それが「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」(11月14日公開)。

物語で描くのは、いまも世界を熱狂させ続ける伝説的シンガーソングライター、ブルース・スプリングスティーンの“壮絶な2年間”。「ボヘミアン・ラプソディ」のような音楽伝記映画……ですが、正直、スプリングスティーンを知っているかどうかは、重要ではありません。

実際に観ると、すべての瞬間が、魂に突き刺さり、ふつふつと湧き上がる“なにか”を止めることなんてできない……。

自分と主人公の人生が交錯し、どうしようもなく心が動かされ、打ち震えるほどの体験が待ち受ける超良作。スプリングスティーンのファンはもちろん、むしろ「知らない人」にこそ、本作は最も刺さるのではないでしょうか。

ぜひ、そんな体験を味わってほしい。“人生が揺さぶられた人々”の鑑賞レビューをお届けします!

【予告編】走り続ける――魂の叫びへ

【人生に深く共鳴し、抗いようもなく“ぶっ刺さる”】
人生に迷ったら、きっとこの映画が“効く”だろう。ブルース・スプリングスティーン(演:ジェレミー・アレン・ホワイト)ブルース・スプリングスティーン(演:ジェレミー・アレン・ホワイト)

今回の特集では、あえてファンではなく“普通の映画好き3人”のレビューをご紹介します。

まずは、映画.comに所属している男性の感想から! 自身の人生を見つめ直しているタイミングだからこそ、“ブルースの物語”に深く共鳴――“忘れられない1本”になったようです。

〇主人公の人生と、自分自身の人生がどんどん重なっていく――「これまで」を抱きしめ、「いまこの瞬間」に勇気を与え、「これから」を変えてゆく物語。本作は“私のための映画”なのかもしれない。画像4

“人生の映画”を観た!

これから書くことはとても“個人的”な思いになる。だから、わかりづらい箇所もあるだろう。けれども、“それほどに深く刺さった作品”なのだと伝わってくれれば、これに勝る喜びはない。

主人公ブルースが、人気絶頂でありながら“今後”に思い悩み、後年に“伝説の楽曲”と称される名曲を生み出す姿を描く本作。

ブルースの「これまで」と「これから」に触れ続けていると、

どういうわけか、自分自身の人生をも振り返ってしまう――

それほどの“力”と“共感”を携えた物語だった。

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幼少期からの父親との確執(ほとんどトラウマのように描かれる)、仕事への重圧、恋人への思い――過去と現在を絶妙な形でクロスオーバーさせながら描いているのは「果たして“俺の選択”はこれで良いのだろうか」という迷い。

ブルースは人気絶頂の“伝説の男”だ。しかしその苦悩は、観客である“私”が日頃から感じているものと似ている。私も時折、彼と同じように考えてしまうのだ。

「果たして、この人生でよかったのか」

だからこそ、ブルースの“混沌の感情”が新アルバムの源になり、その結果“新たな人生”を獲得していくという展開は全身が痺れるほど感動したし、自分自身の人生に深くリンクした。

今後、人生の歩みが鈍ってきた時には本作を必ず観ようと決めた。

それほど“前に進むため”のヒントが込められているのだから。

〇現時点で“個人的”に確信しています、この映画が“アカデミー賞”を席巻することを――世界にとっても“大切な1本”になる。だから絶対に絶対に、多くの人に知ってほしい。画像6

一方でこの映画は、私だけではなく、世界にとっても、大切な一本になるのかもしれない。

ワールドプレミアでは、全米の有力メディアから賞賛の声ばかり。

「アーティストの魂を探求する、知的で緻密なテンポの旅路を描いた傑作」(Deadline)

「この映画は他に類を見ないほど感動的で、満足感に溢れたロックンロール映画」(THE WRAP)

と凄まじい熱量のレビューが相次ぎ、多くの記者がアカデミー賞ノミネートの“最有力候補の1本”に挙げるほど!

