洋画やアメコミのグッズを多数取り扱うことで、映画ファンにお馴染みのキャラクターショップ「豆魚雷」のスタッフであるサムゲタン市川が、ホラーキャラクター&グッズへのアツい愛を叫ぶ、PRESS HORRORの名物連載「遊星からの物欲X」。第16回は『死霊館 最後の儀式』が公開中の“死霊館ユニバース”にフォーカス。ホラーファンの心をガッチリと掴んだ、一癖も二癖もある悪魔たちの魅力を偏愛タップリに語りつくす!

12年で9本!愛され続けたユニバース

みなさんこんばんは、サムゲタン市川です。『死霊館 最後の儀式』はご覧になりましたか?私は初日の朝一番にIMAX鑑賞をかましてきましたよ。『死霊館』(13)から12年間続いたユニバースのメインストーリーも、これで最後かと思うと感無量でした。

12年間で製作された作品数はなんと9本!コロナ禍を挟んでなお、この本数が製作されるほどシリーズが人気を集めた大きな理由が、主人公たちと対峙する悪魔たちの魅力にあることは間違いないでしょう。今回は代表的なキャラクターたちをフィギュア情報と共にご紹介してきます!

なんといっても、アナベル!

まずはなんといっても彼女。『死霊館』の冒頭から登場し、その後も同シリーズを通して皆勤賞を達成している磁器人形のアナベルです。スピンオフも『アナベル 死霊館の人形』(14)、『アナベル 死霊人形の誕生』(17)、『アナベル 死霊博物館』(19)と3本も制作され、『アクアマン』(18)や『シャザム!』(19)にもカメオ出演を果たすなど、ホラーキャラクターの域に留まらない活躍を見せています。

彫りの深い顔と大きな眼がちょっぴり不気味だけど、三つ編みおさげにぱっつん前髪、白いティーガウンを着てちょこんと座る姿は愛らしく、髪やウエストに結ばれた赤いリボンがかわいいお洒落さん!置き去りにするとポルターガイストで部屋をめちゃくちゃに荒らしたり、捨てても「Miss Me?」のメモと共に戻ってきたりと、なんだか重たい一面も魅力です。

アナベルちゃん、顔が怖すぎる…アナベルちゃん、顔が怖すぎる…[c]Everett Collection/AFLO

このアナベルのミソは、人形自体が生命を宿している訳ではないということです。取り憑いている者の正体は悪魔マルサス(一般的にはハルファスとも)。『アナベル 死霊館の人形』にて初めて顕現したのですが、私はそのビジュアルのよさに心を奪われてしまいました。

雄羊を彷彿とさせる大きな巻角と額から伸びる双角が特徴的で、胸元には「A」からそれぞれの線が角や尾のように伸びたマークが浮かび上がっています。漆黒の身体と整えられた顎髭がダンディズムをかもしだしており、悪魔でありながらイケおじとして推せるキャラクター!

アナベルが空中に浮いたかと思えばマルサスが持ち上げていたり、『アナベル 死霊博物館』では同じくウォーレン夫妻の博物館に保管されたさまざまな呪物から霊たちを解き放ったりと、人間を弄ぶかのような茶目っ気のある恐怖演出が多めな印象。人形のフリをして人々を恐怖に陥れる悪魔のおじさん、ギャップがあっていい…!

『インシディアス 赤い扉』でのジョゼフ・ビシャーラ『インシディアス 赤い扉』でのジョゼフ・ビシャーラ[c]Everett Collection/AFLO

マルサスを演じるジョゼフ・ビシャーラは『死霊館』に登場する魔女“バスシーバ・シャーマン”や、同じくワン監督作品『インシディアス』(10)の悪魔“リップスティック・フェイス”も演じているほか、ユニバース作品のほとんどにおいて作曲家として携わるマルチな才能を持った御方なのです。

『アナベル 死霊博物館』では役者がビシャーラからアレクサンダー・ウォードに交代したことでビジュアルに大きな変化がありましたが、こちらもスマートでカッコいいのでお見逃しなく!

