*イメージ写真(写真:Master1305/Shutterstock)
秋ドラマ(放送期間は10~12月)が中盤に差し掛かりつつある。現時点でのベスト5を決めてみたい。選考するのはテレビ界取材歴30年以上の放送コラムニスト・高堀冬彦氏。豊富な知識と公平な評価には定評がある。ドラマ賞や映画賞の審査員も経験している(*本記事にはネタバレが含まれます)。
(放送コラムニスト:高堀冬彦)
『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(日本テレビ)
5位は『ESCAPE それは誘拐のはずだった』。若い男女の逃避行劇を見せながら、並行して「親子とは何か?」と問い掛けてくる。エンタテインメントに社会派色が加えられている。
物語は八神製薬の令嬢・八神結以(桜田ひより)が誘拐されるところから始まった。犯人は自動車整備工・林田大介(佐野勇斗)ら3人。結以の父親で八神製薬の2代目社長・八神慶志(北村一輝)に3億円の身代金を要求する。
日本テレビ『ESCAPE それは誘拐のはずだった』主演の桜田ひより。9月13日、東京ドームでの巨人vs阪神戦の始球式に登場した(写真:産経新聞社)
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もっとも、犯人たちの真の目的は金ではなかった。主犯で自動車整備会社代表・斎藤丈治(飯田基祐)が慶志に強い恨みを抱いていた。20年前、自分の愛娘が難病に苦しんでいたとき、同社の新薬を使えるようにしてくれなかった。
慶志は利益の大きい米国市場を優先した。斎藤の娘は死んでしまう。斎藤は慶志にも子どもを失うことによる心痛を与えようと思い、犯行におよんだ。
ところが、斎藤は誘拐の実行から間もなく死ぬ。追ってきた慶志の秘書・万代詩乃(ファーストサマーウイカ)と揉み合いになり、その最中に心臓発作を起こした。慶志が結以にGPSを付けていたから、万代は斎藤の居場所を突き止められた。
どうして結以にはGPSが付けられているのか。慶志は結以の行動の監視もしている。異様な親子関係だ。どうやら結以が自由に行動すると、慶志は困るらしい。
結以には人に触れると相手の心が読み取れる「さとり」という能力がある。これが理由か。八神家の人間にはさとりの能力があるが、慶志にはない。2人は実の親子ではないようだ。
万代は結以と大介には逃げられる。GPSは外された。なぜ、被害者の結以も一緒に逃げたかというと、慶志が自分を監視することに強い不信感を抱いていたからだ。
2人は栃木県に住む城之内晶(原沙知絵)の家に逃げ込み、匿ってもらう。城ノ内は八神家の元家政婦。結以は幼いころに可愛がってもらった。信用していた。
だが、城ノ内はすっかり変わっていた。夫とは離婚。シングルマザーとなり、一人息子で4歳児の星(阿部来叶)と暮らしていたが、養育を完全に放棄。新しい彼氏に夢中だった。
おまけに城ノ内は卑しくなっていた。慶志に結以の情報を流す。金目当てである。慶志は結以の情報に1億円の懸賞金をかけていた。
結以と大介は城ノ内の裏切りを事前に察知し、再び逃げる。2人は追っ手から逃げ切り、慶志の抱える闇を暴くことができるのか。
