キヤノン PowerShot V1 × スナップ|鶴巻育子

【この記事の目次】
はじめに

今回は現在私のいちばんの相棒であるPowerShot V1を紹介したいと思います。V1はどんなバッグにも無理なく収納できますし、高級感のある上品でシンプルな見た目からどんな装いでも邪魔をしません。普段の街スナップから旅の写真、そして記録写真まで、最近はほとんどこの1台で撮影しています。約半年間使い続けたPowerShotフラッグシップモデル「PowerShot V1」の使い心地についてお話ししたいと思います。

キヤノン PowerShot V1


キヤノン PowerShot V1

133,650円(税込)

中古: 110,000円(税込)~

操作性について
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f4.5 1/640秒 ISO100 -1EV 焦点距離13mm(35mm判換算約26mm)
渋谷のスクランブル交差点。ここでは誰もがカメラを構えているため非常に撮りやすい場所といえます。さらに仰々しさのないPower Shot V1は、人混みでも扱いやすいカメラです。
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f2.8 1/2000秒 ISO400 -0.3EV 焦点距離8.2mm(35mm判換算約16mm)
渋谷駅前に奇抜な格好の男性を見かけ声をかけました。ポートレートを撮らせてもらった後、翼が気になったので後ろを向いてもらい16mmで近づき撮影。普段人でいっぱいの駅前も彼の周囲に人がいないのもおもしろい。

PowerShot V1が発売して間もなく、長いストラップを購入し毎日カメラを首にかけて街をぶらぶらしていました(本体にはリストストラップが付いています)。友人知人との会話でも話題の的となっていましたが、意外と大きい、厚過ぎという感想をよく耳にしていました。確かにリコー GRやソニー VLOGCAM ZV-1と比較すると一回り大きく、厚みがありますが、PowerShot V1は動画撮影の意識を感じるカメラで、4K30Pの連続撮影も可能になるよう冷却ファンを搭載したり自撮り撮影でも操作しやすいグリップデザインに拘った結果。私にとっては、ある程度の重量や厚さがある方が手に馴染むためかえって扱いやすく感じます。

背面ボタンやリングはキヤノンではお馴染みの配置。2018年から登場したEFレンズに搭載された便利なコントロールリングももちろん付いています。ちなみに私は露出補正を割り当てています。静止画と動画の切り替えスイッチは、背面上部に配置されており右親指で素早く切り替えができるので、静止画と動画を頻繁に撮影するユーザーにとって操作性は抜群だと思います。

迷いが起きない16-50mmの画角
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f5.6 1/1250秒 ISO320 +1.3EV 焦点距離18mm(35mm判換算約36mm)
あえて広角でポートレートを撮影してみました。横位置で狙うことで周囲の状況が入り込み、写っている人物と背景の風景との関係性を想像させます。
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f4.5 1/640秒 ISO100 +1EV 焦点距離26mm(35mm判換算約52mm)
香川の旅で出会った光景。海岸近くにある広場でゲートボールを楽しむ人々。東京にはない穏やかな時間が流れていました。35mm判換算で標準に近い画角は落ち着きがあり、こんな風景にぴったりはまります。
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f4 1/160秒 ISO200 -1EV 焦点距離8.2mm(35mm判換算約16mm)
広角端16mmで街を眺めると撮りたくなるこんな風景。前日の雨でできた大きな水溜りにカメラを近づけると迫力ある絵が浮かび上がります。

レンズは35mm判換算にして約16mmから50mm相当のズーム域。広角端約16mmは、背景を入れての自撮り、商品レビュー、大人数の集合写真撮影など、SNSなどでの動画撮影を重視しての画角を意識したようです。レンズ交換する手間が省けるのも、大きな魅力でしょう。

カメラではほとんど動画撮影は行わない私にとっても、純粋に写真を撮影するのに扱いやすい画角と感じています。私が普段ミラーレス一眼で撮影する際、ほとんど35mmと50mmの2本で十分事が足りるためでしょう。極端にパースの出る広角端の16mmは、通常自分の作品を撮影する時は使うことはありませんが、集合写真や展示風景など記録写真を撮影するとき重宝しています。望遠までカバーする超広域レンズが便利という考えもありますが、あまりに画角の選択の自由度があると撮影する際に迷いが生じ、本来撮りたいと思う気持ちが写真に載らなくなってしまうため好みではありません。もしどうしても寄りたいと思えば、1.4倍クロップ機能を使用すれば35mm換算で約71mmまでは届くことになります。ただ個人的には、素直に広角から標準を純粋に楽しんでもらいたいと思ってしまいます。

安心できる画質
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f4.5 1/1600秒 ISO400 焦点距離8.2mm(35mm判換算約16mm)
猫のヒゲや瞳を確認すると高画質な画像であることが一目瞭然。背景も自然にボケて、主役を引き立てる役割を果たしています。
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f5.6 1/1250秒 ISO400 -1.7EV 焦点距離21mm(35mm判換算約42mm)
枯れた花のディテールが描写され微妙な色合いも再現されています。また花の立体感も感じられ、画質の良さが伝わる写真です。
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f3.5 1/1600秒 ISO6400 -1EV 焦点距離10mm(35mm判換算約20mm)
射的で景品を狙う子供たち。自分が子どもの頃と変わらない光景が見られることに安心します。こんな時、迷いなくISO感度を高く設定し撮影を楽しめるのも嬉しい。