癖ある動きがたまらない!へそ曲がり男死霊館 エンフィールド事件 / へそ曲がり男 アルティメット 7インチ アクションフィギュア死霊館 エンフィールド事件 / へそ曲がり男 アルティメット 7インチ アクションフィギュア

『死霊館 エンフィールド事件』(16)に登場する、悪魔の力によってゾエトロープ(回転のぞき絵)のキャラクターが具現化したもの。

本来鼻があるべきところまで深くすっぽりとシルクハットを被り、眼の位置には小さな穴が2つ。まるで笑みを浮かべているような大きく裂けた口や、ハットの上からかけた黒縁の丸メガネが愛おしくてたまらない!特注の赤いストライプスーツは約2mの超高身長を誇るハビエル・ボテットの身体に密着するよう作られており、マルファン症候群の影響で細く長く伸びた彼の体躯をそのまま活かしたデザインに。

史上最長期間のポルターガイスト事件を描く『死霊館 エンフィールド事件』史上最長期間のポルターガイスト事件を描く『死霊館 エンフィールド事件』[c]Everett Collection/AFLO

登場シーンではすべての演技を逆さに行って撮影し、それを逆再生する“リバース・モーション”という技法が使われています。『リング』(98)で山村貞子が井戸から這いでるシーンや「ツイン・ピークス」(90-17)の“赤い部屋”、クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』(20)などで使用された技法ですね。

動線は自然なのにどこか違和感を覚える動きは短い出演時間のなかで強い印象を残し、一時はスピンオフ映画の企画まで持ち上がりました。実現こそしなかったものの、ワンは「But maybe one day. (でも、いつかきっと)」とコメントを残しており、意欲はあるようすです。

その痩身とは裏腹に、壁の中を突き破りながら進み、傘での刺突は扉を貫くなど意外とパワフル!大型犬かと思いきや屈んだへそ曲がり男だった!なんて見事なモーフィングも魅せてくれます。敵対するデモニアックながら、陰鬱になりがちな空気を浄化してくれる賑やかしとして非常に仕事が出来るヤツなのです。

美しき尼僧、ヴァラク死霊館のシスター THE NUN / ヴァラク アルティメット 7インチ アクションフィギュア死霊館のシスター THE NUN / ヴァラク アルティメット 7インチ アクションフィギュア

こちらも初登場は『死霊館 エンフィールド事件』で、ロレイン役ヴェラ・ファーミガの実妹タイッサを主演にスピンオフ映画『死霊館のシスター』(18)と『死霊館のシスター 呪いの秘密』(23)が制作されました。

黒い修道服に身を包んだ悪魔の尼僧というシンプルかつアンチクライストな見た目は、恐怖より先に美しさを感じる洗練されたデザイン!神への信仰を嘲笑するかのように十字架を提げているのが、なんともたまりません。

『死霊館のシスター』では堂々のメインキャラとして登場『死霊館のシスター』では堂々のメインキャラとして登場[c]Everett Collection/AFLO

修道院のシスターが代わる代わるに祈りを捧げ続けて何世紀も封印を維持してきたことを考えると、月に2回神父による祝福を受けて封印されているアナベル人形(マルサス)よりも遥かに強力なのでしょう。先述のへそ曲がり男に加え、死者や霊、悪魔をも使役することができ、ヴァラクがより高位の存在であることがうかがえます。

6本の角に翼が2対と、禍々しくも神々しい不採用デザイン案がワンのInstagramで公開されているのですが、『死霊館のシスター』に登場する書物にはこれに近しい形で挿絵が描かれており、尼僧は仮の姿に過ぎないことが示唆されているのもポイントです。

実はシリーズ最強キャラと言えるヴァラク実はシリーズ最強キャラと言えるヴァラク[c]Everett Collection/AFLO

咆哮で人間を吹き飛ばし、空中で磔にして火を放つ。一歩も動かずに不敵な笑みを浮かべる泰然自若としたその佇まいがとにかくカッコいい!『死霊館のシスター 呪いの秘密』ではかつて天使であったことが明かされ、主人公サイドの敗北を本気で覚悟するほどの圧倒的な力で観客に絶望を叩きつけました。強く、美しく、カッコいいの三拍子が揃っちまった最高の悪魔。ヴァラク!惚れずにはいられないッ!

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