開催中の第38回東京国際映画祭(TIFF)にて映画『エディントンへようこそ』(12月12日公開)のジャパンプレミアが開催され、アリ・アスター監督とアスター監督作品の大ファンである河合優実がスペシャルゲストとして花束を持って上映後の舞台挨拶に登壇した。
本年度のカンヌ国際映画祭でのコンペティション部門に招待され、世界中で話題を集めた本作。前作『ボーはおそれている』(24)以来、2年ぶり3度目の来日となったアスター監督は、ガラセレクション部門に正式出品された本作を引っ提げて、TIFFに初参戦となった。
【写真を見る】客席を撮影するアリ・アスター監督に客席から「I LOVE YOU!」とのメッセージが飛び、笑顔になるアスター監督と河合優実
本作は、コロナ禍でロックダウンされた小さな町の選挙戦が全米を巻き込む大事件となり、暴力、陰謀論、SNSの暴走がすべてを焼き尽くす様を描く。本作について「いままでにこんなに毎回反応が違う映画を作ったことがない」と話したアスター監督は「その日のヘッドラインによっても(反応や印象が)違っていくという映画です。楽しんでいただけたらうれしいです」と笑顔で最新作アピール。「前作までの三部作とモチーフの捉え方とか印象が違っていて」と感想を伝えた河合は「よりいまの世界をダイレクトに向き合うような作品だと思いました。(アスター監督の)その目線に共感しながら観ていました」とも補足していた。
日本は一番好きな場所と話したアリ・アスター監督
本作で新しいチャプターに入ったという意識はあるのかとの質問に「新しい映画を作るたびにそう思っています」と答えたアスター監督。「これまでとの違いという面はあるかもしれないけれど…」と前置きしたアスター監督は、「それはより、現実的、日常的なものを描いているという意味では違うのかも」と解説した上で、「自分たちがコントロールできない、より大きな力にコントロールされているという意味では、(これまでの映画と)違いはないと思います」とも付け加えた。
アスター監督の作品の好きなところは「相反する感情が自分のなかに湧いてくるところ」と答えた河合。俳優の立場でアスター監督作品に感じることについては「本作もそうですが、出てくるキャラクターが人として、フィクションのなかの人物としてすごく魅力的。自分の体を使って演じるという仕事をしている役者としては、(キャストたちにとっては)くすぐられる経験になるのかなと想像しています」と予想していた。
アリ・アスター監督の大ファンだという河合優実
日本映画が大好きなアスター監督に、ぜひ日本で映画を撮ってほしいというMCからのリクエストに「作りたいです!」と笑顔で即答したアスター監督。そして、河合に視線を向け「『ナミビアの砂漠』はとてもすばらしかったです。拝見してよかったと思いました」と河合の出演作への感想を伝える場面も。さらに「日本が世界で一番好き。映画を作るのはに日本に来るためと言ってもいい」とプロモーションで日本に訪れることを心から楽しんでいる様子のアスター監督は、「日本で撮るとなったら、日本で撮る価値のあるストーリーを考えなければいけない」とし、「日本はとても美しい場所なので、(映画を)作りたくならないわけがない!」と日本愛を爆発させていた。
「手を振って!」のリクエストに応える二人
本作には、ホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル、エマ・ストーン、オースティン・バトラーといったキャスト陣が名を連ねている。彼らと映画を作れたことはとてもラッキーと微笑んだアスター監督は「若いキャストもすばらしいです」とアピール。さらに「ホアキンとは2本目。今回も素晴らしいアンサンブルができました。ホアキンは出る映画を高めてくれるし、映画に挑戦状を突きつける人」とホアキンの魅力を熱弁し「すごくいいヤツです!」と再タッグの充実感を滲ませていた。
舞台挨拶後のフォトセッションの様子
フォトセッションの最後にMCから「アスター監督も(観客の)写真を撮りたいですか?」と問われると「もちろん!」と即座にポケットからスマホを取り出したアスター監督。客席からの「I LOVE YOU!」の声には「I LOVE YOU,TOO!」と反応するなど、短い時間でも観客とのコミュニケーションを存分に楽しんでいた。
第38回東京国際映画祭は11月5日(火)まで開催される。
取材・文/タナカシノブ