ジェレミー・アレン・ホワイト(左)、ブルース・スプリングスティーン(右)/ニューヨーク映画祭での1枚ジェレミー・アレン・ホワイト(左)、ブルース・スプリングスティーン(右)/ニューヨーク映画祭での1枚

本編を観れば、その理由は絶対にわかる。スプリングスティーン役のジェレミー・アレン・ホワイトの歌声は“完璧”と言っても過言ではないし、脇役も“良い顔”の俳優ばかり。

ということは何が言いたいかわかりますね?

そう、この映画は“必見”です。

以上。映画館でお会いしましょう。

【私にも語らせて!!】 “ものづくり”の苦しさと喜び
がぶっ刺さり、好きでたまらない1本になりましたマネージャーであり盟友のジョン・ランダウ(左/演:ジェレミー・ストロング)マネージャーであり盟友のジョン・ランダウ(左/演:ジェレミー・ストロング)

……と、記事を締めくくろうと思っていたら、「待ってください、どうしても語らせてほしい!!!!」――と前のめり気味にやってきた人がいました。

とある宣伝会社に所属する女性。そんなにハマってしまったのなら、語ってもらうしかない!

〇大げさに聞こえるかもだけど、「国宝」とも重なる“大感動”があった――“今までにない作品”を生み出す、正解のない創作の日々。苦闘続きの光景にのめり込み、“ある言葉”が好きで好きでたまらなくなった。画像18

※誠心誠意書いていたら、アツくなりすぎてしまいました…ちょっと長いかもです、すみません…!!

私は「映画の宣伝」として、作品を世に広める日々を送っています。そんな立場だからこそ、この映画を――、

心の底から愛してしまったんです!

特に響いたのが、“アルバム「ネブラスカ」誕生秘話”。全容を初めて知ったんですが、めちゃくちゃ感銘を受けてしまいまして。

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一流のクリエイターでも、易々と“正解”なんてものはわからないわけです。楽曲制作で悩み抜き、「これがいいはず」と答えに辿り着きながらも、「いやこっちも?」と“別の可能性”にも強く引き付けられる。ブルースたち超一流でも、曖昧な印象を大事に手繰り寄せ、不確かな道を恐る恐る歩みながら、“今までにないアルバム”を追求していたんだ――。

そんな姿に、日々、仕事に悩む自分も“大きな勇気”をもらえた気がして。本当に観てよかったです、この映画。

【本編映像】名曲「ネブラスカ」“誕生”の瞬間

劇中には「アルバムに呼吸させる」という表現が出てくるんですが、このセリフがたまらなく好き! “売れるもの”をつくるのではなく、“心の底から狂える最高傑作”をつくる。それができたとき、作品が自然と呼吸し始めるのだと……。

ブルースたちの“死闘”は、すなわち究極的に“道”を極めようとする行為でもあり、そこに、社会現象となった「国宝」と重なる“大感動”がありました。この映画、ものづくりに携わる人は絶対に刺さりますし、さらに国境や世代を超えて胸に迫る圧倒的な力強さが備わっています!

〇“ヒット作ではなく、最高傑作をつくる”――だからデモ音源を“そのまま使う”!? ツアーも宣伝もしない!? 驚愕の創作エピソードにもハラハラドキドキしっぱなし画像11

創作のための“試行錯誤”に深い感銘を受けましたが、自分が実際にその現場にいたらと思うと、心臓が何個あっても足りません。

というのも、ブルースが天才すぎて、むちゃくちゃなこと言い出すんですよ!!

たとえば、「自宅で収録したデモ音源」を「そのまま“公式音源”にする」(つまり音質がよくない音源で、世界中に向けて発売する)――なんて言い始める。しかも、周囲の誰もが「メガヒット間違いなし」と称賛する楽曲ができたんですが、いろいろあってその曲を“お蔵入り”にするという驚愕の判断を下したりします。

あと、アルバムをリリースする際、プロデューサーに「宣伝もなし、ツアーもなし」と、売り上げ至上主義とは真逆の要求を突きつけて……。

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しかしブルースは考えなしのワガママを言っているのではありません。前述しましたが、すべてはヒット作ではなく、最高傑作を世に放つため――。その決断が正しいのか否かは、見てからのお楽しみです。

