「第17回TAMA映画賞」授賞式が11月15日(土)、パルテノン多摩 大ホールにて行われ、『国宝』ならびに『ルノワール』が最優秀作品賞を受賞した。また、最優秀新進監督賞は平一紘監督(『木の上の軍隊』、『STEP OUT にーにーのニライカナイ』)、山元環監督(『この夏の星を見る』)が受賞し喜びを語った。

「TAMA映画賞」は東京都多摩市および近郊の市民からなる実行委員が、「明日への元気を与えてくれる・夢をみさせてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優」を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰する授賞式。対象作品は2024年10月~2025年9月に一般劇場で公開されたものからの選出となる。

李相日監督

6月に公開され、11月現在の今もなお劇場に観客が押し寄せている『国宝』。血筋と才能に翻弄される歌舞伎役者二人の激動の半生を、圧倒的な熱量で描き観客に深い感動を余韻をもたらした。受賞した李相日監督は、「映画で(歌舞伎という)芸を汚さず、魅力をいかに伝えるか。キャスト、スタッフ、我々映画人の知恵を絞りに絞って歌舞伎という作品に挑んできました。興行成績の数字だけが騒がれたりはしますが、たくさんの人の心に届いたことをみんなが喜んでいますし、うれしく思っています。多くの方々に美しい映画がどういった皆さんの心の中に記憶で刻まれるか。そういうのを我々は願っていたので」と思いの丈をスピーチした。

この日、俳優賞を受賞した喜久雄を演じた吉沢亮&黒川想矢も一緒に登壇する。互いを意識したかという問いに、吉沢は「意識しました!僕の前に黒川くんのインがあったので、その現場にもお邪魔して、彼の女形芝居を観て…。とてつもなく!」というと、黒川は「いいえ」というジェスチャーをする。すると、吉沢は「本当よ、すごくて!!これはまずいと。現場に入ってからもメイクさんが“黒川くんの喜久雄やばいね、負けちゃう?大丈夫?”とプレッシャーをかけられていたので(笑)、彼には大変お世話になりました」と意外な舞台裏を明かした。

黒川想矢、吉沢亮

恐縮そうに首を振っていた黒川は、「正直、(吉沢を)意識することはなく…」と言うと会場からは笑いが起きた。黒川は、「そういうことでなく(笑)!監督から吉沢さんと僕は全然似ていないでしょ、と。目指す喜久雄像が近ければ近いほど同じ人に思ってもらえるんじゃない、と言っていただいたんです」と撮影の指針になった監督との会話を伝えた。李監督も「精神が重なればいいというか。黒川くんとオーディションでお会いして、この人だと思ったのんは眼差しなんですよね。人の話をきくとき、ふとしたときの眼差しの真剣さが非常に人をひきつけるものがあったので、喜久雄と重なる。歌舞伎に恋い焦がれて夢中になる眼差しがあればつながると思っていました」とその思いを語った。

鈴木唯、早川千絵監督

一方、『ルノワール』で受賞した早川千絵監督は、主人公のフキを演じた鈴木唯とともに登壇。1980年代後半の夏を舞台に、闘病中の父と仕事に追われる母と暮らす11歳の少女フキが、繊細な感性で社会を知る姿を描いた作品だ。早川監督は「映画は一人で作ることはできないので、作るにあたってあらゆる形で関わってくださった皆さんに心から感謝します」と喜びを感謝に変えて伝えた。

本作は早川監督のオリジナル脚本だが、実体験も織り交ぜているという。「11歳の頃に映画を作りたいと思い始めて、そのころからこの瞬間・気持ちをいつか撮りたいと思ってきたので、それがきっかけでした」と映画に込めた思いを語る。本作でその才能を開花させた鈴木だが、素顔は少女のあどけなさも残している模様。カンヌ映画祭でのレッドカーペットの体験を振り返り、鈴木は「こんな大人数とか経験したことなくて!レッドカーペットを歩いたとき人がすごいいて、わーって。こんなにいっぱいいるんだ、って!」と頬をピンクに染めた。しかし早川監督から「すごいリラックスして歩いていたよね(笑)」と突っ込まれると、さらに笑顔を見せていた鈴木だった。

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