今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、UKバンドのレジェンド、ザ・フーのライヴアルバム『Live At The Oval 1971』。

ザ・フーPhoto by Jeffrey Mayer

キャリア最終章を迎えたレジェンド、心の葛藤をドラマティックに演奏

UKバンドのレジェンド、ザ・フーが60年のキャリアの最終章を迎えている。映画『ザ・フー ライヴ・アット・キルバーン 1977』公開、アルバム『ライヴ・アット・ジ・オーバル 1971』リリース、フェアウェル・ツアー「ザ・ソング・イズ・オーヴァー」で北米の大会場を回っている。

日本では狂ったようなパフォーマンスが報道されがちなバンドだが、作品は知的で繊細。ロック、クラシック、ジャズ、テクノ、プログレ……など、多種多様な音楽をギターのピート・タウンゼントが進化させて、ソングライティングしている。

そして、物語性が豊か。代表作『四重人格』や『トミー』の主人公は心や身体にハンディを抱える青年。その苦しみや悲しみを組曲で展開。高度な演奏技術を持つから、心の葛藤がリスナーに響く。メンバーも皆繊細で、ドラムスのキース・ムーンはアルコール依存症薬、ベースのジョン・エントウィッスルは違法薬物の過剰摂取で他界した。

2025年8月末、ニューヨーク最後の公演をマディソン・スクエア・ガーデンで観た。エンタテインメントの殿堂はソールドアウト。名曲を聴けるラスト・チャンス。永遠に脳に記憶されるように一曲一曲集中した。

『Live At The Oval 1971』

『Live At The Oval 1971』

ユニバーサル ミュージック¥3,300。ロンドンのオーバルで行った伝説のライヴ音源。「ピンボールの魔術師」「無法の世界」などロジャー・ダルトリーの声が野太い。

Kazunori Kodate
音楽ライター。近著は『不道徳ロック講座』(新潮新書)、『ジャズ・ジャイアントたちの20代録音「青の時代」を聴く』(星海社)。他に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』(新潮新書)など多数。

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