『ディアマンティーノ 未知との遭遇』(18)で第71回カンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを受賞して脚光を浴びたポルトガルの俊英ガブリエル・アブランドスの新作『アメリアの息子たち』が、10月25日より公開中だ。彫刻などのアート分野でも活躍している彼が、次にどんな作品を放つのか注目されたが、この新作はなんと、ショッキングとしか言いようがないホラー。森の中の豪邸に暮らす家族の秘密がジワジワとあぶりだされていく。その秘密の強烈さと言ったら!

【写真を見る】美しい母に抱きかかえられた息子の姿が微笑ましい(『アメリアの息子たち』)【写真を見る】美しい母に抱きかかえられた息子の姿が微笑ましい(『アメリアの息子たち』)[c]2023 – ARTIFICIAL HUMORS.

家族や共同体など、人と人の“つながり”のなかに恐怖が潜んでいる作品は少なくないし、優れたスリラーも多い。そこで『アメリアの息子たち』と共に、“つながり”を恐怖に転化したこの種のホラーを紹介。オカルトの空気も漂う、世にも奇妙な家族や社会の風景を覗いてみよう。

悪魔崇拝をモチーフとしたオカルト系ホラーアニーの娘チャーリー(ミリー・シャピロ、左)は、やがて異常な行動を取るように…(『ヘレディタリー/継承』)アニーの娘チャーリー(ミリー・シャピロ、左)は、やがて異常な行動を取るように…(『ヘレディタリー/継承』)[c]Everett Collection/AFLO

まずはアブランドスが『アメリアの息子たち』を撮るうえで参考にしたというアリ・アスター監督の作品から『ヘレディタリー/継承』(18)を。主人公は、母との死別を契機にグループカウンセリングに参加し始めた女性。ところが、このころから子どもたちに悲劇が降りかかり、彼女はますます心を病んでいく。やがて明らかになる、主人公一家の驚くべき秘密とは!?全編を不穏なトーンで統一し、予想できない結末へと導く大胆不敵なストーリー。やたらと金切り声を上げる主人公に扮したトニ・コレットの大熱演の効果もあり、悪魔崇拝的なオカルト色を増していくドラマから目が離せない。

FBIの新人捜査官が、未解決事件に隠された真相に迫る『ロングレッグス』FBIの新人捜査官が、未解決事件に隠された真相に迫る『ロングレッグス』[c]Everett Collection/AFLO

悪魔崇拝を題材にしたスリラーでは、オズグッド・パーキンス監督の『ロングレッグス』(23)が記憶に新しいところ。一家の家長が家族を惨殺するという凄惨な事件が続発し、FBIの新人女性捜査官が捜査を進めた結果、事件の背後に悪魔崇拝者が関係していることを突き止める。しかし、そこには彼女の想像を超えるからくりが隠されていた!現場に残された証拠や奇妙な数字の符合が黒魔術的な要素を匂わせ、常識では考えられない恐怖の世界へと誘う。一方で、主人公とその母の葛藤も描かれているが、これも謎解きのヒントとして機能。悪魔崇拝者に扮したニコラス・ケイジの怪演もすさまじく、魅入ってしまう。

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