
「連載、いつも読んでます」と言ってもらえることがある。
「え、あなたが?」と言いたくなってしまうような人に。
久しぶりに会う人、初めて会う人、他のアイドルグループのことが好きな人、わたしたちのグループを応援してくれていて、そのなかでもわたし以外のメンバーのことがいちばん好きな人、それから友人まで。
連載を書いているときも、連載が公開されるときも、基本的にわたしはひとりだ。
文章を書きながら、わたしの文章を読んでくれている人なんているんだろうか、と不安になることがある。せっかく連載をやらせていただいているのに、と。
誰も読んでいない、なんてことはないと分かってはいる。
毎回公開してすぐ「読んだよ」「これから読むね」とメッセージが届く。SNSに感想を投稿してくれる人もいる。ライブやイベントの特典会で「この前の記事、良かったよ」とわざわざ伝えにきてくれる人もいるのだから。
誰も読んでくれていないなんて思ってしまっては、毎回読んでくれている人に失礼だとすら思うのに、それでもやっぱり、なんの意味も果たせていないような気持ちになってしまう。
だからこそ毎回、わたしの文章を読んでくれた人たちから、何かしらの方法で一言でも言葉が届くと、この上なく安心するのだ。
伝えてくれた人からしたら、何気ない一言かもしれない。
それでも、わたしにとってはその一言があるだけで、大丈夫だと思えるのだ。
これは音楽であっても同じだ。
YouTubeに公開されているわたしたちの動画や、Apple MusicやSpotifyなどの音楽媒体に公開されているわたしたちの音楽、CDショップに並んでいるわたしたちの音楽。
きっとどこかで誰かに聴いてもらえている、ということは分かれど、じゃあ一体どこで誰に?と考えると急に不安になる。
だからこれも文章と同じように、「観たよ」「聴いたよ」「いつも聴いているよ」という言葉が届くと、ほんとうに安心する。
ライブやイベントの特典会でもらえる言葉ではもちろん、SNSでエゴサーチをしたり、各コンテンツのコメント欄を見たりして、そこに書いてある言葉を読んで、何度どれだけ安心したか、どれだけ嬉しい気持ちになったか、言葉で表しきれないくらいだ。
とても現実的な表現になってしまうし、100%そうだとは言い切れないけれど、単純な話だ。
例えば、レストランに食事をしに来るお客さんが多ければ、きっとそのレストランが続いていくように。音楽も文章も、聴いてくれる、読んでくれる、時間をかけてくれる、そしてもっと言うのなら、買ってくれる人が多ければ、きっと続いていく。
リスナーから、演者になってみて思う。
もっと、形に、言葉に、したら良かった。
聴いた音楽にも、読んだ文章にも、足跡はつかない。
歌った音楽にも、書いた文章にも、足跡はつかない。
むかし、「また来ます」と伝えてから、結局行かずじまいで解散してしまった好きなバンドのことを思い出す。わたしはずっと、あの頃のことを忘れられないでいる。
行きますと伝えたライブに行けなくなってしまったことも、行けたはずのライブにも行かなかったことも。
大袈裟だけれど、もしあのとき わたしがライブに行っていたら、グッズを買っていたら、CDを買っていたら、あのバンドの解散は1日でも遅くなったり、したんだろうか。
リスナーから演者になってみて痛いほど実感することは、リスナーが思っているよりもずっと、演者が演者でいられるのはリスナーの存在のおかげだ、ということだ。
売れなかったら辞めるしかない。でも辞めたくないから、売れるために必死だ。
そしてもうひとつ、リスナーから演者になってから思うことは、それだけの価値があるものを作りたい、ということ。
音楽を筆頭に、ライブ、文章、グッズ、そして時間そのもの。そこにどれだけの時間やお金をかけてもらったとしても、後悔させないような存在になりたい、作品になりたいのだ。
「アイドルが『応援してください』と言うのはおかしい」と言う話をよく耳にする。
確かにそうかもしれない。そうだとも思う。そんなことをわざわざ言わなくとも、応援したくなるような、時間やお金をかけたくなるような存在でいられるのが何よりも理想だ。
それでもわたしはどうしても言いたくなってしまう。応援してほしい。だってわたしがここまでアイドルでいられているのは、紛れもなくファンの存在があるから。
ライブが始まって、お客さんがフロアにひとりだったこともある。デビューから4年経っても、ステージに飛び出したらお客さんが5人だったこともある。それでも、わたしたちのファンが0人になったことは、未だにない。だからここに立つことができている。
「そんなことを言うのはおかしい」と言われている「応援してください」という言葉を口にする代わりに、わたしは、応援するだけの価値のあるアイドルになりたい。
わたしたちの音楽を聴いてくれている人へ。
SNSにわたしたちのことを載せてくれる人へ。
ライブに会いに来てくれる人へ。
グッズを買ってくれる人へ。
気持ちを言葉や形にして伝えてくれる人へ。
いま、このわたしの文章を読んでくれる人へ。
いつも、ほんとうに、ありがとうございます。
売れたいとか、売れますとか、それだけではあまりにも無責任な言葉かもしれないから、言葉と同時に形にできるように必死です。
きっときっと、いいものを作り続けます。
いま回っているわたしたちの初めてのバンドセットツアーがもうすぐファイナルを迎えるし、来年2月のZepp Shinjukuでのワンマンライブの準備も進めている。
この文章がどうか、どこかで誰かの何かのきっかけになりますように。
ツクヨミケイコ
1月13日生まれ、東京都出身。2019年5月に結成、同年7月1日にデビューした、7人組アイドルグループ・SOMOSOMOのメンバー。「全身全霊ではしゃぎ倒す」をコンセプトに掲げ、ロックを軸とした楽曲でエネルギッシュなライブパフォーマンスを行なっている。SOMOSOMOでは楽曲の多くの作詞も担当している。
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