15歳から30歳に至る“男女入れ替わり”を描く君嶋彼方の同名小説を実写映画化した『君の顔では泣けない』が11月14日より公開され、同日TOHOシネマズ 新宿にて公開記念舞台挨拶が開催。芳根京子、高橋海人、林裕太、そして坂下雄一郎監督が登壇し、プロモーション活動からいまだから話せるエピソードまで、賑やかに語り合った。
外見が水村まなみの坂平陸役を演じた芳根京子[c] 2025「君の顔では泣けない」製作委員会
本イベントが全国約196の映画館で生中継されるなか、ステージに上がった一同は、中継カメラに向かって手を振る。芳根は「公開を迎えることができて本当に幸せです。みんなで大切に育ててきた我々の子どもを皆さまに『届け!』とする今日は、なんだか夢のようです」と念願の封切りに胸がいっぱいな様子。
外見が坂平陸の水村まなみ役を演じた高橋海人[c] 2025「君の顔では泣けない」製作委員会
高橋も「暑い中で撮影を頑張って苦楽を共に過ごした仲間たちとの日々を思い出してエモーショナルな気持ちになります。上映前のワクワクした観客の皆さまの顔を見ながら、うれしい気持ちでいっぱいです」と心境を打ち明けた。
メガホンをとった坂下雄一郎監督[c] 2025「君の顔では泣けない」製作委員会
映画化にあたり、15歳から30歳に至る新たな男女入れ替わりという点に新鮮味を感じたという坂下監督。本作で初共演した芳根と高橋は、男女が入れ替わってしまう坂平陸と水村まなみを演じた。2人のキャスティングについては映画『Arc アーク』(21)の芳根、ドラマ「だが、情熱はある」の高橋に注目したそう。「自分が思う、演技が上手い人にお願いしようと思った。『Arc アーク]、『だが、情熱はある』の2人はトリッキーな役だったが、今回の役もトリッキーな役なので、親和性があるのではないかと思った」と述べた。
陸の弟、坂平禄役の林裕太[c] 2025「君の顔では泣けない」製作委員会
陸の弟、坂平禄役の林は「入れ替わることのコミカルさがあるのかと思って物語をたどっていったら、思いがけず人間のいろいろなところが見えてくる物語だった。自分の体や心の距離についても考えさせられておもしろかった」と本作ならではの魅力を口にした。
その後、原作者の君嶋よりサプライズで手紙が届く。
「芳根さんと高橋さんの2人は、本当に見事に陸とまなみを演じきってくださいました。性別を主張しすぎない細やかな演技は言わずもがなですが、なによりもおふたりの醸し出す雰囲気が素晴らしく、原作者にもかかわらず『もっとこの2人のやり取りを見せてくれ!』と思いました。『君の顔では泣けない』は、小説としてはもうこれ以上書くことのない作品だと思っていたのですが、芳根さんの陸を見て『もっと陸のことが書きたい』と強く感じてしまいました。高橋さんのまなみも素晴らしく、原作ではほとんど内面が見えない難しいキャラクターだったにもかかわらず、感情豊かに表現してくれていました」と、じんわりと心に響く手紙に会場も、温かな雰囲気に包まれる。
【写真を見る】泣きそうな芳根京子に高橋海人が青色のハンカチを渡そうとするが…[c] 2025「君の顔では泣けない」製作委員会
芳根は「とてもうれしいですね。原作の先生がどう思われるかって、私たちも怖い部分でもあって、それでも、『もっと陸を好きになる』、なんてうれしいのでしょう。そんな光栄なことあるんだなと。そしてその先の陸、私もぜひ読ませてもらいたいなと思ったので、楽しみにしております」と感激した。
高橋も「グループとしての活動の時もそうだけれど、世の中の皆さんに自分たちの作品を出す前に、自分たち作る側の人間が満足した気持ちで送り届けることがエンタテインメントとして素敵なことだと思っています。作品をつくるなかでハードルが高いのが原作の先生を納得させることでもあるし、原作者の先生は作品をつくっていくなかでのボスでもあるので、すごく安心しました。むちゃくちゃうれしかったです。胸を張って皆さんに観ていただけると思いました」と原作者の太鼓判に胸をなでおろした。
坂下監督も「この物語の0を1にした方なので、初号試写にいらっしゃった時、本当に一番緊張しました。緊張するというか、この方が『ダメ』と言ったら、ほかの人全員が『良い』と言っても、それは、なにか違う気がするというような方なので、そう言っていただけてすごくよかったです」と率直な気持ちを吐露した。
最後に、林が「この映画を観て、いろいろな思いを抱えてくださると思うんですが、『誰かのことを好きになる』というのは、『その人がその人でいるから好き』ということで、そう言えるのはその人を本当に愛しているということなんだなと、僕は思えました。この映画を観終えると、それぐらい自分のこと、他者のことを考えられるような作品だと思っています」と真っ直ぐに想いを伝える。
続いて高橋は「自分の人生で選択する分岐点はたくさんあると思うけれど、それを自分の考えと体を持って選んで進んでいけるのは幸せなことだと気づかされました。それからいままで歩んできた自分の道のりがかけがえのない素敵なものだと自分を肯定できるような、そんな気持ちにさせてくれる『君の顔では泣けない』に出会えたことに胸がいっぱいになりました」と目を潤ませながら感謝を述べた。
同じく主演の芳根は「この作品が少しでも皆さんの心に残ればいいなと、いまはそう思います」と声を震わせながら「この場をお借りして高橋君、本当にありがとうございます!撮影中も初号を観ても不安で……。でも高橋君といろいろな取材を受けるなかで少しずつ氷が溶けていく感覚というか、怖いけれど、高橋君とだったら大丈夫だと思えた。本当にまなみが高橋君でよかったなと思うし、一緒に戦うのが高橋君で良かったなと思う。あ、なんだか泣きそう。お互い?」と感極まり、高橋も「芳根ちゃんの顔を見ていると泣きそうになります」とウルウル状態だった。
しかし高橋が青色のハンカチをポケットから取り出し、芳根に紳士的に渡そうとすると、芳根は「あ、一旦大丈夫!」と意外にも冷静に受け取るのを拒む。するとすかさず林が飛び出し、「僕が泣きそう!」と青色のハンカチで目元をふく。場内は、すすり泣く声と笑いが混じったアットホームな空気に。
芳根は「またご一緒できるかなと、これからが楽しみになりました。この場をお借りして、ありがとうございました!」と改めて高橋に頭を下げると、高橋も「こちらこそありがとうございます」とニッコリ笑顔を見せる。最後に高橋は、映画のイメージカラーでもあるブルーのハンカチをひらひらさせ、会場および全国に手を振った。
文/山崎伸子
※高橋海人の「高」は正式には「はしご高」





