11月5日に開催された「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」記者発表会に登壇してきました。

この日の発表会では「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」(以下MAJ2026)の開催概要や新設された部門賞の情報に加え、エントリー作品/アーティスト候補を中間発表。

僕は櫻井海音さん、ヒコロヒーさん、松島功さんと共に、コメンテーターとしてトークセッションのパートに参加しました。こちらのYouTubeにその模様が上がっています。

ニュース記事も公開されてます。

トークセッションの時に「ヒコロヒーさん」が言えずに何度も噛んじゃってたんだけど、なぜかそこだけテレ朝NEWSのニュース記事に拾われてたりもしました。

MAJ2026のエントリー対象作品や部門賞の再設計については、第1回で見つかった課題を丁寧に改善してきたなと率直に思います。

まず第一に、エントリー対象となる作品が「2025年1月1日~12月31日に初めてフルバージョンのオフィシャル音源が公的サービスにおいて配信、もしくはフィジカルでリリースされた楽曲やアルバム」に限定されたことが大きい。MAJ2025では「最優秀アルバム賞」をリリースから3年経った藤井 風の『LOVE ALL SERVE ALL』が受賞したり、いろんなカテゴリで90年代の名曲がノミネートされていたりしていて、必ずしも”今”に焦点が当たっていない感じがあった。

壇上でも言ったんですが、「今の音楽シーンで何が盛り上がっているのか、今何が評価されるべきかにスポットを当てたアワード」としての位置づけが、これでハッキリしたと思います。それに伴い「バックカタログ部門」が新設されたのも合理的。

そして部門賞においては、「最優秀国内ダンスポップ楽曲賞」がなくなり「最優秀ダンス&ボーカル楽曲賞(グループ / ソロ)」に再編。これも納得がいく変更だと思います。正直、今年のCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の7部門受賞のうち「最優秀国内ダンスポップ楽曲賞」だけはエントリーの時点で選考から外してもよかったのでは…?と思ってましたからね。音楽ジャンルとしての「ダンス&ボーカル」という呼称は和製英語で海外では一般的ではないけれど、日本の音楽カルチャーにおいては相応しい言葉だと思います。

「最優秀ボーイズアイドルカルチャー楽曲賞(グループ / ソロ)」、「最優秀ガールズアイドルカルチャー楽曲賞(グループ / ソロ)」の新設についてもそう。MAJ2025では男性アイドルと女性アイドルを同じ部門賞で取り扱っていたわけですが、日本のアイドル文化においてはそれぞれ様式もフィールドも異なるカルチャーなわけなのでね。

■2025年の音楽シーンのトピックは「新しい価値観」「日本のカルチャーがグローバルへ」「Y2Kリバイバル」

トークセッションのパートでは、今年の音楽シーンのトピックを3つのキーワードで語りました。

1つめは「新しい価値観」。僕が挙げた実例はHANA。正直今年のニューカマーではぶっちぎりの存在だと思います。「Blue Jeans」はすでに2025年を代表するヒット曲のひとつになっているわけだし。支持の背景にはプロデューサーのちゃんみなが打ち出すメッセージ性や価値観への共感が広まったことがあると思います。オーディション番組『NO NO GIRLS』だけじゃなく、活動においてもそれを貫いている。

タワレコ「No Music, No Life.」の連載コラム「ポップの羅針盤」でもそのことについて書きました。

HANAとちゃんみなが「勝つ」というのはどういうことか。どこでライブをやるとか、何人動員するとか、そういうわかりやすい数字の目標もあるだろうけれど、もうちょっと大きなものだと思う。何かに媚びたり、何かにおもねったり、何かに奉仕したり、自分たちが「消費される」存在であることを過剰に受け入れて自分自身の大事なものを「売り渡す」ことが「売れる」ことと同義であるような世界に異議を申し立て、そうじゃない道での成功を示すことが「勝つ」ということなのではないかと思う。
そして、よくも悪くもエンタメの世界では「売れる」ことが正義である。そういう意味でもHANAのブレイクはひとつのターニングポイントになるかもしれないという予感がある。

【ポップの羅針盤】第14回 「売れる」と「売り渡す」の境界線を引き直す未来へ 

2つめのキーワードは「日本のカルチャーがグローバルへ」。これは今年に始まった話じゃないですね。でも目覚ましい動きは2025年も続いた。Adoや藤井 風や米津玄師などアリーナ規模のワールドツアーをアーティストが増えたことに加えて、今年は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 』第一章 猗窩座再来』 や劇場版『チェンソーマン レゼ篇』を筆頭に日本のアニメ映画が記録的なヒットとなりました。

3つめは「Y2Kリバイバル」。Y2Kというと海外発のリバイバルやファッションカルチャーのイメージも強いけれど、J-POPシーンにおけるY2Kリバイバルはすなわち「平成リバイバル」だと思います。

その代表がオリジナルメンバー5人の再集結で脚光を浴びたRIP SLYME。お笑い芸人のマユリカが出演し「平成あるある」を詰め込んだ「イケナイ太陽」のミュージックビデオが話題になったORANGE RANGEも。HALCALI「おつかれSUMMER」やTommy february6「♥Lonely in Gorgeous♥」のように海外発のバズが再評価の起点になる例もある。

こちらについても「ポップの羅針盤」で書きました。

リバイバルした楽曲に共通するムードとトーンを見ていくと、その美学が、ある種の「軽さ」であることがわかるだろう。「軽さ」とは、軽薄さではなく、軽快さと軽妙さ。つまり運動性と機知のことだ。ORANGE RANGEもRIP SLYMEもそれを持っている。跳ねるビートと、意味を脱力するウィット。それがTikTokで切り取った時にフィットする抜けの良さをもたらす。HALCALIやm-floやTommy february6もそこに通じる感覚がある。
(中略)
そしてORANGE RANGEとRIP SLYMEに共通するのは「軽さ」だけではない。両者とも、メジャーデビュー時に所属していたレコード会社とこのタイミングで再びタッグを組み、最新作をリリースしている。そこには当時からの縁を大事にする誠実さもあるだろう。ムーブメントの拡大には彼らを聴いて育ってきた下の世代のクリエイターやスタッフからのリスペクトと後押しも作用したはずだ。
軽いことは、浅いことではない。よく跳ぶものほど、よく支えられている。そう実感する。

【ポップの羅針盤】第18回 Y2Kリバイバルを駆動する「軽さ」の美学について考えた 

こないだのTBS『ひるおび』でも、ここらへんの動きを解説するコメンテーターとして出演してきました。

ここで語れなかったことも含めて、いろいろ興味深い動きが起こっていると思います。

そして先日Leminoで公開された特別番組『MUSIC AWARDS JAPAN 2025 振り返りスペシャル』にも出演してきました。

こちらでは森香澄さん、SKY-HIさん、宅見将典さんと「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」の模様を振り返っていろいろ語っています。

来年のMAJ2026も楽しみです。

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