2025年9月に作家デビュー40周年を迎える、ベストセラー作家東野圭吾。ウィンタースポーツをこよなく愛する東野氏は、 “日本で一番上手いスノーボーダー”を決めるコンテスト「SNOWBOARD MASTERS(以下、SBM)」の発起人である。東野氏はなぜこの大会を開催するのか――。
執筆で多忙をきわめる東野氏の姿が、春が訪れつつある野沢温泉スキー場にあった。SBMの第5回大会に立ち会うためだった。
今大会には、2018年平昌冬季五輪のスノーボード男子ビッグエア、スロープスタイル代表の大久保勇利が、前回優勝者としてエントリー。「東野さんにいただいた優勝賞金でカナダへと渡り、自分の技術を磨いてきました。今回も優勝を狙っています」と意気込んでいた。
これまでの男子の優勝者・石田貴博、小西隆文、元木康平も参戦。会場は熱気に包まれた。
東野圭吾がなぜスノーボードの大会を?
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国内累計発行部数「1億部」を超え、2025年3月には日本ミステリー文学大賞を受賞した東野圭吾が、なぜスノーボードの大会を開催するのか。
40歳を過ぎてからスノーボードを始めた東野氏は、ウィンタースポーツの魅力のとりこになったという。この頃、作家としては『白夜行』や『手紙』などヒット作を連発し、多忙を極めていた。2006年に直木賞を受賞した『容疑者Xの献身』は累計300万部を超え、世界36カ国語で翻訳されている。
「ガリレオ」「加賀恭一郎」「マスカレード」「ブラック・ショーマン」「クスノキの番人」シリーズなど、ベストセラーを生み出し続けているが、「東野圭吾は絶対に面白いはず」という読者からの期待や、「出版不況を支えるためにベストセラーを」という出版界からの願望と重圧を背負い続ける日々――。
そんななか、仕事で行き詰ると、ときには一人で車を運転し、雪山へと向かったという。
「気分転換にもなったスノーボードという素晴らしいスポーツに恩返しをしたい」という想いで、2018年にスタートしたSBM。オリンピアンをはじめ、腕に自信ありという、若手からベテランライダーまでが集う「特別な大会」となっていった。





