秋の行楽シーズン、温泉に行くのもいいだろう。健康的な入り方はあるのか。医師の早坂信哉さんは「25年以上にわたって約7万人の入浴を調査してきた経験から、温泉旅行にも理想のスケジュールがあることがわかった」という――。
※本稿は、早坂信哉『医師が教える温泉の教科書』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

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1回あたりの入浴時間は控えめに
溜まった疲労を解消しようと楽しみにしていた温泉旅行で、「かえって疲れてしまった」という感想をもつ人は少なくありません。原因の1つは、「元を取ろう」と温泉に繰り返し入ることで体温が上がりすぎて熱中症になったり、血圧や心拍数が激しく変化し、エネルギーを消費してしまうことにあります。また、頭痛やめまい、吐き気などの症状が出て、旅行どころではなくなってしまうことも、よく起こります。昔から「湯疲れ」という言葉もあるくらいです。
この章では、温泉の効果を最大限に享受し、翌日に疲れを残さない理想のタイムスケジュールを紹介します。

ここで示したのは一例ですが、ポイントは①長湯をしないこと、②その土地の風景やアクティビティを楽しむこと、③普段寝ている時間にあわせてスケジュールを逆算することの3つです。それ以外は、自由にアレンジしてくださって結構です。
本書の第3章で説明した通り、入浴の基本は「40℃」「10分間」「全身浴」です。とはいえ「せっかく温泉に来たのだから10分といわず、もっと満喫したい」と考える人が多いのは事実です。そのため、複数回入浴する場合は、1回の入浴時間をなるべく短くすることが疲れを残さないポイントです。
その土地ならではのアクティビティもおすすめ
旅館によっては、目移りしてしまうほどのバラエティ豊かな浴槽が用意されています。私は職業柄、たくさんの浴槽に入ることが多いのですが、その際は各1~2分を目安に入り、気に入った浴槽は後でじっくり浸かるという方法を取っています。特に外湯巡りをする場合は、すべての浴槽に5~10分浸かってしまうと体温が上がりすぎて「のぼせ(熱中症)」になります。温まりすぎないように気を付けてください。
また、新・湯治(環境省が2017年から始めた「新・湯治プロジェクト」。温泉地周辺の自然・歴史・文化・食を入浴と併せて楽しむ過ごし方の提案)の観点から、温泉だけでなくその土地ならではの風景やアクティビティを満喫することで、よりリフレッシュ効果を得ることができると思います。空いた時間で温泉街の散策やイベントへの参加、工芸品の手作り体験などをしてみることをおすすめしています。
そして、必ずしも2回入浴する必要も、23時に眠る必要もありません。その日の予定や普段の就寝時間から逆算して、スケジュールを組んでください。