通常のコンパクトデジタルカメラに搭載されている1.0型センサーと比較し、面積が約2倍の1.4型センサーの搭載によりコンパクトカメラであっても静止画で最大約2230万画素、動画では最大約1870万画素を実現しています。私の他の愛用機であるEOS R8で撮影した写真と組み合わせても大きな差が発生しないため、ストリートスナップはカメラの種類を気にすることなくその日の気分で決めたカメラを使用し、作品を組む際もカメラで分けることなくミックスさせています。

静止画撮影では通常ISO32000相当に対応し、暗い環境でもノイズの少ない鮮明な画像を得ることができます。とはいえ、私が通常撮影する際は他の写真とのバランスも考えISO6400までに抑えています。

瞳検出の実力
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f5 1/1000秒 ISO100 焦点距離14mm(35mm判換算約28mm)
おとなしいワンちゃんだったので、瞳検出を使わなくても十分ピントを合わせることが可能なシーンでしたが、動物を撮影する際はいつもあえて瞳検出を動物に設定し試しています。

デュアルピクセル CMOS AF II for PowerShotを搭載した被写体検出性能、トラッキング性能の向上によって、人物や動物の撮影も失敗が少なくなるのは嬉しい。以前はこういったカメラの性能に頼り過ぎることにやや抵抗を感じていましたが、歳を重ねてきたことで瞬発力の低下もあり、使えるものは使おうという精神にシフトしてきています。ただ人物はカメラの性能に頼らず、動物は瞳検出機能を多用するという、私独自のルールがありますが…
検出する被写体は自動/人物/動物優先/なしから選択可能で、動物優先の設定時には犬と猫が検出できます(鳥と馬の検出は不可となっています)。小さなお子さん、運動会、ドッグランでわんちゃんを撮影する際にはフルに活用できる機能でしょう。

動画(被写体追尾IS)14のカラーフィルター



シーンに合いそうなフィルターを選んで感覚的に撮影してみました。使用したフィルターは順番にStoryBlue、Sepiatone、TastyWarm。簡単に古い映画にようなシーンが撮れたり、印象的な動画を楽しむことができました。

PowerShot V1の主な動画性能は、冷却ファン搭載、豊かな階調、強力な手ぶれ補正、カラーフィルターなどが挙げられます。ほとんど動画撮影は行わない私にとっては、撮影シーンや好みで選べる14種類のカラーフィルターが一番興味をそそられる機能。

例えば、映画のような陰影を演出しつつ全体を青色に偏らせるStoryBlueは川や海など水があるシーンに使用すると、より透明感が際立ちました。Sepiatoneは完全なセピアにならず、僅かに色を残しつつ全体的に彩度が低めの茶色が被った、落ち着きがありながら不思議な印象を与えます。TastyWarmは若干彩度とアンバーが高めで暖かいイメージを演出する効果があります。私の場合、遊びで撮影する程度になるため、考え過ぎずにその場の感覚でカラーフィルターを選択して楽しむのが合っていると感じました。

おわりに

小さいからといって記録写真や遊び用にしてしまっては勿体ないPowerShot V1。とは言え、一眼ミラーレス機やいいレンズで写真を撮りたい衝動に駆られる気持ちもわかります。気合を入れての撮影にちょっと疲れたと感じたら、PowerShot V1を手に気楽に街を歩いてみてはいかがでしょう。そんなとき、案外いい写真が撮れるものだと思います。

■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f5 1/200秒 ISO100 焦点距離22mm(35mm判換算約44mm)
ちょうど手すりに腰をかけている時出会ったシーン。雑踏の中に華やかな白のスカートが目を引きました。
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f6.3 1/1600秒 ISO400 +0.3EV 焦点距離8.2mm(35mm判換算約16mm)
大きく揺れる船の上では片手でひょいッと写し止める方が、臨場感ある写真が撮れてしまうようです。
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f4 1/15秒 ISO200 -1EV 焦点距離14mm(35mm判換算約28mm)
グラデーションが美しい空が窓から見えました。急いで屋上に上がり撮影した風景。日が暮れて暗くなった家並みや樹木を見ると階調の豊かさが実感できます。
■撮影機材:CANON PowerShot V1
■撮影環境:f5 1/320秒 ISO100 -0.3EV 焦点距離26mm(35mm判換算約52mm)
ショーウィンドウの中に生けてあった紫の花。ちょうど西陽が当たりりキラキラと輝いている綺麗な場面でした。ガラスの傷や汚れがいい演出をしてくれています。

 

 

■写真家:鶴巻育子
1972年東京生まれ。写真家。1997年の1年間渡英し語学を学ぶ。帰国後周囲の勧めで写真を学び始めた。執筆や講師など幅広く活動する一方、 Jam Photo Galleryを開設し、著名写真家の企画展やアマチュア育成にも力を注ぐ。国内外のストリートスナップで作品発表や視覚障害者を取材し「みること」をテーマとした作品にも取り組む。2023年第31回林忠彦賞最ノミネート、2025年第44回 土門拳賞最終ノミネート、2025年第33回林忠彦賞受賞。

 



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