ロンドンとパリ。当時世界のカルチャーの中心だった2つの街を往来しながら、誰もが憧れるスタイルアイコンとして名を馳せていたジェーン・バーキン。しかし、そんな彼女のイメージを決定づけたのは、この日見せた当時としては大胆すぎるこの装いだ。あるいは、同年の映画『スローガン』(1969)のプレミアで披露した、カメラのフラッシュに照らされて透けたという伝説のミニドレスかもしれない。肌を透かすドレスも、背中を前にした一着も——どれも彼女にとっては、“自由”という名のスタイルの一部だった。
“自由”と“自然体”という名の美学
「彼女のファッションは時にスキャンダラスでしたが、それこそが、どこまでも自由で、自らのスタイルを貫いたジェーン・バーキンを、唯一無二の存在へと押し上げたのです」と、新著『It Girl: The Life and Legacy of Jane Birkin(=イット・ガール──ジェーン・バーキン、その人生とレガシー)』の著者、マリサ・メルツァーは『VOGUE』に語る。
「彼女のファッションが特別に映ったのは、それが演出ではなかったから。どんなドレスやフォーマルな装いも、彼女が纏えば、まるでいつものペザントブラウスやミニスカートのように自然になじんでしまうんです。」メルツァーはさらにこう続ける。「ジェーン・バーキンが着ると、どんな服もたちまち“ジェーン・バーキンの服”になる。彼女はロンドンのユースファッションと、パリのラグジュアリーを、自分の感性でしなやかに融合させていたのです。」
彼女のファッションを貫くのは、“自然体”というしなやかなスタンス。その揺るぎない軸があるからこそ、ジェーン・バーキンのスタイルは今もなお、世界中で愛され続けている。近年のボヘミアンリバイバルの流れを思えば、現代のItガールたちがこのガラルックを再現しても不思議ではない。けれど、ジェーン・バーキンのように着こなせる人は、きっといないだろう。
Text: Emily Chan Adaptation: Mei Fujita, Saori Yoshida
From: VOGUE.UK
