ポーズを決める坂口健太郎(撮影・大城 有生希)
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 俳優の坂口健太郎(34)が主演映画「盤上の向日葵」(監督熊澤尚人、31日公開)で感情むき出しの生々しい演技を見せている。ミステリー作品で、天才棋士として注目を集めながら殺人事件の容疑者となり、次第にその壮絶な過去が明らかになっていく役どころ。本紙のインタビューに「目を背けたくなるシーンもあるけど、登場人物たちの生きざまをぜひ見届けてほしい」と力を込めた。

 映画「ヒロイン失格」(15年)「余命10年」(22年)など多くの恋愛作品で甘い演技を見せ、クールな“塩顔男子”として人気を集めてきた。昨年配信されたプライムビデオ「愛のあとにくるもの」では韓国ドラマに初出演。女優のイ・セヨン(32)とダブル主演し、韓国でも黄色い声援を浴びる存在となった。

 海外での人気は演技のモチベーションの一つだ。今年5~6月にはアジア6都市でファンミーティングを開き「“何の作品が好きですか?”と聞いたら“全部見ています”という方もいらっしゃった」と現地のファンの熱量を体感。「今は配信やメディアの力で国の垣根を越えて作品を届けられる。“もっと良い作品をいろいろな方に届けたい”と思うようになった」と言葉に熱がこもった。

 その一方で「年齢を重ねて、キラキラしたラブストーリーはもうできない」と自身を客観視している。これまで演じてきた役を「優しくてふわっとしていたり、ちょっと頼りなかったり。“静かな青年”みたいな役が多かった」と分析。それが「盤上の…」では一転した。雨の中泣きじゃくったり、憎悪むき出しな乱闘シーンなどシリアスな場面が目白押し。「試写を見た方から“新しいですね”と言っていただくことが多い。そう思ってもらえる作品に出合えたことは凄くありがたい」と切り開いた新境地に手応え十分だ。

 自身を将棋の駒に例えるなら「桂馬」。「真っすぐ進めないしトリッキーな跳び方をする。でもある程度のところまで行ったら“金”に成って、一歩下がることもできる。僕も先の予定を立てるのが下手くそ。横にそれたり道草したりしながらも、その過程を楽しむのが自分らしいのかな」と駒に重ね合わせた。

 30代の折り返し地点も近づいてきた現在。今作と同じような重厚な作品のオファーが続いているといい「いただく役が変わってくる転換期なのかなと感じている」。俳優として、今後どう“成り”を見せてくれるのか楽しみだ。 (塩野 遥寿)

 《初共演“世界の渡辺謙”人柄に感謝》今作では渡辺謙(66)と初共演。賭け将棋をなりわいとする裏社会の真剣師として、主人公と対峙(たいじ)する。坂口は当初「どこか“世界の渡辺謙”という印象があった」というが、現場で率先して共演者やスタッフとコミュニケーションをとる姿を見て「謙さんってこんな方なんだと、いい意味で思い直させてくれた」と距離を縮めることに成功。「重いシーンやしんどい芝居も多かったけど、カメラが回ってない時の空気は循環がよく流れていた。その中心に謙さんがいた」と感謝した。

 ◇坂口 健太郎(さかぐち・けんたろう)1991年(平3)7月11日生まれ、東京都出身の34歳。10年に男性誌「メンズノンノ」のモデルとなり、14年に俳優デビュー。18年に韓国ドラマをリメークしたフジ系「シグナル 長期未解決事件捜査班」に主演し、韓国での注目度が上昇。今年8月に韓国で開催された「グローバルOTTアワード」で主演男優賞を受賞した。

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