第169回直木賞、第36回山本周五郎賞をダブル受賞した永井紗耶子の傑作時代小説を映画化した『木挽町のあだ討ち』が2026年2月27日(金)に公開。芝居小屋を舞台に、仇討ちの裏に隠された真実が描かれる本作より、総勢12名のキャストが一挙解禁となった。

「このミステリーがすごい!2024年版」、「ミステリが読みたい!2024年版」などにも選出され、2025年には歌舞伎としても上演され大きな話題を呼んだ本作。主演は『きみの鳥はうたえる』(18)などで数々の映画賞を受賞した柄本佑。仇討ち事件の真相を追う田舎侍、加瀬総一郎を演じる。渡辺謙が芝居小屋「森田座」で謀略を巡らせる立作者、篠田金治役で共演するほか、監督&脚本を時代劇の名手、源孝志が務めるなど、日本映画界が誇る実力派キャストとスタッフが集い、“あだ討ち”をめぐる極上の江戸ミステリーを描きだす。

物語の発端となる、仇討ちを成した者、伊納菊之助を演じるのは、なにわ男子の長尾謙杜。NHK大河ドラマ「どうする家康」や『室町無頼』(25)など俳優としても目覚ましい活躍を見せ、時代に翻弄されながらも信念を貫く若者を瑞々しく好演してきた。主演作『おいしくて泣くとき』(25)や『恋に至る病』(公開中)など出演作が途絶えることがなく、繊細な感情表現と柔らかな存在感が幅広い層から支持を集めている。

本作では、父の仇討ちを見事に成し遂げた若侍として称えられるが、その裏には誰も知らない秘密を抱えており、凛々しくもどこか影を帯びた眼差しが、物語の鍵を握る重要な役どころ。菊之助役のキャスティングについて本作の須藤泰司プロデューサーは、「長尾くんは、前回、ご一緒した『室町無頼』においてはワイルドな魅力全開でした。けれど本来の彼は男も魅入ってしまうほどの美少年。そして今回の菊之助は女性のような美しい容姿が必要な役。そこで、これはもう彼しかいないと思い立ち、連続オファーとなりました」と説明し、長尾の持つ真っ直ぐで繊細な気質が、秘めた覚悟を抱く菊之助の姿と重なったと明かしている。

清左衛門を手にかけ、その息子(菊之助)によって仇討ちされる無法者で博徒の大男、作兵衛を演じるのは、「テルマエ・ロマエ」シリーズや「昼顔」など幅広いジャンルで存在感を放つ北村一輝。作兵衛役について須藤プロデューサーは「北村さん演ずる作兵衛は本作最大のミステリー、善悪、二つの顔を見せます」とし、「とりわけ“悪”が強く出なければ、“善”が際立たない。そんな“悪”を演じて、北村さん以上に観客をスクリーンに引きずり込める役者はいない」とキャスティングの決め手を振り返っている。

森田座の内と外をつなぐ華やかな木戸芸者の一八(いっぱち)役には、『愛なのに』(22)や『ドールハウス』(25)などに出演する瀬戸康史。舞台裏の仕掛け人として金治(渡辺)を支える森田座の立師、相良与三郎役には、『クライマーズ・ハイ』(08)、「半沢直樹」、「グレースの履歴」など数々の話題作に出演する個性派俳優、滝藤賢一。女形で衣裳方の芳澤ほたる役には、1988年に男闘呼組として音楽デビューし、その後も数々の舞台や映像作品にも出演するなど幅広く活躍する高橋和也。小道具方の久蔵役を『爆弾』(公開中)や大河ドラマ「べらぼう」などでの存在感が印象的な正名僕蔵。その妻、お与根役を本作が時代劇初出演となるイモトアヤコが演じている。

菊之助の父、伊納清左衛門役には、『侍タイムスリッパー』(24)での第48回日本アカデミー賞優秀主演男優賞受賞も記憶に新しい山口馬木也。その妻で、菊之助の母としての深い愛情を滲ませる伊納たえ役には、「科捜研の女」シリーズで知られ、現在は主演ドラマ「絶対零度~情報犯罪緊急捜査~」も放送中の沢口靖子。めし屋「つるや」の看板娘、お三津役には、元宝塚歌劇団月組トップ娘役で、退団後は舞台やドラマなどで活躍する愛希れいか。さらに、遠山藩の新藩主、遠山安房守役に連続テレビ小説「梅ちゃん先生」や「ちはやふる」シリーズなどの野村周平。遠山藩の家老、滝川主馬役には、悪役からコミカルな役柄まで幅広く演じ、強い個性と演技力で存在感を見せる名優石橋蓮司が扮し、若き藩主と老練な家老の対立を通して仇討ち事件の背後にある藩の思惑を浮かび上がらせていく。

曲者ぞろいの実力派たちが集結した本作。須藤プロデューサーも「本作は『オリエント急行殺人事件』のようなフォーマットで、全員が主役のような物語。そのため、実力派の演者を揃える必要がありました。本作をご覧になれば、その見事なアンサンブルにご納得頂けると自負しております」と自信を覗かせている。

豪華俳優陣が一堂に会し描きだす、森田座を舞台に繰り広げられる“あだ討ち”の裏側。芝居小屋に集う人々の愛憎と矜持、そして隠された真実が交錯する江戸の極上ミステリー『木挽町のあだ討ち』に期待してほしい。

文/平尾嘉浩

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