真田広之さんが主演とプロデューサーを務め、数々の国際ドラマ賞を総なめにして大きな話題になった「SHOGUN 将軍」ですが、シーズン2のキャストが発表されて、早速大きな注目を集めています。
新キャストには榎木孝明さんや、國村隼さんのようなベテラン俳優から、金田昇さんのような若手俳優も名前を連ねる一方で、水川あさみさんと窪田正孝さんが結婚後初の共演となるニュースが、日本では大きな話題になったようです。
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「SHOGUN 将軍」シーズン2は、撮影が開始されるのが来年の1月ですので、実際にドラマを視聴できるのはおそらく再来年以降と考えられますが、今回のキャスト発表は日本の俳優陣にとっても非常に重要なニュースであると思いますので、詳細をご紹介したいと思います。
様々な世界のドラマ賞で日本人初受賞を量産
今回の「SHOGUN 将軍」シーズン2のキャストは、今後のディズニープラス作品を紹介する「ディズニープラス・オリジナル・プレビュー 2025」という香港で開催されたイベントに合わせる形で発表されたものです。
筆者もディズニーより招待いただき、イベントに参加させて頂きましたが、「SHOGUN 将軍」のセッションは、一連の作品発表の最後を飾る形で実施され、参加していた各国のメディアからの歓声も非常に大きかったことが非常に印象的でした。
なにしろ「SHOGUN 将軍」といえば、シーズン1はエミー賞での18冠受賞を筆頭に、ゴールデングローブ賞や批評家協会賞でも最多の4冠を達成するという世界のドラマシリーズの歴史にその名を刻んだ作品です。
日本人として初のエミー賞やゴールデングローブ賞の主演男優賞を獲得した真田広之さんを筆頭に、アンナ・サワイさん、浅野忠信さん、穂志もえかさん、平岳大さんなど、たくさんの日本人俳優が、様々なアワードで受賞やノミネートの栄誉に輝いたことが記憶に新しい方も多いと思います。
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一方で、当日のセッションでもプロデューサーのジャスティン・マークスさんが「シーズン1で多くの人を殺してしまいました」と冗談で会場を沸かせていたように、実は真田さん以外の受賞俳優、ノミネート俳優はシーズン2には出演しないことが明らかになっています。
そこで、今回シーズン2では新たに錚々たる俳優陣が新キャストとして顔を連ねることになったわけです。
ハリウッド出演経験のない日本人俳優も積極的に起用
ここで注目したいのが、今回の新キャストを含め「SHOGUN 将軍」はハリウッド制作のドラマシリーズであるにもかかわらず、日本の俳優陣が当然のようにキャスティングされている点です。
シーズン1では、主要な役割を担っていた真田広之さん、アンナ・サワイさん、浅野忠信さん、平岳大さんが、ハリウッドで既に他の作品でも活躍していた俳優ですので、少しその印象は薄かったかもしれませんが、例えば批評家協会賞で助演女優賞に輝いた穂志もえかさんは、ハリウッドでの出演経験がありませんでした。
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穂志もえかさんは、オーディションのタイミングがコロナ禍だったこともあり、台本にあるいくつかのシーンをiPhoneで撮影して送るかたちで実施されたそうです。
今回、筆者はプロデューサーのジャスティン・マークスさんと脚本のレイチェル・コンドウさんに直接質問させて頂く機会をいただいたのですが、実はこうしたオーディション自体はアメリカでは珍しいことではないそうで、「日本の俳優は、ハリウッドのやり方に慣れておらず、スマホの動画で質が悪くて申し訳ないと謝ってくるが、そんなの気にする必要はない、良い演技は観れば分かる」とハッキリ明言されているのが非常に印象的でした。
プロジェクトの最初から日本人俳優起用を決定
さらに、お二人に質問をしていて驚いたのが、実は日本人俳優に日本語で演技してもらうということは、二人が「SHOGUN 将軍」のプロジェクトを任され、脚本を検討し始めて2018年の段階で既に決めていたということです。

当然、当時のハリウッドではまだコロナ禍にもなっておらず、字幕で大作ドラマを制作すること自体には大きなリスクがありました。
