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Reuters
掲載日
2025年11月4日
中国発のオンライン・ファッション・プラットフォーム、シーインはフランスでの攻勢を強めている。パリの百貨店内に初の常設店を設けることで、同社の低価格モデルに対する議員らの強い反発を押し返せると見込む賭けに出ている。
2024年5月16日に撮影されたイラストでは、Sheinのロゴと同社のウェブショップが見られる。 – REUTERS/Dado Ruvic/Illustration
世界最大級のファストファッション小売りであるシーインは、水曜日に百貨店BHVに開くコンセッション(売り場)の計画で反発を招いた。今月末には、地方都市のギャラリー・ラファイエット各店にもさらに5カ所の売り場を設ける予定だ。
9月までフランスの商業・中小企業相を務めていたヴェロニク・ルワジー氏は、シーインの出店計画を知るや、阻止に動き始めた。ライセンス契約に違反するとする計画について、ギャラリー・ラファイエットの社長に加え、売り場が予定されるアンジェ、ディジョン、グルノーブル、リモージュ、ランスの各市長、さらにBHVの不動産取引に資金供給する予定だったフランス公的銀行カイス・デ・デポのトップにも電話を入れたと、同氏はロイターに語った。
この動きは、フランスの政治家、小売業者、規制当局が結束してシーインの拡大に対抗し、中心市街地の小売店を守ろうとしていることを物語るものだ。シーインが強く反対してきたオンライン・プラットフォームに対する厳格な新法の成立を前にした動きでもある。
フランスの議員らは、シーインの急成長は、不公平な優位性――低額の越境EC荷物に適用される関税免除――に支えられており、それが底値並みの価格設定を可能にしていると指摘する。一方、ジェニーファーやナフナフといったフランスのファストファッション・チェーンは破産手続きに入った。
「シーインは地域の活力をそぎ、雇用と店舗を壊しています」とルワジー氏はロイターに語った。これに対しシーインは、売れ行きを見極めて小ロットで生産し、ヒットすれば増産する「オンデマンド」型のビジネスモデルのほうが効率的で、同社のオンライン・マーケットプレイスはフランスのブランドや小売業者の販路拡大にも資すると反論している。
フランスでの売り場開設はSociété des Grands Magasins(SGM)からの打診によるものだ。SGMは、苦境にあるBHVや地方のギャラリー・ラファイエット百貨店の再建を目指しており、今回のローンチが若年層の呼び込みにつながると期待している。
「私たちはシーインのプロジェクトを信じています」と、SGMのゼネラルディレクターであるカール=ステファン・コタンダン氏は月曜のBFMテレビのインタビューで語った。「物議はありますが、シーインはフランスで2,400万〜2,500万人の消費者を抱えるブランドでもあります」。
SGMとシーインは、むしろ論争を取り込んでいるようにも見える。土曜日、パリのマレ地区にあるBHV店舗の上に掲げられた看板には、「作るべきではなかった看板!」というコピーとともに、SGMのフレデリック・メルラン社長、シーインのドナルド・タン執行会長、そして彼の愛犬サッチの写真が載った。
「話題を喚起することは、いまの時代のビジネスのやり方であり、より現代的な手法です」とコタンダン氏は語った。
シーインはフランスでの信頼獲得にも努めている。クリストフ・カスタネール元内相などフランスの有力者を顧問に迎え、小売業者との提携も模索してきた。一方でタン氏は各地を回って批判者と面会し、フランスのエリートが集う場にも足を運んだが、批判の潮目を変えるには至っていない。
フランスは、2012年に中国で創業し、ニューヨークとロンドンでの上場に失敗した後に香港での上場を目指すシーインの監督において、多くの国よりも厳しい姿勢を取っている。フランスの消費者監視機関が、シーインで児童に類似したセックス人形の販売を発見したことを受け、ロラン・レスキュール財務相は月曜日、再びそのような人形を販売するようなことがあればフランス市場へのアクセスを遮断すると警告した。シーインは出品者を処分し、セックス人形の販売を禁じたと述べている。
フランスの規制当局は、誤解を招く割引表示や同意のない消費者データ収集に対し、合計1億9,000万ユーロ(2億2,158万ドル)の罰金を科しており、これは他国を上回る金額だ。さらに、ファストファッションを抑制するための法案の下では、シーインはフランス国内での広告を禁じられ、商品1点ごとに課徴金を科される可能性がある。同法案は6月にフランス上院を通過し、EU法に適合させるため議員らが修正中で、早ければ来年初めにも施行される見通しだ。
同法案は、シーインや競合のTemuのように、1日1,000点超の新商品を追加するプラットフォームを主に標的としている。シーインは、この立法により自社製品が値上がりし、消費者不利につながると主張している。
シーインは引き続き同法案に反対してロビー活動を続けている。ロイターが確認した書簡によれば、10月27日、タン氏は法案を主導したアンヌ=セシル・ヴィオラン議員に初めて書簡を送り、面会を求めた。
シーインの店舗は、実店舗への大規模な転換ではなく、「ごく小規模な試験運用」だと、同社の広報担当者はロイターに語った。
同社の賭けは、売り場が集客と経済効果を生み出し、それが批判への反論材料になる、というものだ。
シーインは、売り場全体で200人の雇用を創出し、地域経済に資するとも主張する。6月にディジョンで実施したポップアップには2万7,000人が来場し、その過半数がこの催しのために市中心部を訪れたと指摘する。一方で、BHVでの開業を受けて20以上のブランドが同百貨店との取引を打ち切り、ディズニーランド・パリは予定していたクリスマスのウィンドウ・ディスプレイを中止、店舗従業員は抗議デモを行った。カイス・デ・デポはSGM主導のBHVビル取得計画から撤退し、投資は「地域に根差し責任ある事業を促進する」という自らの価値観に基づくものだと説明した。
シーインと提携したフランスの小売業者も、反発にさらされている。9月、シーインはフランスのファストファッション企業Pimkieと「Shein Xcelerator(シーイン・アクセラレーター)」の契約を結び、同ブランドを自社オンライン・マーケットプレイスに掲載すると発表した。すると2日後、小売業界団体Fédération des Enseignes de l’Habillement(加盟社にはKiabiやCelio、さらにはZaraやH&Mといったファストファッション大手が名を連ねる)が、Pimkieの除名を決定したと発表した。
フランスは、安価な中国製品のダンピングや、税関がEU法への適合性を十分にチェックできていないとの懸念が高まるなか、150ユーロ以下の越境EC小包に対する関税免除の撤廃をめぐり、EUに迅速な対応を求めている。
フランスの政治がめったに一致を見ない現在にあっても、シーインへの厳しい視線は、いくつもの政権交代を経ても一貫している。ルワジー氏の後任であるセルジュ・パパン商業・中小企業相は先月、議員らに対し、中心市街地の小売業者を守ることが「私の省の最優先事項だ」と述べた。
「これらのプラットフォームはダンピングを行い、私たちの価値観を尊重せず、環境面での目標にも配慮しない。私たちは自らを守るため、総力を挙げて臨みます」。
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