女優・唐田えりかさんが、「言葉」と「写真」、そしてこれまで出会ってきた「人」をテーマに綴る月1回の連載『面影』。
第2回となる今回は、唐田さんがプライベートでも親交の深いダンサーの菅原小春さんについて。唯一無二の存在感を放つ彼女との時間を、唐田さんならではのまなざしで見つめます。
初回に引き続き、撮影は写真家の濱田英明さん。唐田さんが高校時代に通っていたという喫茶店で、穏やかな時間をおさめました。

動物でいて、人間でいるような人
「長所はなに?」と聞かれると、小さい頃からなんとなく「人に恵まれているところ!」と答えていた。答えになっているのか分からないその言葉の意味を、この歳になったいま「本当にそうだな」と痛感している。
今回は大切な友人のひとり、菅原小春さんのことを語りたい。
普段私は、こはねえと呼んでいるので、ここでもそう呼ばせてもらいますね。
こはねえとは今夏に公開される、映画「海辺へ行く道」の初号試写会のあと、初めましてのご挨拶をした。
恥ずかしくも「世界的トップダンサーだ!!」というミーハー心を抱いていたのだが、実際に会った生のこはねえは、想像以上に”スーパースター”だった。
オーラ、存在感、華がすごい。かっこよすぎる。女が惚れる、女性だ。
最近、私は人相というものが気になるようになった。
どんなに美しい造形をしているひとでも、そこに濁りを感じることがある。
こはねえの人相は、野生的で、本能が鈍っていない人特有の力強さがある。自分の色というものを、こんなにも濃く持っている人を、私は見たことがない。
何かに例えるとするならば、もののけ姫のサンがリアルに存在しているようである。動物でいて、人間でいるような稀有な人だ。

『海辺へ行く道』はこはねえにとって初めての映画出演で、完成までとても緊張していたらしい。
上映後、こはねえは心から感動して「こんな感動があるからみんな芝居をするんだね?!」と、子供のように言っていた。
ねえ! 飲みいこうよ!! とその高ぶりのまま、居酒屋に連行してもらった。
だが私はそのとき、こはねえとは逆に、自分の芝居への反省で少しばかり落ち込んでいた。お酒を飲んで真っ赤な顔で、「あーー! 私は情けないです! あまりにも計画せず芝居をしすぎていた! 自分だけ浮いていた! 情けない!」と、初対面のこはねえにぶちまけた。
こはねえは、爆笑していた。
そう、こはねえは、とっても気持ちよく豪快に笑う人なのだ。
大笑いしながら、「私はえりかの芝居大好きだったけど? あれでいいんじゃーん! 監督もあれを望んでるんだよー!」と、私の大反省を吹き飛ばしてくれた。
嘘がつけない人のピュアな強さで伝えてくれた。
終始、私この人、大好きすぎるな。と思った。
その日は結果朝まで飲み明かした。濃すぎる初対面の一日となった。
