福士蒼汰と福原遥がダブル主演を務める映画『楓』(12月19日公開)から、登場人物の姿と印象的なセリフを切り取った“それぞれの想いビジュアル”が到着した。

【写真を見る】主演の福士蒼汰と福原遥をはじめ、宮沢氷魚、石井杏奈、宮近海斗(Travis Japan)のビジュアルも解禁【写真を見る】主演の福士蒼汰と福原遥をはじめ、宮沢氷魚、石井杏奈、宮近海斗(Travis Japan)のビジュアルも解禁[c]2025 映画『楓』製作委員会

本作は、スピッツが1998年にリリースした8枚目のアルバム「フェイクファー」に収録され、同年にシングルカットもされた同名楽曲を原案にしたラブストーリー。監督は『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)、『ナラタージュ』(17)などで知られる行定勲。楽曲をもとにオリジナル脚本を書き上げたのは『ソラニン』(10)、『東京リベンジャーズ』シリーズの高橋泉。キャストには主演の福士と福原のほか、宮沢氷魚、石井杏奈、宮近海斗らが顔をそろえている。

須永恵(福士)と恋人の木下亜子(福原)は、趣味の天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せに暮らしていた。しかし朝、亜子を見送ると、恵は眼鏡を外し、髪を崩す。実は、彼は双子の弟のフリをした兄の涼だった。1か月前、ニュージーランドで事故に遭い、恵はこの世を去る。ショックで混乱した亜子は、目の前に現れた涼を恵だと思い込んでしまうが、涼は本当のことを言えずにいた。一方、亜子にもまた打ち明けられない秘密があった。

このたび解禁されたのは、福士、福原、宮沢、石井、宮近らが演じる、物語の中心となる5人の登場人物たちの心情を切り取った“それぞれの想いビジュアル”。各キャラクターが抱える心の葛藤や迷い、そして願いが交錯し、スピッツの楽曲が持つ“余白の美しさ”と響き合う世界観が写しだされている。

本作の主人公のひとりである涼は、弟、恵が事故でこの世を去ったあと、残された恋人、亜子の前で弟のフリをしてしまう。「ただ、君に笑ってほしくて」という言葉に表れるように、喪失感と罪悪感に押しつぶされながらも、彼女の悲しみを少しでも和らげたいという想いで、本当のことを言いだせないまま亜子と恋人のような時間を過ごしていく。福士は、涼としては「亜子の心を少しでも軽くしてあげたい」という気持ちで接していたと明かしており、その献身的な優しさが、亜子の前で性格のまったく異なる双子として生きようとする複雑な感情や亜子に惹かれていく恋心と重なり、物語の核を形作っている。

普段は明るく振る舞って涼と過ごす亜子だが、彼女もまた涼には言えない秘密を抱えており、その心の揺らぎが物語に深い緊張感をもたらす。福原は亜子について「多分、彼女の中でも整理できてない部分があったり、複雑な感情を抱えながら日々を生きている女の子」と語る。失った恋人を想いながらも、涼と過ごす時間の境界で揺れる亜子。その心の動きは、せつなさや迷い、そして少しずつ未来に進もうとする意志が伝わってくる。

梶野(宮沢)は双子の涼と恵を最も理解する幼なじみであり、恵の会社の共同経営者でもある。冷静沈着で理性的な性格ながら、心の奥には彼らへの強い友情と痛みを抱えている。涼が亜子の前で恵のフリをしていることを知りながらも、その選択に込められた覚悟を受け止め「お前の人生ってのがあるんじゃないのか?」と問いかけるように、涼には涼として向き合い寄り添う。そんな梶野は物語に深みを与える重要なキャラクターだ。監督の行定勲は「梶野は(涼の)非常に魅力的なバディというか友だち。佇まいがかっこいいのに(天文)オタクで、その中にもある品のよさは、氷魚くんだからこそ出せたと思っています」とコメントを寄せる。梶野の存在が涼の孤独を静かに照らしている。

日和(石井)は、カメラマンとして働く涼の後輩で、密かに彼への想いを抱いている。その純粋さと真っ直ぐな感情は、物語の重要なアクセントとなっている。石井は「(日和は)自分に正直だし、人に対しても真っ直ぐで、自分の心を思うままに過ごしている。そこに否定的じゃなく、自分が自分を肯定している感じがすごく好き」と自身の演じたキャラクターを好意的にとらえている。明るく前向きな一方で、涼への想いや立場のもどかしさに揺れ動く姿にはせつなさもにじむ。彼女の存在や行動は、真実を隠しながら惹かれ合ってしまう涼と亜子の関係に光を当てると同時に、観る者に“様々な問い”を投げかける。

雄介(宮近)は、亜子の良き相談相手で穏やかな包容力を持つバーの店長。温厚な性格で周囲に安らぎを与える一方で、亜子と恋人だった恵の関係を知る人物の一人であることから、鋭い洞察力で涼の存在に違和感を抱き始める。亜子とは長年友人関係にあり、その関係性が物語中盤以降、新たな展開へとつながっていく。行定は「雄介ってどういうキャラクターにもなりえるのですが、この映画の一つのテーマでもある“慮(おもんぱか)る”という言葉のように、それぞれキャラクターとの距離感を持ちながら宮近くんが演じてくれた。そのおかげで、彼の人間味も出ており、物語にいい影響を与えてくれていました」と語る。雄介が選ぶ言葉や行動は、登場人物たちの気持ちの揺れをそっと受け止め、物語に温かさと柔らかい余韻を添えていく存在となっている。

スピッツの不朽の名曲をもとにせつない恋を描きだす本作。キャスト陣の繊細な感情表現を切り取った美しい映像をスクリーンで堪能してほしい。

文/スズキヒロシ

※高橋泉の「高」は正式には「はしごだか」

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