第一線で活躍する俳優たちが演目を事前に知らされないまま舞台上で台本を渡され、初見のまま観客の前で本読みをする人気舞台企画「いきなり本読み!」をご存じだろうか。配役もシーンごとにコロコロ変わり、「セリフをラップ調で言ってください」といった無茶な演出までされてしまう。  

極限状態で俳優としての真価が問われるような企画にもかかわらず、神木隆之介、岸井ゆきの、水川あさみ、松たか子、仲野太賀、ムロツヨシ、小泉今日子(出演順)などの豪華な俳優陣や、ハリセンボンの近藤春菜やココリコの田中直樹などの人気芸人も出演している。

台本の内容が観客からもわかるよう、舞台上のスクリーンに投影されている/撮影:平岩享イメージギャラリーで見る

「いきなり本読み!」が生まれた背景について、企画・進行・演出を手掛ける演出家の岩井秀人さんに聞いた前編に続き、後編となる本記事では、岩井さんが思わず驚くような演技を披露した俳優たちのエピソードや、画期的な演劇企画を世に送り続ける岩井さんが日本の演劇界に感じている課題について語ってもらった。

岩井秀人さん/撮影:平岩享イメージギャラリーで見る

岩井秀人(いわい ひでと)プロフィール  
2003年劇団「ハイバイ」結成。2012年NHK BSドラマ「生むと生まれるそれからのこと」で第30回向田邦子賞、2013年舞台「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞受賞。近年では自身の経験を演劇化する企画「ワレワレのモロモロ」を全国で展開。2020年から「いきなり本読み!」を開始。以降、年に5回ほどのペースで開催。

松たか子の「演技の精度」は異常!?

――これまでの「いきなり本読み!」の中で、岩井さんが驚くような、想像を超える演技をされた方はいましたか?

岩井:前編でもたびたび名前が出た松たか子さん、岸井ゆきのさん、松本まりかさんはもちろん、最近だと中川晃教さんもすごかったですね。特に松さんとか顕著なんですけど、初見で役について何もわからない中でも、セリフを読み上げたときの演技の精度が異常で。それだけですごく説得力を持っている。松本まりかさんに至っては、一発で号泣したりしますからね。

中川晃教さんの一発で声色を掴む能力に岩井さんは驚いたという/撮影:平岩享イメージギャラリーで見る

最近だと、桜井玲香さん(元乃木坂46)も想像以上でした。事務所も含めて積極的な姿勢で参加してくださったので、演劇をやってみたい感じなのかなくらいに思っていたら、上手くて。

あと、池谷のぶえさんはやっぱりモンスターですね。「来てけつかるべき新世界」(ヨーロッパ企画・上田誠 作)の台本で出てもらったときに「ラーメン香港」というキャラクターを演じてもらったんですけど、役名がはじめて台本に出てきたときの第一声から、観客の全員が「あ、これはラーメン香港だな」って思うような謎の説得力があって。やっぱりそれは池谷さんにしかできないことだなと思いました。

大倉孝二さんも一発でリアリティを出すのがすごいんですよ。ただ、大倉さんには何度か出てもらっているんですけど、僕の中でだんだん期待値のインフレが起きていて、それだけでは驚かなくなってるんですけどね(笑)。でもやっぱりすごいです。バケモノですね。

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