株式会社講談社が11月4日、同社にて米ハリウッドを拠点とする新会社「Kodansha Studio」の設立発表会見」を行い、同社の代表取締役社長の野間省伸、映画監督のクロエ・ジャオ、プロデューサーのニコラス・ゴンダが出席した。
【写真を見る】日本の漫画が大好きだというジャオ監督。子どもの頃には漫画家を目指していたと明貸す場面も
新会社「Kodansha Studio」は映画『ノマドランド』(20)で第93回アカデミー賞監督賞などを受賞したジャオ監督が最高クリエイティブ責任者を務め、ジャオ監督の最新作『ハムネット』(2026年春公開予定)でもタッグを組んだプロデューサーのゴンダ氏が最高執行責任者(COO)を務める。最高経営責任者(CEO)には講談社専務取締役の森田浩章が就任し、日本で出版された多種多様な漫画や小説の海外実写映像化に積極的に取り組み、グローバルな展開を目指していく。
大きな挑戦を決断した背景について野間社長は「近年は海外展開に力を入れています。日本のエンタテインメントとコンテンツが世界的にも人気があります。日本としても海外に打ち出していこうという動きもあるなか、課題が多いのも事実」と説明。ハリウッドをはじめ、海外から実写映画の企画が多くあると話した野間社長は「いままでは原作権を海外に渡して、おまかせでした。(スタジオ)設立によって、そういったところにも積極的に関与していきます。日本のIPやクリエイターを海外に押し出していきたい。海外のクリエイターとのコラボを通して、新しい化学反応に期待しています」と意気込みを語った。
株式会社講談社 代表取締役社長の野間省伸は設立の経緯や思いなどを語った
ジャオ監督とのタッグについて「2年半ぐらい前にハリウッドで初めてお会いしました。彼女はアジア人唯一のアカデミー賞受賞監督で、日本の漫画が大好きだということを存じ上げていました。お会いして話してみたら、本当に漫画が好きなんです」と出会いを振り返る。「子どもの頃から漫画やアニメをとても愛しています」と目を輝かせて挨拶したジャオ監督は、自身にとって日本の漫画は、「自分の骨と血と肉を作ったと言えます」と力を込める。さらに「漫画だけではありません。小説、アニメ、同人誌といったすべてに影響を受けました」と笑顔を浮かべたジャオ監督は、「私は孤独な子どもでした。なので、漫画のなかのキャラクターが私の友達でした。それは私だけでなく、世界の多くの人に共通する思い。漫画のシリーズが1年続くと、私もその漫画のキャラクターと一緒に成長していったという印象です」と自身に影響を及ぼした日本のコンテンツに感謝。さらにジャオ監督は、実は漫画家を目指していたことを告白。「ただ、絵を描くのがあまり上手ではなかったので、断念しました。ですが、子どの頃から漫画を通して、人間の描き方を学びました」と、ジャオ監督自身の創作にも多大な影響があったとも話していた。
プロデューサーのゴンダ氏が最高執行責任者(COO)を務める
「いままでは(日本のコンテンツの映像化などに)いろいろな課題があったかもしれない」と前置きしたゴンダ氏は「そういった課題を解くためにプロセスを築いていきたいと思っています」と展望を語る。さらに過去のプロセスに触れつつ、「スタジオの設立で、いろいろな声を聞きながら学びながら挑戦しながらいいものを作っていきたいです」と現在の心境を語った。
「いままで(日本のコンテンツが)映画化される上での困難を見てきた」と明かしたジャオ監督は困難の原因のひとつに東西文化における理解不足があると指摘。「ハリウッドが違う文化のIPを好きに解釈して扱ってきた」と自身が感じていたことを言葉にしたジャオ監督は「お互いの文化は欲し合っている。もともとのアイデアに傾聴して、作家を尊重する形が健全だと思っています」と、スタジオ設立への期待も込めながら、クリエイターに寄り添った意見を述べていた。
ハリウッドで見てきたこれまでの日本コンテンツの映像化の問題点も指摘
最後の挨拶で野間社長は「非常に力強いパートナーを得ました」とよろこびを噛み締め、「これまであまり知られていなかった数多くの日本のIPを広めていくことを目指します。日本の漫画家、作家、そういったクリエイターたちと海外の映画関係者たち。映画関係者に限らずさまざまなクリエイターがコラボすることにより、新しい表現が生まれてくることに期待しています」と話し、会見を締めくくった。
取材・文/タナカシノブ
									 
					