大阪市立美術館(大阪市天王寺区)で大阪市立美術館開館90周年記念特別展「水滸伝」が26年7月11日から開催されます。
『水滸伝』は、『三国志演義』、『西遊記』、『金瓶梅』と並ぶ中国四大奇書の一つで、明時代に成立した武侠小説です。物語では、北宋時代末期、国政への不満を抱いた宋江をはじめとする豪傑108人が梁山泊という要塞に集い、革命を起こします。『水滸伝』自体は史実ではありませんが、『宋史』には徽宗朝で宋江率いる36人が梁山泊(実際に山東省西部に存在した沼沢)近辺で反乱を起こしたという記録があり、この宋江反乱の史実をもとに物語が形成されたとみられています。
『水滸伝』の構成は年代ごとに増減があるものの17世紀に70回本が成立し、日本へは江戸時代に輸入され、日本においても爆発的な人気を得ました。曲亭馬琴が葛飾北斎の挿絵で『新編水滸画伝』を出版したほか、馬琴は『水滸伝』の日本版ともいえる『南総里見八犬伝』等を著すなど、翻案作品も多数書かれました。歌川国芳が大胆な構図と美麗な彩色によって豪傑たちを描いた浮世絵は今なお新鮮な魅力を放っています。
本展は『水滸伝』の物語をつぶさに紹介するものではなく、『水滸伝』に導かれながら北宋~清の中国美術、および江戸~現代の日本美術を広く展観するものです。これまで『水滸伝』に関わる展覧会は、版本や国芳の浮世絵にフォーカスしたものが中心でした。本展は中国美術を含む多彩な作品や資料を通じて『水滸伝』の世界を多角的に提示することで、その魅力を深く味わっていただく、今までにない試みです。
『水滸伝』は現代日本においても小説、映画、ドラマ、漫画、ゲーム等の各メディアで高い人気を誇るコンテンツです。本展を通して、同書をきっかけとして広い世代に中国と日本の美術に親しみつつ、同書における単純ではない「忠義」のありようとその受容史から、各時代の世相や思想、理想を知り、翻っては私たちの生きる現在を考える契機を探っていきます。
大阪市立美術館開館90周年記念特別展「水滸伝」
会場:大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町1-82)
会期:2026年7月11日(土)~9月6日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日休館)
※ただし、8月10日は開館
観覧料:未定(決定次第、美術館HPで告知予定)
問い合わせ:大阪市立美術館 06-6771-4874
アクセス:
JR・Osaka Metro「天王寺」駅から徒歩約10分
近鉄「大阪阿部野橋」駅から徒歩約10分
車は阪神高速松原線「天王寺」出口利用
(天王寺公園地下駐車場をご利用ください)
詳細は、大阪市立美術館公式サイトまで。
東京ステーションギャラリーにも巡回(水滸伝[仮称]、2026年9月19日~11月8日)
展示作品の一部を先行紹介!
歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達》文政10年(1827)頃 個人蔵
歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之壱人 入雲龍公孫勝》文政末~天保前期(1828~33)頃 個人蔵
歌川国芳《水滸伝豪傑百八人之一個 清河県之産武松》文政10年(1827)頃 個人蔵
本展では、日本における水滸伝ブームのきっかけをつくった、歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)》を紹介。当時日本に流入した中国の水滸伝図像を摂取しつつ、国芳ならではの創意にあふれた傑作として知られています。108人の全図は確認されていませんが、74図が現存しています。
燕文貴《江山楼観図》北宋・10-11世紀 大阪市立美術館
燕文貴は太宗朝の宮廷画家。相国寺壁画制作に参加したことでも知られます。相国寺は北宋の都開封の最大の寺院で、魯智深が菜園番をつとめた場所です。
本展については、2026年に入ってからより詳しい内容が判明予定。梁山泊の面々の活躍を描いた作品や、豪傑たちの生きた時代を描いた作品、さらに水滸伝ブームの広がりを感じさせる作品など、さまざまな展示が期待されます。より詳しい情報がわかり次第、美術展ナビでは続報もお伝えしていきます。(美術展ナビ)
