キムタクがタクシー運転手役で表現する「人とのつながりの大切さ」
10月27日から11月5日まで開催された第38回東京国際映画祭。そのセンターピース作品に選出され、山田洋次監督自身も特別功労賞が授与された監督最新作『TOKYOタクシー』。劇中に登場する場所は、山田洋次映画最大の映画シリーズ『男はつらいよ』の舞台になった葛飾柴又帝釈天から、神奈川県の葉山まで数箇所となっています。今回は“ロケ地巡礼・特別編”として、映画の作品紹介とともに、劇中に登場する東京の名所を巡ってみました。
映画「男はつらいよ」シリーズの舞台の柴又帝釈天からスタート
『TOKYOタクシー』で個人タクシー運転手・宇佐見を演じるのは2006年の『武士の一分』以来の山田組出演となる木村拓也。そして宇佐見が運転するタクシーに乗車する老女・すみれには『男はつらいよ』シリーズで車寅次郎の妹役・さくらとして長らく愛されている倍賞千恵子。
個人タクシーの運転手として働き、日々の現実生活問題に苦悩している宇佐見。彼が使用しているのはトヨタのプリウスα(40型)。現在都内を走っているタクシーの多くはトヨタのジャパンタクシー(NTP10型)だが、宇佐見は個人タクシーとして燃費や積載スペースを考慮しての選択だろうと思われる。
娘の進学費やもろもろの契約更新費などを目前に「もっと稼がなければ」と考えていた宇佐見。そこに85歳の老女を東京の柴又から神奈川県の葉山まで送り届ける長距離仕事の依頼が舞い込む。約束の待ち合わせ場所は柴又帝釈天前。そこは『男はつらいよ』の舞台になり、現在では帝釈天のすぐ近くに『葛飾柴又寅さん記念館 山田洋次ミュージアム』がある場所。以前から帝釈天は観光地としても人気のある場所だが、昨今はインバウンドの影響で海外からの来訪者も多い。そんな場所で物語が始まることに、山田洋次の柴又への思いの一端もうかがえる。
すみれは、自身の終活のために、独居生活を営んでいた柴又から、神奈川県葉山の高齢者施設に入居する移動の手段として宇佐見の運転する個人タクシーに乗り込むことになる。
やがてすみれは「東京の見納めに寄ってもらいたいところがある」と、宇佐見に依頼する。どうせ1日仕事、時間の許す限りすみれの提案を受諾する宇佐見。タクシーはインバウンドで賑わう浅草を抜け、東京大空襲で無残な様相を呈した言問橋へと進む。言問橋には墨田公園に空襲追悼碑がある場所。普段はひっそりとしているが、終戦記念日などは人が花を手向けにやって来る。すみれは当時の様子を宇佐見に話し始め、終戦後の自分の暮らしぶり、自分の人生も語り始める。