でもやっぱり“ホンモノを目指すアーティスト”の姿には、いつの時代だって強く惹かれてしまうんです。“独り”でアルバムに魂を注いでいくブルース。そんな彼の情熱に感化されて、周囲に仲間が集まって、最終的には“独り”ではなくなった――。

あぁ、今でも泣けてくる。

この映画、思い出すと“泣いてしまう”光景がいっぱいあります。

【“この人”を知らなかったからこそ“ぶっ刺さる”】
知識ゼロ鑑賞したら…今年最も出合えてよかった作品に画像13

最後に語ってもらうのは、映画.com編集部の男性。「スプリングスティーンを知らないと楽しめない」と思っていたようですが、鑑賞後は「今年イチ、出合えて良かった映画」と目を真っ赤にして語っていました一体、何故――?

〇「ボヘミアン・ラプソディ」「名もなき者」「エルヴィス」に続く音楽ものか…と思いきや、ひと味もふた味も違う“個人的な大傑作”だった 体の奥の奥に深く突き刺さり、いまだに余韻が抜き切らない画像14

いまでも“あの映画体験”が心に鳴り響いている――。

近年の音楽映画は傑作ぞろい。たとえば「ボヘミアン・ラプソディ」「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」「エルヴィス」「ベターマン」などなど、すべてを挙げきれないほどありますが、本作を鑑賞してみると、それらの作品とは異なる“心に突き刺さる”ポイントばかりだったんです。

たとえば「ボヘミアン・ラプソディ」では、「大勢に囲まれる」という一見孤独を解消しそうな状況が、フレディの孤独をかえって深めた側面を描いていました。

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一方、本作は、ブルースと少数の仲間との心のつながりにフォーカス。そこにあったのは、気心の知れた仲間たちだからこそ“理解されなかった瞬間の痛み”。その瞬間を自覚したブルースは、人知れず孤独を深めていきます。

「ボヘラプ」に限らず、“孤独”は近年の作品のキーワード。重要テーマに、通常とは異なるアプローチで迫る“新鮮さ”に仰天しましたし、なによりブルースの“魂の旅路”から発せられた感情が、筆者の体の奥の奥の方に深く突き刺さっていきました。

〇だからお願いです。むしろ“この男”のことは調べないで観てください。そうすると…“唯一無二の映画体験”へと、あなたは導かれる。ブルース・スプリングスティーン(本人)ブルース・スプリングスティーン(本人)

ぶっちゃけた話、私はブルース・スプリングスティーンをほとんど知らない状態で観ました。それで、ちょっと奇妙な言い方になりますが、終盤に「ああ、ブルースのことを知らないで観て、本当によかった」と心の底から思った“かけがえのない瞬間”があったんです(ヒントは「ジョン・ランダウの表情のアップ」)。

そのシーンに限らず、彼の経歴を知らないからこそ、「答え合わせ」ではなく「この先、どうなるの?」とハラハラしてしまう。深く深く、ブルースの人生に潜っていく――そんな感覚に陥り、鑑賞後は、いつまでも、いつまでも、りんと鳴り響く余韻に浸っていました。

〇最後に:鑑賞後から異様なまでに膨れ上がっていく“語りたい欲”…だれも止めないでくれ、この映画をもっと多くの人に広めたいから――“あなたの大切な1本”になることを強く、強く願っている画像17

本記事も終わりに差し掛かっています。けれど、まだまだ語りたいことが山のようにある……だから、最後まで語らせてください。

この映画には“伝説の男”の「強さ」と「弱さ」が練り込まれています。

自分の信念を曲げず、曲の為に突き進む「強さ」。そして、それが正しいのか間違っているのか、迷い、葛藤し、時には傷つく――、誰にも見せることがなかった「弱さ」。

物語はこの2つを往復しながら、心の底から「感動した」と言いまわりたくなるほどの、すさまじい展開へと進んでいきます。

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誰だって自分の中の「強さ」と「弱さ」と寄り添いながら、人生を歩んでいます。この映画は“伝説の男”の映画でありながら、いうなれば“私の物語”でもあり“あなたの物語”にもなっていると、筆者は断言したいです。

だから、どうかこの映画を観てほしい。

あなたの大切な1本になる事を心から願っています――。

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