決して“陽キャ”じゃないからこそ共感を呼ぶすみっコたち
 ©2025 日本すみっコぐらし協会映画部
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子どもだけではなく、大人の心までを鷲づかみにしてきた『映画 すみっコぐらし』シリーズ。これまで公開された3本の映画は、累計観客動員数が300万人超えの大ヒットとなり、第4作目となる『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』へも大きな期待がかかっています。
ご存じ「すみっコぐらし」のキャラクターたちは、決して“センター”を好むようないわゆる“陽キャ”ではなく、どちらかというとすみっこにいるほうが落ち着くという控えめのキャラクターです。それぞれがコンプレックスや悩みを抱えていますが、そのキャラクター設定がなんともユニーク!
寒がりで北から逃げてきた“しろくま”に、自分に自信がない“ぺんぎん? ”、実はきょうりゅうの生き残りだけど、とかげのふりをしている“とかげ”など。個人的には、油っぽいからいつも食べ残されてしまうとんかつのはじっこ“とんかつ”と、硬いから同じく食べてもらえない“えびふらいのしっぽ”の揚げ物コンビが大好きです(笑)。
今回、注目の新キャラは、空の王国からやってきた頑張り屋の“おうじ”と、幼い頃からおうじを支えてきた“おつきのコ”。本作では、この2人がストーリーラインのど真ん中にいて、観る者に大切なメッセージを届けてくれます。
ロールプレイングゲームのような冒険譚に夢中!
 ©2025 日本すみっコぐらし協会映画部
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ずっと雨ばかり降り続いているすみっコの町。ある日、空の王国から、“おうじ”と“おつきのコ”が落ちてきました! びっくりして駆け寄るすみっコたち。どうやら王国は今、深刻な水不足となっているため、おうじが1人でそれを解決しようと孤軍奮闘している最中なのだとか。そばにいるおつきのコは、そんなおうじのことを、とても心配しているようです。
そんな中、水不足を解決するためのヒントが「みずのしんでん」にあることを知り、すみっコたちも加勢して、雲の上の大冒険へと繰り出すことに。そこでは次から次へと課題が出され、みんなで知恵をしぼって解決の糸口を見出していきます!
ナレーションに井ノ原快彦と本上まなみ、監督に『映画ざんねんないきもの事典』(22)のイワタナオミ、脚本にヨーロッパ企画の角田貴志、 主題歌に木村カエラという盤石な布陣で放つ本作。角田さんは1作目の『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(19)の脚本も担当していますが、非常にキャラクターの個性を活かすストーリー作りが巧みで、今回もそのスキルが最大限に発揮されています。
 ©2025 日本すみっコぐらし協会映画部
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実は、父親であるおうさまにかまってもらえず、いつも孤独だったおうじと、そんな彼を誰よりも理解し、おうじを幼い頃からサポートしてきたおつきのコ。この新キャラの主従関係が、物語の鍵を握ります。どこか満たされてないおうじも、まさにすみっコ的なキャラクターで、だからこそ、最初からすんなり「すみっコ」の世界観に溶け込んでいます。
王国へ着いてからは、まるでロールプレイングゲームのごとく、次から次へと難題が出されます。ぶっちゃけ、「万事休す!」というピンチを何度迎えることか! 観ているほうは、毎度ひやひやしながら、プレイヤー気分で応援していく感じです。
おうじ、おつきのコ、そしてすみっコたちが各自助け合いながらその課題をクリアしていきます。たとえ失敗をしても、きちんとカバーをする者もいて、“全員野球”的に大ピンチを克服していく姿に、がっつり心を持っていかれそう。
また、課題の解決方法が実にニクイ! 行き当たりばったりのご都合的なものではなく、きちんとキャラ設定や伏線を踏まえたオチになっているので「なるほど! 巧い!」と心の中で拍手をしちゃいました(笑)。
“弱者”ならではのチームプレイの強みと思いやりの大切さ
 ©2025 日本すみっコぐらし協会映画部
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親目線でいえば、おうじの成長ぶりがぐっと来ます。最初は誰にも頼ることなく、必死にあがいていたおうじが、おつきのコやすみっコたちの助けを借りることで、目標を達成していくので。さらに、おうじをずっとそばで見守ってきたおつきのコの目線も相まって、気づけば熱いものが込み上げてきそう。
おうじ含めすみっコたち1人1人は、いわゆる“弱者”というポジションかと思います。でも、彼らの素晴らしい点は、それぞれに気遣いができ、ちゃんと思いやりをもって他者に接することができるところかと。だから失敗した相手を責めません。それぞれにフォローしあいつつ、頼るところはちゃんと他者を頼るという、生きていく上で一番大切なことを、私たちに示してくれます。
また、子どもに馴染みがあるおとぎ話のネタなどが、さらりと小ネタとして入っている点も本シリーズの魅力です。心温まるメッセージはもとより、ナレーションも耳心地がよく、時おり差し込まれる字幕もひらがななので、お子さんも心から楽しめると思います。いろいろな意味で、“親子で観てほしい映画”として本作を心からプッシュしたい! ぜひ、この週末は映画館で本作をお楽しみください。
『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』は10月31日(金)より公開中
原作:サンエックス 監督:イワタナオミ 脚本:角田貴志(ヨーロッパ企画)
ナレーション:井ノ原快彦、本上まなみ
公式HP:https://sumikkogurashi-movie.com/
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©2025 日本すみっコぐらし協会映画部
文/山崎伸子
 
									 
					