で11月17日になっておりまして、これは脚本家やプロデューサーが決めたことではなくて、監督と助監督が決めたものなのですが、おそらくその日に設定したのは「将棋の日」だからだとご指摘している投稿がありました。それは把握しておらず、知らなかったのでとても面白いと感じました。そして11月17日は、このドラマの最終回が配信された日でもありますし、とてもいい日に飛鳥の誕生日を設定したなと感心しました。
色々な作り手がいるとは思いますが、私は自分が脚本家や監督と脚本を作り、キャスティングもして、ある程度軌道に乗ったら、人に任せたいタイプのプロデューサーです。材料を全部差し出して、監督やスタッフ、キャストがどのように調理して提供してくれるのかが楽しみです。同様に視聴者の方々がどんな見方をしてくださっても、それはそれでありがたいことだと思っています。自分の知らないところでこのドラマの話をしてもらっているというだけでとても嬉しいですし、何か自分の作品が1人立ちしたように感じます。
そしてキャスティングやスタッフィングをしている自分としては、参加してくださるキャストやスタッフにとって、参加して良かったと思える作品にしたいなと思ってやっています。願わくば皆さんにとっての代表作になって欲しいと自分ができることをずっと考えています。視聴者の方にとっても同様で、見て良かったと思える作品になってくれるのが一番ですが、その意味では『MISS KING / ミス・キング』は賛否含めて話題になってくれていると感じていますし、非常にいい作品になったと思っています。
そして何よりも少なくても私個人にとっては『MISS KING / ミス・キング』は代え難き大切な作品になりましたので、見事に作り上げてくれたスタッフ、キャスト、そして見てくださった視聴者の皆様に感謝いたします。
最終回となる第8話まで配信しておりまして、来年1月7日(水)までABEMAで全話無料配信しています。ご覧になっていない方も、この機会に是非ご覧ください。
これでひとまず『MISS KING / ミス・キング』は終わりますが、飛鳥の物語を個人的にはまだまだ見たいと思っています。続編があることを期待してます。あるといいなー、続編。飛べ!飛鳥。
(C)AbemaTV,Inc.
下に続きます
NEXT:【動画】「MISS KING / ミス・キング」最終話冒頭10分公開 (2/3)