ただ、2人は日本の歴史を表現するのであれば、当然英語ではなく日本語で表現しなければウソになるという信念を持っており、この作品で字幕嫌いのアメリカ人に字幕を見る文化を作るというぐらいの覚悟でいたそうです。
一方で、その選択が成功するかどうか、1話が公開されて視聴者が「SHOGUN 将軍」に熱狂していることが分かるまで、怖くて寝れなかったともおっしゃっていました。
「SHOGUN 将軍」では、真田広之さんに主演を依頼した際、真田広之さんから日本の実力派俳優や時代劇の経験豊富な専門家をそろえることを条件として出したという逸話が有名ですが、実はプロデューサーと脚本家のお二人も、真田広之さんと同じように日本の実力派俳優が必要だと考えていたからこそ、「SHOGUN 将軍」は今の形で生み出されたと言えるのかもしれません。
俳優の良さは言葉が分からなくても「目で聴く」ことで分かる
また興味深かったのは、2人が日本の俳優を起用するかどうかを判断する際に、彼らの演技を「目で聴く(Listen with your eyes)」とおっしゃっていたことです。
穂志もえかさんのオーディションの演技をスマホの動画で見たときにも、彼女の外見に見える、か弱さの中に静かに燃える強さが見えたから、彼女が藤の役にピッタリだと直感することができたのだそうです。
おそらく、シーズン2の新キャストのオーディションも同様に、彼らの演技を「目で聴く」ことで日本の俳優陣の中から、水川あさみさんや窪田正孝さんのような演技派俳優を見出すことができているということでしょう。
穂志もえかさんが、ハリウッドでは無名だったにもかかわらず、「SHOGUN 将軍」での出演を通じて、主演のアンナ・サワイさんに勝るとも劣らない人気になったことは、彼らの「聴く目」が正しかったことの何よりの証拠と言えると思います。
当然、今回「目で聴く」ことで選ばれた新キャストの方々にも、穂志もえかさんと同様に、世界での躍進が期待されるわけです。
日本の才能を世界に紹介するプラットフォームに
なお、筆者は当日のセッションで真田広之さんに「将来シーズン3に参加したいと考えている未来の若い俳優へのアドバイスをください」という趣旨の質問をさせていただいたのですが、その際に「夢は大きい方が良いので、今からいろんな準備をして前を向いて歩いて欲しい」という回答に加えて「この将軍というプラットフォームも、若い才能にチャンスを与えて世界に紹介する大事な舞台になっていると思う」とお話しされていたのも非常に印象的でした。
真田広之さんが、「SHOGUN 将軍」への出演を受ける際に、日本の実力派俳優や時代劇の経験豊富な専門家をそろえることを条件として出したことは、間違いなくこうした日本の才能を世界に知ってもらうための一つの「プラットフォーム」として、このドラマを活用しようというビジョンがあったからでしょう。
その真田広之さんのビジョンが、プロデューサーのジャスティン・マークスさんやレイチェル・コンドウさんの「日本の歴史は日本の俳優に日本語で演じてもらうべき」という信念と組み合わさったことで、見事に「SHOGUN 将軍」はアメリカの視聴者の心に届き、多くの日本人俳優を世界に知られる俳優に変える「プラットフォーム」となったわけです。
今回の「ディズニープラス・オリジナル・プレビュー 2025」のセッションでも、真田広之さんたちの登壇前に、シーズン2のイメージ画像が表示されましたが、二階堂ふみさんが燃えさかる城の横に立つ姿が印象的なイメージになっています。

シーズン2は、シーズン1から10年後ということなので、シーズン2で真田広之さんが演じる吉井虎永と対峙する、対の主役として脚光を浴びるのは、おそらく落葉の方を演じる二階堂ふみさんになるでしょう。
当然、二階堂ふみさんの様々なアワードでのノミネートや受賞が期待されるわけです。
また真田広之さんは、シーズン2には歴史を知っている日本人にとっても驚きがある「ひねり」が入っていると話されていました。
その「ひねり」にどのような形で今回発表された新キャストが絡んでくるかで、さらに穂志もえかさんのような日本人俳優の新しいシンデレラストーリーが生みだされることになりそうです。
いずれにしても、「SHOGUN 将軍」シーズン2の配信は、まだかなり先になると思いますので、今から首を長くして待ちたいと思います。
この記事は2025年11月16日Yahoo!ニュース寄稿記事の全文転載です。
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