【速レポ】<CROSS ROAD Fest>PENICILLIN「聴きたいなと思った時に、僕たちは必ずそこにいます」

夜明けのような照明とともに、ストリングスと管楽器のアンサンブルも荘厳な響きが流れる。オープニングSEは、『ドラゴンクエスト』のテーマ。その平和な雰囲気を打ち壊すかの如く、凶暴なギターがスクリーム。赤いアイパッチを着けたHAKUEI(Vo)がマイクスタンドを引きずりながら登場し、声をあげる。
オープニングナンバーは「煽り~Chaos」だ。泣き叫ぶようなウェットな歌声が切ない。Vシェイプのギターから繰り出される千聖(G)のブラウンサウンドは、いわゆるヴィジュアル系でよく使われるクリーントーンではなく、ハードロック系の熱を感じさせる。ギターソロもフルピッキングやレガートなど速弾きをフィーチャーしたトリッキーなプレイ。ドラムのスピード感もたまらない。
◆ライブ写真
そのまま音が途切れることなくスタートしたのは「CRASH」。これまた一体感のあるバンドサウンドに圧倒される。が、ハードな音作りの一方で、サビのメロディーをはじめとすり歌心あるアレンジのクオリティーも高い。《誰にも負けないダイヤの翼で》と歌われるサビでは、会場に手扇子のウエーブが広がった。
ここでHAKUEIによるMC。
「幕張のみなさん、こんにちは。PENICILLINというバンドです。今日はこんなすごいメンツのイベントに参加できて嬉しいです。解散して復活したり、久しぶりにまたやるっていうのは、すごいエネルギーが必要だと思うし、そういう大変なことを乗り越えてきた人たちと一緒にやることができて幸せです。皆さんもチケットを取れてラッキーですね。今日の出演者の中で、たぶん僕らがいちばん年上なんですよ。33年以上やってるんで、一番古株というか老害というか、ベテランというか(笑)。ただ、ひとつだけ聞いてほしいことがあります。PENICILLINは、一度も解散も活休もしてません。聴きたいなと思った時に、僕たちは必ずそこにいます」と、バンドを続けることの貴重さを伝え、「一昨日、MVが公開されたばかりの、新曲いきまーす!」と、最新作品を紹介。

紹介された新曲「阿修羅青年期」は、真っ赤なライトとレーザーが会場を照らす中でスタート。《阿修羅阿修羅》と歌うHAKUEIの姿が実におどろおどろしい。片手にマイク、もう片手にマイクスタンドを持ち、時にスタンドを頭上に掲げたり、時に肩に担いだり。エフェクトをたっぷりかけた歌声も地獄の底から響いてくる呪詛のようで、マイクスタンドを長太刀と見まがう場面も。ビジュアルとサウンドの両面で表現された、PENICILLIN流サイコホラー的楽曲に感じた。
「阿修羅青年期」の最後に放たれたスクリーミングギターに重なるようにO-JIRO(Dr)のドラムがフィルイン。「99番目の夜」だ。歌謡曲的な魅力も感じさせるメロディアスなナンバーだが、シンセの端正なシーケンスフレーズにきっちり溶け込むギターリフの妙はさすがのアンサンブル。盤石なボトムを築くリズム隊あればこそ、ギターソロも思いっきりワイルドに暴れられるし、ボーカルも表現者として己を解き放てるのだと思う。
ここで再び、HAKUEIによるMC。
「PENICILLINは、気になったらいつでも見に行けるバンドとして33年間、活動を続けてきました。もちろんロックバンドなんですけど、MCがめちゃくちゃ面白いんですよ。あ、僕じゃないですよ。リーダーの千聖くんが。一発ギャグとか、神をも恐れぬモノマネとかいろいろ持ってるので、味わって帰ってください」

それを受けて、今度は千聖のMC。
「千聖です。面白いって紹介してもらったんですけど、最近は僕より面白い人がいっぱいいるんですよ、Waiveの杉本くんとか。ほんとよく喋る(笑)。その後にSEX MACHINEGUNSが出てきたり。昔はバンドマンってあまり面白いこと喋らなかったんですよね。さて、ここでひとつお知らせがあります。ちょっと残念なお知らせなんですが……。実は、『紅白歌合戦』出られませんでした! でも、俺たちにとってはこのイベントが『紅白』。トリはラクリマだから、紅白で言えば北島三郎かな、で、俺たちはちょっと年上だから、三波春夫のポジション(笑)?」
笑いを交えてしっかりオーディエンスとの距離を縮めたところで、ヒット曲「ロマンス」を投下。サビでは大合唱が起きるほどのキャッチーな歌メロと、アーミングやピッキングハーモニクスを組み合わせた速弾きなどキッズの心を鷲掴みするギタープレイもすごい。

「ラスト行くぞー!」の声で始まったのは「FOR BEAUTIFUL MAD HUMAN LIFE」。ツーバスをフルに生かしたパワフルなロックビートは、アグレッシブに攻める前半と、グッとテンポダウンして邪悪な雰囲気たっぷりに聴かせる中盤とのコントラストも鮮やか。HAKUEIのボーカルにユニゾンして、千聖とO-JIROがオクターブ下をダブルで歌う響きも邪悪さに拍車をかける。後半ではステージ上下から火花が吹き出し、さらに高揚感がアップ。激しさに徹した演奏だったが、不思議な爽快感と開放感に包まれつつ彼らのライブは幕を閉じた。

取材・文◎舟見佳子
撮影◎緒車寿一
■セットリスト
1. Chaos
2. CRASH
3. 阿修羅 青年期
4. 99番目の夜
5.ロマンス
6.FOR BEAUTIFUL MAD HUMAN LIFE
■<CROSS ROAD Fest>
【DAY1】11⽉15⽇(土) 千葉・幕張メッセ 幕張イベントホール
open12:00 / start13:00
【DAY2】11⽉16⽇(日) 千葉・幕張メッセ 幕張イベントホール
open10:30 / start11:30
〒261-8550 千葉市美浜区中瀬2-1

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