10月25日、若手噺家の登竜門である「NHK新人落語大賞」が行われた。伝統芸能である落語で「競技」として戦うとはどういうことなのか。かつてその戦いを制した「異端の落語家」が振り返る「競技落語」の世界とは。そのインタビューの短縮版をお届けします。
落語という日本の伝統芸能の世界にも「競技」が存在する。その代表格が毎年秋に行われるNHK新人落語大賞だ。2022年、その大会で優勝した立川吉笑は、決勝前夜に後輩と共に深夜の散歩に出ていた。
「やっぱり緊張して、落ち着かなくて。気を落ち着かせる意味が大きかったと思います」
決勝戦に向け、抽選で引いた出番は3番目。強敵と見越していた林家つる子と三遊亭わん丈がそれぞれ5番手と6番手だった。
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「考えられる限り、最悪の3番手だと思いました(笑)」
“異端の落語家”が「競技落語」に賭けた思い
粋を重んじる落語界では、コンクールを狙うと公言することさえ「野暮」とされる。
「賞を狙うと公言するのも野暮ですからね。努力しているところを見せない方が良しとされる世界ですから」
そんな中で吉笑は、完全に「勝ちに行くつもりで」準備していた。彼の中には真打昇進を控えながらも思うように結果が出ていないもどかしさがあったからだ。
「もうちょっと、なんていうのかな……ガツンと行かなくちゃな、みたいな。そういう想いが強くなっていて」
吉笑の考える「競技としての落語」には、従来の落語とは異なる特殊性がある。
「NHK新人落語大賞は持ち時間が11分あって、僕の場合はその間にどれだけ笑いを詰め込んでいくのか、その効率を最大化させることを考えていました。でも落語って、本来は効率的なことからいちばん遠く離れたところにあるわけです」
粋を大切にする文化の中で、吉笑はあえて戦略的に熱量を注いだ。その背景には、かつてお笑い芸人だった彼のM-1グランプリへの見方も影響していた。
「漫才師の人たちがM-1に懸ける熱量と、落語家が新人落語大賞に懸ける熱量は明らかに違うと思わざるを得ないわけです」
そんな「異色の落語家」が選んだ勝負ネタは「ぷるぷる」だった。彼はこの噺でどのように大一番を制したのか——その全貌は本編で明らかになる。
<つづく>
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この文章の本編は、以下のリンクからお読みいただけます。
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